大阪・関西万博のロゴがあまりに不評なので、その解説と改善について考えてみた
さあロゴつくろ。
ロゴデザイナーkei(@logodesigner_z) です。
さて一昨日、2020年8月25日に「大阪・関西万博」のロゴが発表されました。2025年に開催される国際博覧会のロゴです。
大阪で開催されるのは、1970年の大阪万博から2度目となります。
大阪記念公園にある「太陽の塔」が当時の万博でシンボルとして、世界中の注目を浴びていました。
さてその大阪・関西万博のロゴをご存知ですか?
まだ見たことのない人へ、さあご覧ください。
さて どんな感想を抱いたでしょうか。
おそらく多くの人が「好意的な感想」を抱いていないと、ぼくは思っています。
実際に発表直後のツイッターが荒れました。
好意的・肯定的な意見はひとつも見られませんでした。(改めて見たときはけっこう好意的な意見が増えてました)
「気持ち悪い」とか「目玉がいろんなところを見ていて不快」だとかそういった声が多くありました。
では一個人のロゴデザイナー ではありますが、ぼくが大阪・関西万博のロゴについて感想を述べたいと思います。
と、その前に今回このロゴに決まるまでの流れを簡単にお話しします。
このロゴは昨年2019年の11月から12月の2ヶ月間にデザインの募集をしてました。
応募総数5894点、この数の作品を「2025年日本国際博覧会協会」がまず
5点にしぼりました。
その5点の作品がこれです。
作品ひとつひとつ、込められた思いや意図はわかりません。
ただこれらロゴの中から、みなさんならどれを選びますか?
正直6千点に近い作品数で「この5点よりいいものあったろうに」と思うのはぼくだけではない気がします。
この中から選ぶのはなかなか至難の技ですが、ぼくはデザインという1方向の視点から[A]を選びます。
次点だと[B]ですね。
ロゴのスタイルについて注目して、[A]がもっとも「スタイリッシュである」こと「立体構造を思わせるデザインで奥行きを感じさせる」ところを評価したいと思いました。
Bは五輪マークのように「多人種の交流をカラーで感じさせてくれている」ことが良いと思います。
強いていうなら[E]のデザインは50年前に「太陽の塔をデザインした
岡本太郎のデザイン」を感じさせる色使いや目玉のようなフォルムが気になりました。
岡本太郎オマージュとして気になっただけで、決してデザインとしていいとは思いません。
岡本太郎の作風が前提にあって、気になったというだけです。
ぼくが他の記事でもでよく言っている「らしいデザイン」とはかけ離れたものです。
もちろんターゲットがまったく違うので、それが悪いというわけではありません。
Adobe illustratorをはじめて使った人が「楕円ツールを手探り使って作った」と聞かされたら、何の疑いもなく信じるものでしょうね。
そして、この中で選ばれたのが前述してますが[E]のデザイン。
2025年大阪関西万博の公式ロゴに決定しました。
まずデザイン募集時点で万博の「テーマ」「コンセプト」「キーワード」がを応募者は確認しています。
それらを知った上でデザイナーたちはデザインしているはずです。
デザインするための情報は、これらですね。
このロゴの制作は“シマダタモツ”さんが代表をつとめる「TEAM INARI」の作品だそうです。
個人の作品ではないんですね。
シマダさんのコメントから「前回の1970年大阪万博からDNAを受け継いだセル(細胞)を意識した赤い球体をつなげたデザイン」にしたそうです
万博の「テーマ」「コンセプト」「キーワード」「制作者のコメント」これらを確認した上で、分かったことは「前回の万博のDNAを受け継いで
細胞を意識したデザイン」だということで「どこにテーマやコンセプトなどを意識しているのか」は分かりませんでした。
では意図的なものは何ひとつ分かりませんでしたので、デザイン・見た目だけで判断していこうかと思います。
先ほども言ったように「初めてイラストレーターを使うノンデザイナーが手探りでつくったみたいなデザイン」です。
細胞だそうですが「正円や楕円を混ぜた規則性のない並び」でイビツな輪を作っています。
輪をつくることはいいと思います。「世界のひとたちと協力して行う」万博ですから、輪はコンセプトに合うでしょう。
ただこの輪がイビツであることが批判を受ける原因のひとつではないかと考えています。何か不安な印象のイビツな縦長楕円です。
また正円や楕円を混ぜているところ。
「様々な大きさ」や「様々な形の円を用いて」多様性などを表現しているいるようにも思えます。
ただ、そういったデザインコンセプトを持っていようとも、この円のランダムさはイビツであると言わざるを得ません。結果的に造形が美しくなくなったのなら、デザインコンセプトは捨ててしまった方がいいんじゃないかな
と思います。
形状が悪くなってまで、デザインコンセプトに固執する理由はありません。
そしてこの目玉のようなデザイン。ツイッターではこれが最も多い批判の的だったように思います。
細胞の「核」か何かを表現しているんでしょうか。それとも岡本太郎のオマージュか。
岡本太郎はぼくもリスペクトしている芸術家ですので、オマージュすることは悪いとは思いません。
ただ今回のデザイン応募のテーマやコンセプトから、よくオマージュを選んだなとは思います。
キーワードに「今までにないアプローチ」とあるので、たとえリスペクトがあったとしても「50年前を踏襲」するのはテーマから外れると思うのですが「よくぞこれが選ばれました」「いや、よくぞこれを選んだ」もんです。
落選した5893点のデザイナーたちは、目が点でしょうね。
なんでしょうね、インパクト重視だったんでしょうか。
おしゃれ上級者が少し外すと「おしゃれ度が増す」ような高度なファッション術があると思いますが、このデザインは上級者らしさはなく、おしゃれに疎い人が「案の定」ダサいアイテムを身につけてるイタイファッションと同じ「ダメ」に「ダメ」を重ねたデザインだと思います。
さてこのロゴについて「楕円を混ぜない」とか「輪の形を整える」とか、ぼくなりの改善点を見つけました。
なので、改善デザイン案を作ってみようかと思ったんですが、それを改善したところで「いいロゴには生まれ変わらないだろう」と思います。
中途半端に改善したところで「このロゴはこのロゴ」でしょうから、改善するのはやめとこうかなって思いました。
ですが、そうなるとこの記事にオチがないですよね。
根本から「このロゴじゃないもの」にしないと変わらないのは事実だと思いますが、身を削る覚悟でちょっと改良してみることにしました。
温かい目でご覧ください。
じゃん!
「細胞」がメインモチーフだと思うので、細胞をアレンジしてみました。
もこもこしてて「可愛らしく」感じてもらえたら幸いです。
そして「あっちこっち向いてる目玉が気持ち悪い」って意見があったので、目玉は全体で表現して、ひとつにしてみました。
「不安を感じさせる」全体の縦長はやめて、大まかな正円にしてます。
そのことでEXPOの[O]にも使えましたので、配置してみました。
どうでしょうか。正直、万博なんて大舞台で使えるようなロゴではありませんが「公式ロゴの気持ち悪さ」はそこそこ拭えたんではないでしょうか。
[お願い] 温かい目でご覧くださいね
ではオチがついたところで今回はここまでです。
追記
記事にまとめていると、最初はどうしようもなく「ダメ」に「ダメ」を重ねたこのロゴが「少しずつよく思えてくる現象」に陥りました。
技術的観点、デザイン観点から「良いもの」でないことは変わりありませんが、ある感情が芽生えました。
けっこうかわいい
なんでしょうか。ツイッターでも同じようなことを言ってる人がいます。
何かの魔力でしょうか。デザイナー視点では絶対に良いデザインではありませんが、不思議な感情が芽生えましたので追記いたしました。
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では今後とも「ロゴのおはなし」をよろしくお願いいたします。
ではまたお会いいたしましょう。
さあロゴつくろ。
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