部屋の掃除がしたい、けど、私のやることではない。
1月の中旬ごろのことだ。
掃除担当のアンティが連日掃除に来なかった。
私のいる部屋も私の部屋のあるフロアの共有スペースもどんどん汚れていく。
床には長い髪の毛がたくさん落ちている。洗面台は見事に詰まっている。共有のバスルームの排水溝も髪の毛とゴミで詰まっている。私の部屋のバスルームは綺麗好きなルームメイトのおかげでまだマシな感じだ。
ゴミ箱は部屋ごとにあるのではなく、全て共有スペースのゴミ箱に捨てる。分別はしないため、たったひとつの大きなゴミ箱(段ボール)にどんどんゴミを入れていく。ゴミ箱はゴミで溢れかえっていた。
とにかく汚い。私には汚いように見える。
アンティはどうしたのか、同じフロアに住む人に聞くと、彼女らは体調不良でお休みということだった。
こんなご時世だしアンティたちが来れないのは仕方ない。来ないから汚れていくのも仕方ない。それにしても汚い。これはちょっと掃除でもしてみるか。
と思って、アンティが忘れていった箒で床を掃いていみた。
すると、ルームメイトに大きな声で呼ばれる。なんだよ〜、掃除し始めたんだよ〜、と思いつつ、ルームメイトの方を見ると
「何してるの!?!?!?」と怪訝な顔で私の方を見てくる。怒っていた。
見ての通り、私は掃除をしているんだけど、掃除をしてはいけなかったようだ。掃除を止められ、そうかそうかと思って、適度にやめた。
掃除は掃除のアンティたちの仕事だ。掃除は掃除をする担当の人がするものだ。
私は「掃除担当の人」ではない。
だから、積極的に掃除をしてはいけない。
居住フロアには掃除道具は常備されていない。掃除道具はアンティたちの持ち物だから、彼女たちが持っている。
その日は適度に掃除をやめたのだが、どうにも汚い。箒もいつの間にか回収されてしまって床を掃くこともできない。
掃除をしたい。だけど私のすることではない。
そう思いながら、部屋の汚れは見ないようにして過ごした。
数日後、アンティたちは「完全体」でカムバックした。箒で床を掃く担当、モップで水拭きする担当、バスルームの担当。とても掃除をして欲しかったため、掃除をしながら移動するアンティの先手を歩きながら、床に置いてある物や掃除の時に邪魔になるものを積極的に移動させた。(おそらくこれも私のすることではない)
なんでも徹底して分業だ。ここでは「自分の仕事」以外のプラスαはしてはいけない、と思っておいたほうがいい。ちょっと「善意」で掃除してやろうだなんて、全く善意ではない。なんならアンティの仕事を奪った奴だ。
日本の企業でバイト程度しか働いたことはないが、日本だと自分の仕事以外のこと、例えば掃除を自ら進んでやると褒められる。褒められて、またやろう!という気持ちにもなる。それを繰り返しているうちに、いつの間にか掃除係でもないのに掃除が「業務みたいなもの」になっていたりする。でも、この掃除をしたところで給料が上がるわけではない。あっても「ありがとう」の言葉だけだ。
これまた大変なのは、一人が勝手に始めたことなのに、「素晴らしいことだから」ということで「みんなの業務」になったりする。そりゃサービス残業たくさんやるわけだな。
こちらでは、掃除をしても「ありがとう」の言葉はない。掃除担当の人が自分の任務を終えただけだから。でもそれでいいんだと思う。
ちなみに、今日1月26日は共和国記念日(Republic Day)で祝日だ。掃除担当のアンティは1人だけきた。箒で掃いて、モップで床も拭いてもらって綺麗な部屋だ。アンティには体調不良にならないように気をつけてもらって、毎日掃除に来てほしい。
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