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始まり

ついに始めた。
決心する間もなく、始めた。
それも、ふたつのことを同時に。


ひとつは不妊治療だ。
4年ほど前まで治療を受けていたが、続けることがつらくなって、中断した。

それからは、妊活という言葉や行為にやんわりとふたをして、そこに置いていた。
捨てるわけでも、かといって仕舞っておけるものでもなく、いつもそこに在るものだから、考えない日は無かった。
いつだって手に取ることはできたはずなのに、あれこれと理由をつけているうちに、35歳を過ぎた。
解っていても、ためらいばかりを繰り返す日がただただ増えた。


それなのに、なぜか、今日。
さっき、お風呂で湯船に浸かっているとき。
不妊外来の診療を予約した。できた。

すぐにお風呂を上がって着替えながら、気づいたらもう、夫に向かって「相談があるんだけど~」と呼びかけていた。
頭と心と体が別々のものみたいな感覚だった。
「不妊治療のことなんだけどさ…」と口にしたときには、声はふるえて、涙がこぼれていた。

夫は、何も不思議がることなく、「僕も思ってたよ」と言って、握手をしてくれた。今度の日曜に予約したことを伝えると、オッケーという感じで応じてくれた。


そういうわけで、不妊治療がまた始まる。
正確に言うとまだ始まってはいないのかもしれないけれど、始めたのだ。もう十分に、始まっている。
自分でも信じられないくらいの、大きな一歩。


もうひとつの始まりは、このnoteだ。
noteのことは最近になって興味を持ったから、どんな雰囲気なのかなんとなく探っているだけだった。

自分は “まずやってみよう” ということに本当に自信を持てなくて、何でも事前に調べたり練ったりする方だ。それは嫌になるほど厄介なもので、情報や選択肢をかき集めるうち、割に合わないと諦めたり、自分には到底無理と心折れることがほとんど。

そんな私が、さっきの一件で、この出来事を「書きたい」と思った。しかも、できるだけすぐに。

そのあとは、パソコンを開いて【note】を検索し、アカウントを開設してこの文章を書いている。
いつもは23時にベッドに入るけれど、夫に「先に寝てて。今日のことを書きたい気分で」と言ったら、「思い立ったが吉日っていうもんね」と返ってきた。


こうして、今日、私はふたつのことを始めた。
冒頭にあるよう、「ついに」始めたのだから、何もすっとんきょうなことではない。頭では考えていたこと。
“まずやってみよう”ができない自分が、思いがけず、始めることができた。
始めることのできた自分にとにかく驚いているし、どういうわけなのかまだよくわからない。


始めただけで、続けられるかどうかはまた別のエネルギーになると思うけれど。
まずは、始まりの今日という日。
始めた私を、ここに残した。

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