見出し画像

【意味不明小説】異世界に転生して得た固有スキルが「髪の伸びるスピードが日本人平均の1.02倍になる」とかいうクソ雑魚スキルだったけど何か質問ある?〜最強魔族と悪役令嬢が契約を交わして学園無双し、ゆくゆくはスローライフを満喫したいと語ったらパーティ追放されたので復讐するぞ!えいッ!えいッ!おぉーーッ!!!〜

 私が運転するトラックに保険証の写しを置き忘れたまま世間が技術的特異点シンギュラリティに到達してしまうといけないので、部下の黄泉比良坂よもつひらさか君がかき氷を喉に詰まらせて死んだのは5年前である。

 初デートの場所を郊外の小さなプラネタリウムに指定したのは彼女の父親によく睨まれた。入口近くの自動販売機の前で笑う彼女があまりに不気味だったのを、その場にいた警察官に取り押さえられ、そんな中でかたくなに歩き続ける私は大学で公衆衛生を専攻していたこともあり、擬似の夜空で輝く星々を見上げながら、さながら破壊された修正ペンから飛び散ったものと推定される細かな斑点模様以外にはなく、私の横で来てよかったねと囁いた彼女こそ憤懣やるかたなかった。しかし、この日の帰り道に起こった惨劇を忘れない私はあの光景が死ぬまで目に焼きついている。歩道を歩く私と彼女のペースが風に吹かれて早まったのは自然であったとは言い難く、今から思えば消灯時間さえ守らない正義の味方など鬼畜の所業以外の何者でもない上に、休暇を取ってハワイで遊んだ記憶が後から植え付けられたものだと知ったときの仲間意識の低さと来たらなかったではないか。

ところが、である。

三流の学会員としてSDGsバッヂを誇らしげに胸に付けた、馬鹿の擬人化みたいな同僚は寡黙でこそあったものの、その道50年のベテランに道を譲らなかった罪で中国共産党に連行されたときのこと。邪悪とデモクラシーの合いの子として世間からもてはやされた末に、ついにピューリツァー賞にはノミネートされなかった罪悪感で資格取得を目指す弟の背中には、以前から電磁開閉器の作動音がうるさいとの苦情が寄せられていた。それもそのはずで、5ちゃんねる掲示板に散々ボロクソ書いていた秋の夜更け、某大手製薬会社のお達しで悪口が言えなくなった自称専門家の群れの集団自決を横目に、衆議院ではクソほどどうでもいい議論のどさくさに紛れて信号に4色目「錆鉄御納戸色さびてつおなんどいろ」を追加する法案が可決され、近々コンビニでアルミホイルが配布される段取りとなっていた。それもあってか、今年の夏祭りで地域の中年女性達が自作の『インボイス音頭』を披露した様子がネットに拡散されて大炎上をかまし、その煽りを喰らった連邦準備制度理事会がやむなくストライキを敢行して世界経済が滅茶苦茶になったのは記憶に新しいが、その裏ではレンジで温めるタイプの湯たんぽを利用した脱税が横行しており、結局投開票の様子をTikTokで配信することになったのだからイルミナティはウハウハである。オリーブオイルのパイオニアはこの件を苦にアブラムシを飼い始めた。

これほどまでに状況証拠が揃っている現在、これを「できすぎている」と判断できるかどうかが鍵である。それはともかくとして、歴史上の至る所で見られる大概の災害に介在する傀儡の曖昧な采配が海外に滞在して徘徊するシャイガイを売買することに、間接的にではあるが関わってくることは重々承知の上であった。カタツムリのバラードとして全国展開を狙った仕事帰りの男性は、あろうことか肥溜めに夢を託して松の木をへし折った。その日から現在に至るまで、春に単独で韃靼ダッタン海峡を渡った蝶は目撃されておらず、当然のことながら喫煙所は全て撤廃される事となった。やはり無縁塚の管理人がパルクールに失敗して尻が二つに割れたことは万人の認めるところであり、よりにもよって散髪の直前にパパイヤの木を焼くことはないだろうという長男の苦言は、ある意味で挑発にあたるのである。何を言っても、もはやチョコミント擁護派が道徳的に許容される未来は完全に閉ざされたのである(無理もないことではあるが、叡智を生で食べたツケが回ってきたと考えれば、あるいは……)。そんなこんなで、ことさら騒ぎ立てることでもないことを逐一大ごとにしたがる連中から逃れるように東京へ移住した男は、早速富士山の中腹にある山小屋の戸を叩いた。するとなんとも卑猥な音を立てて戸が開き、中から頭の禿げ上がった初老の紳士が現れた。遠藤さんだ……。


「これはこれは遠いところからわざわざご苦労千万。まずはワシの昔話を聞きなさい」


「オタクくん」という言葉の歴史は古く、初出は太平記の一説『黒ぎやるギャルをたくオタク君にかまふこと』であると言われている。同様に「メスガキ」という言葉も太平記の中の『愛素餓鬼メスガキ分からせられること』が初出と言われており、これらを題材にした絵物語は当時から愛好家が多かったという。この「オタクくん」「メスガキ」には実在のモデルがいたとされており、今回のお話はその2人の数奇な運命を描いた物語である。

「オタクくん」のモデルとされる人物、太尾おおお卓郎たくろうは、鎌倉時代末期に駿河国の百姓の家に生まれ、局部を晒して中学校を自主退学、その後はニート生活を謳歌していた。また彼は反日、嫌儲、アナーキストの3拍子が揃った思想強めのオタクであり、ネット民からも距離を置かれていた。毎日パソコンの前で何やらブツブツと呟きながらネットの海を泳ぐのが日課で、自分以外の人間は全員バカだと思っていた。そんな太尾に転機が訪れたのは60代も後半に差し掛かった頃であった。いつものように、昼も夜もなくパソコンに齧り付いていると、窓の外からメスガキの歌う声が聞こえてくることに気がついた。

ざあこざあぁこ クソざぁこ
今日もネットで 威張るだけ
生きる価値なし オタクくん
不平不満は いっちょまえ
恥じれよ親の すねかじり
ざあこざあぁこ クソざぁこ

ざあこざあぁこ クソざぁこ
お先真っ暗 オタクくん
頼みの綱は 親と金
あると思うな いつまでも
冷えるぬるま湯 出られない
ざあこざあぁこ クソざぁこ

太尾はすっかり嬉しくなり、その場で踊り出した。踊って踊って、そしてそのまま、帰らぬ人となった。

BAD END

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?