青山 央

ひとつ先の角を曲がるとどこからともなく聞こえてきて、耳を澄ますと消えてしまう。そんなぼんやりとした話が書ければなと思います。掌編やショートショートよりショートな話を、のんびり書いていきたいと思います。よろしくお願いします。

青山 央

ひとつ先の角を曲がるとどこからともなく聞こえてきて、耳を澄ますと消えてしまう。そんなぼんやりとした話が書ければなと思います。掌編やショートショートよりショートな話を、のんびり書いていきたいと思います。よろしくお願いします。

最近の記事

a little something : √-2

カーテンを開けると 星空が広がった ちょうど真ん中辺り 白銀のシリウスが冴えている 浄げなる星空を統べる者は 間違いなくこの星だ と宝塚チックに思った 今夜も思った 最近 疲れているのか おかしな妄想が湧く 誰かに覗かれている 遠く どこかから 静かに 妄想ではなく 本当に視線を受け取っているのかもしれない コンバンハ 遠くどこかの誰かさん オハヨウ コンニチハは 出社していれば普通に使うけど コンバンハは ほとんど口にしない なんか 合コン用の挨拶み

    • 蛇は太る

      夏休みは山の子になる 騒がしゅうなるなぁ なるわいねぇ じいちゃんとばあちゃんのひそひそ話が 漏れ聞こえる   夏休みはねえちゃんに会える ねえちゃんはかあちゃんの年の離れた妹で この家に じいちゃん ばあちゃんと住んでいる でも ねえちゃんは誰とも似ていない じいちゃんにもばあちゃんにも かあちゃんにも 細身で背が高い 手足も長い すらりというより ひょろりという感じ モデルさん とまではいかないけど きれいな人だ いつも静かにしていて ちょっと冷たい感じもする だけど 笑

      • ここは はじくように

        幼い頃 ピアノを習っていた いやいやではなかった が 熱中度でいえば40%といったところか だから 小学校入学を機にピアノの購入を打診された折には 丁重にお断りしたのだと言って笑った なのに レッスンはつづけていたのよね 個人レッスンだった ピアノを弾ける人がいるのよ ご近所なの どう お願いしてみない ママにはお気に入りのカフェがある その人は その店で たまたまピアノの調律をしていた で だめもとで相談したらしいの 娘にピアノを教えてくれないかって ちょっと迷惑な話よね

        • ルビンさんの壺

          ルビンさんはイタズラ好きです やぁ ご機嫌よう ここだけの話だがね と ニンマリ 耳打ちをしてきます ふたりは相変わらず 見つめ合ったまま 本当はね もうひとり いるのだよ 誰にも話しちゃいないがね もうひとり? そうだとも 探してごらんなさい ハハァ なるほどね 壺をどけてみよう ヨッ ずっしりとくる重さだ  腰を入れて ゴロンと転がしてみた けど誰もいない ふたりは チラッとボクを見て薄笑いを浮かべている どうせ見つからないよ かくれんぼじゃないの そんなところ

          二本足で立つようになったのは

          天体図を指しながら センセイは言いました 夜空があまりに遠いので ワタクシたちは 二本足で立つようになったのです ボクがノートをとっていると キミがエンピツのおしりで つついてきたんだ おどろいちゃったよ だってさ 授業中なのにさ チェ ちがうのに センセイはわかってない キミの横顔は ちょっとおこってた それから ボクの耳に近づいて こう言ったんだ 二本足で立つようになったのは 夜空が きれいだからよ ホントにホントよ キミの耳打ちを キミのおこった口調を いまも憶えてる

          二本足で立つようになったのは

          a little something : tail nail tale

          だっかっらっ 本当さ 飛んでったんだ 何度 言わせるんだよ  だっかっらっ ネコがだよ 非常階段にビロードみたいな影を残してさ サッと星空に向かってさ 大きな弧を描いてさ 唯一の目撃者は ビルの管理人クンでね いつものように 屋上の巡回に向かったんだって その時にさ 見たらしいんだよ 普段は口数少ないのにさ なんか興奮して話してたな ねぇ こんな話 聞いたことない 星って 長いこと放っておくと 煤けるっていう話よ 星空は 昔はもっときれいでね もっと明

          a little something : tail nail tale

          a little something : 惑星

          辻々に立つアーク灯 その火影を結んでみると 昼間とは違った道筋が現れ 宇宙へと伸びていることが知れる ボクたちの時間がやって来る そして ボクの番が来る 黄昏に上り坂が浮かんでいる 緩い傾斜に一歩を踏み出す 一歩 一歩 一歩 浮遊が始まる 三十分も歩くと 大気の揺らぎの中 時々の星座が 斜め上方に あるいは足元に現われはじめる 灯と影とのあわいを歩く 先を巡るキミの姿が 昨夜よりもはっきり見える ボクたちは それぞれ自分のレーンを巡っている 追い越

          a little something : 惑星

          a little something : candela

          任意点を打つように ボクたちの前に灯ります 少しの間のんびりと揺れて 揺れながら昇りはじめます 高く高く高く ボクたちから 遠ざかってゆきます だんだん小さく ロウソクの灯りくらいになったら ボクたちは そっと胸にしまいます もう 忘れることはありません それから ひとりずつ ひとりぼっちになってゆくんです

          a little something : candela

          a little something : new moon tonight

          窓辺にネコがいる 闇に紛れ部屋を覗いている 近づいても臆することはなく ただ 目を細め ひげと耳をねかせるだけだ ネコを真似て尾を揺らしてみる 濁点を払うようにはうまくいかない ネコが跳ぶ かすかに空気が揺れる ネコから夜へ 夜の深みへ 窓を開けてみる 残された鳴き声に 猫背の孤独たちが尾を揺らしている ひんやりと気持ちのいい夜だ

          a little something : new moon tonight

          淹れる

          毎朝 コーヒーを淹れる 季節が巡っても 部屋が変わっても 目覚めが良くても 悪くても 悔しくても 味気のないコーヒーを 何杯 淹れてきただろう 何杯 飲んできただろう 豆を挽く ふたり分 粗目に挽く 深く煎った豆が砕け 香ばしさが漂う キミのブレンドは すごくおいしかった 近所のカフェなんかよりも ずっとね キミを真似て ゆっくり湯を注ぐ ポットを傾けながら思う ボクのこと わかってたかな 手を握ってたの わかってたのかな 魔法のキス 信じてなかったのかな ボクたちは