【CEO・CFO向け】新任CFOに何を求めるべきか整理してみた

こんにちは、ログラスの布川です。
今日のテーマは、新任CFOとはどうあるべきなのか?について、BCGが今年6月にまとめた素晴らしいドキュメントを見つけたので、読了した上での感想戦みたいなものをまとめていきたいと思います。

出典:未来に向けたトランジション――新任CFOが描くビジョンとロードマップ(BCG)

対象読者

  • これからCFOを受け入れようと考えている経営者

  • 投資家、金融機関の方

  • 経営企画部、財務部に所属されている方

  • これからCFOを目指す方

CFOとはプラットフォームである

どんな会社であっても、最初の90日というのは転職や就任から最も重要な期間であると言えます。

特にCFOは一般的には経理・財務部門の責任を負う企業のNo.2としての役割であり、幅広い責任を持つ分、求められるアウトプットの水準も圧倒的に高いと言えます。(当然、給与も相対的に高い)

BCGがまとめた未来に向けたトランジション(以下、本資料)によれば、

現代のCFOは、持続的な価値とインパクトを創出する「プラットフォーム」

とされています。これは大変おもしろい視点であり、マッキンゼーや経団連が開示しているDX関連の資料にも同様の見解が示されています。

CFOは既に財務の責任者ではなく、非連続かつ持続可能な組織体としての価値を創出するためのハブ(プラットフォーム)になる必要があるということです。

以下の経団連作成の図では、CFOが主に管掌する経営企画がDXの肝であることを示しています。

出典:Digital Transformation(経団連)

【1-0】就任後のCFO「最初の90日間」は何から始めたら良いのか?

とはいえ、CFOに就任するほどの高い実力があったとしても、最初から「プラットフォーム」になれる人はいません。まず最初の90日間でCFOが発揮すべきは、以下の3つであると本資料では定義されています。

・キャッシュフロー:自社に至急解決しなければならない流動性の問題がないことを確認する
・会計処理:監査法人のリードパートナーと協力して、早急に対応すべき法規制や会計処理上の課題がないことを確認する。
・監査:自社の監査委員会との協働により、監査や内部統制、サイバーセキュリティに関する実務を見直し、喫緊の課題を明らかにする。

出典:未来に向けたトランジション――新任CFOが描くビジョンとロードマップ(BCG)

これに加えて、社内の関係者と会って話すことの重要性についても指摘されています。これはあらゆるエグゼクティブクラスにおいて重要な作業であり、自分という人間と社内の関係者の信頼関係を一気に構築し、彼らが「何を変えたい・変えたくないのか」を明確化する作業こそに意味があります。これは新任CFOでなくともやるべき作業なのではないでしょうか?

加えて、本資料の中では社外のメンターの存在にも触れています。新任CFOは基本的に周りに助けてもらえることは殆どありません。何故ならあなたがトップであり、上にはCEOしかいません。CFOを助けることができる人は社内には皆無に等しいのです。これを覚悟せずに事業会社に入ってくるプロフェッショナルファームの方は面食らって退任してしまうことも多々あります。これは本人だけが悪いのではなく、構造的にそういった問題は発生すると言えます。

出典:未来に向けたトランジション――新任CFOが描くビジョンとロードマップ(BCG)

本資料の中でも、在任期間が短いCFOの多さを示唆しており、過半数のCFOは5年未満で退任となっています。これからCFOを受け入れんとする経営者や投資家は、CFOが孤独になることを予期して丁寧にオンボーディングができる仕組みづくりを最低限するべきであると私は主張したいです。

【1-1】CFOのキャッチアップと役割について

では、オンボーディングプランはどうあるべきか?大原則、CFOはファイナンスのオフィサーですので、経理・財務部門の管掌役員として、現在のパフォーマンスを見極めましょうという話があります。
COOならマーケティング、セールス、カスタマーサポートといった主要戦術部門のパフォーマンスを見極めるのと同様、CFOも同じことをすれば良いということです。

本資料で一番価値があるな・・・と感じた整理は以下の画像です。

出典:未来に向けたトランジション――新任CFOが描くビジョンとロードマップ(BCG)

経理・財務の役割は仕訳を切ること=経理の仕事と勘違いをしている方は多いと思います。

しかし、実体としては戦略・体制・オペレーションの観点で広範な業務を請け負っていることが多いです。とりわけ日本企業においては、経理・財務と言えば「経理・財務組織」「経理・財務IT」「リスク・トレジャリー・税務」「会計」といった体制・オペレーションに属する仕事が多くなっています。

そして、立てた戦略を実行に移すための企画立案や予算編成、予測を行い、ビジネスインテリジェンスにより精緻に分析しながら業績管理を行うことが求められます。

弊社ログラスが展開するのは「ビジネスインテリジェンスと業績管理」「企画立案、予算編成、予測」という分野になっており、まさにCFOが管掌するコアなオペレーション分野の1つにプロダクトを展開しています。

自社のオペレーションや体制面を定量的に評価することはなかなか難しいと思われるため、他社との交流を深めつつ、自社の立ち位置を確かめる手段を強化しておくことはオススメです。

※私個人で運営しているCFO Networkという無料のコミュニティでは、今後こういった観点での交流会を開催予定です。

【1-2】自社のパフォーマンス測定をどうするべきか?

もっとわかりやすい指標として、本資料のCFOエクセレンス・インデックスによれば、経理・財務部門の総コストは常に売上の0.3%-2.3%の範囲にあり、中央値が1.0%程度であることが分かります。

例えば売上が100億円の企業であれば、年間1億円以上が経理・財務部門の総コストにかかっている場合はコスト高という見方ができます。

加えて、FTE(Full-Time Equivalent)については、売上高10億ドル(約1,400億円)あたり、80名程度が中央値であるとも示されています。単純計算は難しいですが、売上高100億円の企業であれば、6人以上の人間が経理・財務部門に関わっているとやや多いのではないか?という見方ができます。

また、日本には企画部門という概念が各事業部門に存在していることがあり、これも人数にはカウントするべきではないでしょうか。

こうした生産性指標はなかなか表に出てくるものではないため、これもコミュニティを形成しながら、周りの企業との比較をしていくことがまずは重要です。できれば同じ企業サイズ、同じ業種のComps比較ができると良いのではないかと思われます。

【1-3】今の日本のCFO・経営企画はどんな現状なのか?

私がこれまで1,000社以上のCFO・経営企画部門の方々とお会いしてきた印象としては、経理・財務部門(経営企画、経理、事業企画、FP&A等)の人数は相対的に不足し続けているという印象を持っています。つまり、少ない人数で実務を回しすぎていることで、本来果たすべきレベルまで到達しないまま事業が継続しているということです。

特に、経理・経営企画部門の人材不足は深刻であり、日本の企業規模から逆算した時のファイナンス人材不足は顕著です。これによって、CFOの悩みの種の1つは、部下が採用できないということになっていきます。そしてこれは、少子高齢社会の中でさらに加速していくことが想定されます。

弊社の調査でも上場企業の9割弱がリソース不足を感じており、極端に厳しい状況であることを示唆しています。

※当社の経営企画実態調査については以下よりダウンロード可能です

【1-4】Cレベル及び取締役会との関係性を構築する

CFO就任から「最初の90日」の優先事項として本資料に記載されているのは、CXOや取締役会との良い関係値の構築です。特に、CFOはファイナンスバックグラウンドにあぐらをかいてしまい、事業理解に向けた努力ができない場合があります。これをしてしまうと、CEOおよびCOOといった事業役員からの信頼が下がってしまいます。そして最初に堕ちた信頼を成果面で挽回することは極めて困難といえますので、ここを最初に徹底し、ファイナンス屋ではないことを迅速に示すべきといえます。

また、CFOは従来の事業CXOとは異なる独自性を示すことも重要です。PLではなくBSを使ったM&A戦略の展開もあるでしょうし、ファイナンスを大胆に実行したゲームチェンジを推進することもあるでしょう。重要なのは、今の事業課題に依拠したファイナンス戦略を提案できることであり、社外から抜擢されたCFOは特にこの動きが重要となります。一方で、社内から叩き上げでCFOに就任する場合については、戦略のリアリティチェックをより精緻に行い、実行性を引き上げるといった役割が期待されることもあるでしょう。

【1-5】エクイティストーリーを描く

CFOという役職が置かれる規模の会社であれば、必ず投資家への説明は多かれ少なかれ必須となります。投資家に向けたエクイティストーリーを描き、実行に移す所までがCFOの仕事と言えます。

よくIPOを実行しようとすると証券会社がエクイティストーリーを作ってくることがありますが、殆どの場合は絵に描いた餅的で、真に投資家の心を動かすための魂が入っていないストーリーができあがります。これは金融機関の批判ではなく、構造的に仕方のないことです。バンカーから見れば初めて見るビジネスモデルであることが殆どであり、実際の発行体の解像度も高くなっていないので、そこまでハイレベルなエクイティストーリーを描くことは基本できません。よって、基本的には内部にいるCFOが魂を込めてエクイティストーリーを描く必要があります。

※極稀に超エース級の公開引受部の方や投資銀行のバンカーが圧倒的エクイティストーリーを作ってくることがあると聞いたことはあります。こういったケースは例外です。

また、エクイティストーリーというと株式投資家との関係性だけを意識する方がいますが、取引銀行との丁寧なリレーション構築もCFOの仕事です。最適な資本構成を目指し、デットによるファイナンスも求められます。

【2】CFO就任後の「1年間」で求められる6つの事項

本資料の中では、前述のような基礎を備えた上で、CFO就任後の「最初の90日間」をやり遂げた先、「最初の1年間」の6つの優先事項を定義しています。

  • 価値創造、成長、資本分配

  • 事業部門との協働とパフォーマンスマネジメント

  • リーン財務オペレーション

  • デジタル化、データ、分析

  • リスクマネジメント

  • 人材マネジメント

この中で私が特に重要性が高いと感じた2点にのみ触れてこのnoteの筆を置きたいと思います。

価値創造、成長、資本分配

CFOは企業におけるあらゆるリソースを価値創造の源泉となる資本として捉え、投資の意志決定をし続ける存在です。

  • キャッシュ

  • 人材

  • 顧客

  • ブランド

  • 設備

といったあらゆる資産を頭の中に入れる作業がまず求められます。そして、あらゆる資産がレバレッジが効くように上流で差配するのがCFOの最も重要な役割です。ある意味で、フィナンシャルスポンサー(PEファンド等)はこれを生業としている会社といえるかも知れません。

例えば、ある部品を製造しているA社(業界首位)をPEファンドが買収したとします。わかりやすく企業価値を上げるための手段として良く用いられるのがロールアップ戦略です。業界首位であるA社をハブにして、類似する業界2番手以降の競合を他社から買収することによって、顧客カバレッジを拡げたり、生産工場とロジスティクスを最適化することができます。過去の事例では、ゴールドマンサックスが手がけたゴルフ場ビジネスのアコーディア・ゴルフの事例等ではロールアップ戦略が用いられていました。

まさに、CFO的な動きとして、キャッシュリソースを用いて設備や顧客というよりレバレッジが効く資産を購入し、組織としての生産性を上げることを目指す動きと言えます。。

全てがここまでダイナミックである必要はありませんが、CFOとはキャッシュないし財務だけ見ていれば良いのではなく、常に内外のリソースを見ながら最適な行動が他にないのかを想像し続ける仕事と言えます。非常に面白い仕事ではないかと思うと同時に、難易度も非常に高いことが理解いただけると思います。

デジタル化、データ、分析

そして、これらのリソースアロケーションをより高度にするために欠かせない要素がデジタル化、データ、分析への精通です。現在のCFOを取り巻く環境はどんどんデジタルによって進化しており、情報システムの統合を効率的に行うことは生産性に大きくヒットするようになってきています。

CFOがデジタル化のメリットを享受するためには、財務・経理・経営企画スタッフも含めて全員がデジタル化にアレルギーをなくしていくことが重要となります。また、Excelやスプレッドシート等のツールを多用しがちな部門であることもデジタル化の妨げになっている原因であることを自覚し、率先垂範でデジタル化を推し進めることが日本の未来においても極めて重要です。

本資料によれば、デジタルファイナンスツールの活用は、自社に最適化された改良の後に展開することで、約30%のコスト削減を実現することが可能と記述しており、そのポテンシャルの高さを示唆しています。

【3】一緒にCFO・経営企画のデジタル革命を起こしませんか!?

ということで、今回はBCGさんの資料を用いて、就任後「最初の90日間」と「最初の1年間」についてのCFOの在り方についてざっと触れてみました。CFOという仕事はまだ日本に上陸して期間が経っていない、これから定義が固まっていくような仕事であると考えています。

CFOはどこかリアリストであるべき、みたいな思い込みがあると思いますが、個人的にはCFOこそビジョナリーであるべきなのではないかと改めて思います。本資料の中でも以下のように述べられています。

新任CFOが就任1年目に、そしてその先も成功するためには、達成しようとする目標と、自らのリーダーシップの下で築いていく経理・財務部門の姿について、明確な見通しを持たなくてはならない。ビジョンを構築することは、CFOが自社内で経理・財務部門が担うべき役割についてじっくりと考えていくうえでの助けとなる。

出典:未来に向けたトランジション――新任CFOが描くビジョンとロードマップ(BCG)

特に、ミレニアル世代である20代~30代前半の世代が中堅として台頭しつつある中で、40代50代でCFOに就任する方がもっとも壁に感じるのは、デジタルツール、アジャイルな働き方、コラボレーションへの適応であると考えられます。

経理・財務部門は社内ではどこか真面目であり、野心的というよりは現実的な部隊として認知されがちであるからこそ、いかにして野心のある意欲的なチームに育て上げていくのか?が次世代CFOには求められているのではないでしょうか。

ログラスはそうしたビジョンを持ったCFO・経営企画の皆様を応援しながら、「テクノロジーで、経営をアップデートする。」という未来に向けて日々前進しています。
是非少しでもご感心のある方はお声がけください!!

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