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今日は、拙著『ロジカルキッズワーク』で扱っている「読み取る力」をテーマに1題考えてみたいと思います。

低学年の読解でつまづきやすいのが、具体例と抽象概念の区別です。

A 車を道に停めてはいけないと思います。
B 道に停めると通行の邪魔になるからです。
C 救急車が通れなくなることがあります。

この3つの要素は
A 結論 B 理由 C 具体例
と言えます。
難しい言葉で言うとBとCは階層が違います。理由がいくつあるかと問われて、BとCを挙げてしまう場合、この「階層の違い」を理解できていないことになります。この判別は簡単ではありません。

X 車を道に停めてはいけないと思います。
Y 救急車が通れなくなることがあります。
Z 歩いている人の邪魔にもなります。

この3つだと、
X 結論  Y 理由(1) Z 理由(2)
となります。先ほどの抽象的な理由Bが消えた代わりに具体例が2つ挙げられているので、この文章を読解するという作業においては、理由は2つ書かれていると言って差し支えなくなります。YとZの階層、抽象度が同じだからです。

●車を道に停めてはいけないと思います
◆救急車が通れなくなることがあります
の関係が
道に停めると通行の邪魔になるからです。と言う階層、抽象度が違う文があるかどうかで
◆が
理由を説明する具体例
なのか
理由
なのかが変わってくるのです。

(I) 車を道に停めてはいけないと思います。
(II) 道に停めると通行の邪魔になるからです。
(III) 救急車が通れなくなることがあります。
(IV) 歩いている人の邪魔にもなります。

の4つになると
(I)結論 (II)理由 (III)具体例1 (IV)具体例2
ですね。

ここで乗り越えたいポイントは

A 車を道に停めてはいけないと思います。
B 道に停めると通行の邪魔になるからです。
C 救急車が通れなくなることがあります。

において、理由が2つあると考えてしまう、つまりBとCが同じ階層、抽象度だと考えてしまうことです。この区別ができていないと、「理由を増やして結論の説得力を高めよう」とするときに、D通行人も困る E自転車の人も困る という増やし方をしてしまいます。これはAの説得力が増しているのではなく、Bの具体例を増やすことでBの説得力が増しているだけです。このような会話や文章を書いてしまうのは子どもだけでなく、大人でも少なくありません。

このような階層、抽象度の違いに気づくのに役立つのがロジックツリーやピラミッド図と呼ばれる図式を使った視覚化による比較です。

を並べて、縦と横を「見比べる」経験を積んでいくことで、抽象度の違いを理解していけるのです。そうすると、いつの間にか

というような1つの理由について具体例だけ増えていっているというような事態に気づくことができるようになります。

図式化は言語パズルではなく、正確に読解するための、そして発信内容のチェックにも役立つ実践的なツールです。是非、ロジカルキッズワークの練習問題もそのような視点で取り組んでみてくださいね。


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