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RESASを使って地域経済の強みを読み解こう ~たった3ステップで分かる「強い産業」の見つけ方~

こんにちは。ヤフーのオープンコラボレーションハブ「LODGE」です。

LODGEは地方自治体のDX支援に注力し、オンラインイベントの開催などを行っております。(LODGE × 自治体DX

2021年7月26日にオンラインイベント「RESASを使って地域の強みを読み解こう」を開催しました。アーカイブ動画とイベントレポートをご紹介します。

アーカイブ動画

登壇者:
福岡県糸島市役所 企画部 経営戦略課 岡祐輔氏
ヤフー株式会社データソリューション事業本部 大屋誠
ヤフー株式会社オープンコラボレーションスペースLODGE 徳應和典

経産省・内閣官房が提供。「本当にすごい公務員」がRESAS活用テクニックを紹介

今回ゲストとしてお迎えしたのは、糸島市役所企画部経営戦略課の岡祐輔さん。

岡さんは「内閣府地方創生☆政策アイデアコンテスト2016」において地方創生担当大臣賞や、「本当にすごいと思う地方公務員アワード2018」などを受賞されたスーパー公務員です。

岡さんが実務でよく利用されるRESAS(リーサス)。産業構造や人口動態、人の流れなどの官民ビッグデータを集約し可視化するシステムで、地方創生のさまざまな取り組みを情報面から支援するために経済産業省と内閣官房が提供しています。

かんたん3ステップで、どんなまちでも「強み」が読み解ける

今回のテーマ「地域の強みを読み解こう」に関連して、どんなまちでもすぐに強みを見つけることができる「3ステップ」をご紹介。

岡さんが勤める「福岡県糸島市」を例として、実際の操作画面をもとにご説明いただきました。

ステップ1 「稼ぐ産業」の見つけ方

ステップ1として紹介されたのが、「移輸出入収支額」の読み解き。産業別に輸出と輸入のバランスを見ることができます。いわゆる「外から稼いでいる産業」をグラフでは濃い青の棒グラフで表現しています。

岡さん:
グラフを見ると、糸島市は「外から稼ぐ産業」は全体的に少ないということが分かりますね。外から稼げている産業は農業、水産業、宿泊飲食サービス業だということが分かります。

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岡さん:
地域の経済って、外からお金が入ってこないとだんだん縮小していくんです。自分の町に外からお金が入ってきている産業を知るのはすごく大事ですし、それをまた他の産業に回していくことも大事です。
外から稼ぐ産業を見つけたら、その産業と他の産業を組み合わせてみる、連携させてみるのが地域経済政策で成功しやすい方法です。

経済活性化政策を検討する際に、この方式でデータを見ている市長さん、県知事さんを、岡さんは何人もご存じとのこと。是非最初のステップとして身に着けたいテクニックです。

※表示方法詳細はアーカイブ動画実践用にご用意したサンプル資料を是非ご確認ください

ステップ2 外から稼ぐ産業の「伸びしろ」はどう生かす?

続いてのステップ2では、「付加価値額」と「特化係数」という項目を取り上げた岡さん。

付加価値額は「儲け」を示し、資料では利益が大きい順に左から並んでいます。特化係数は全国平均を1とした場合の利益の大きさを示し、例えば糸島市の農業は全国平均の約3.5倍の利益であることが分かります。

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ここで岡さんが注目したのが、宿泊・飲食サービス業の値。ステップ1では農業のおよそ半分の規模で、糸島市では上位の「稼ぐ産業」でしたが、利益は低いようです。

いわゆる「薄利多売」のビジネスに感じてしまいますが、岡さんはこの情報から「チャンス」を感じたといいます。

岡さん:
外からたくさん稼いでいる産業なので、逆に「伸びしろがあるな」と気付くんです。もっと儲けさせてあげることができるんじゃないかと。例えば農業と飲食サービスと組み合わせてもっと稼ぐ産業にするとか、外にお金が流れないようにするとか考えられますね。これはチャンスだなと私は考えました。

ステップ3 「他の産業を伸ばす」産業の見つけ方

最後のステップ3は「影響力・感応度分析(産業別)」の項目。地域の経済に与える波及効果を見ます。地域平均を1としており、グラフの右側にいけばいくほど、他の産業への経済波及効果が高い産業であることが分かります。

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これによると糸島市の重要な産業である農業は右側にあり、農業を伸ばせば他の産業にも経済効果が生まれることが分かります。

一方で特化係数では全国平均を下回っていた食品製造業、飲食サービス業も右側に位置しており、ここを伸ばすと他の産業を伸ばすことができると言います。

岡さん:
政策の効果がどこに出やすいのかが分かるので、この3つのステップは是非おすすめです。地域の強み、一番最初に手を打ちたいところが分かります。是非RESASを使ってみてください!

このあと、実際にRESASの画面を投影しながらレクチャー。上記の3ステップを再現するためのデータ表示方法を、プルダウン項目の選び方の留意点含め、細かく教えていただきました。

また、参加者からリクエストがあった地域「千葉県館山市」「福島県福島市」「鹿児島県南九州市」についても実際にRESASを用いて解説いただきました。地域ごとに特長が全く異なりことが見て取れます。

岡さん:
こうしてみることで、町の雰囲気が分かりますね。地域の人の給料をどの産業で捻出しているかも見ることができます。

データで現場を動かす、岡さんの工夫とは?

現役公務員としてRESASを実際に現場で使いこなしていらっしゃる岡さんは、実際にどういった面を工夫されているのでしょうか。

大屋さん:
岡さんは実際に業務でどうRESASを使われていますか?

岡さん:
私が最初にふるさと納税の担当になった時、RESASで見て、糸島市の場合は食料品製造業、飲食サービス業、農業、水産業が高かったことが分かりました。

農業や食料品製造業が地域に波及する経済効果が大きいことも読み解けましたので、そういった返礼品をたくさん掲載することが、地域経済効果を高くするのではないかと分かっていました。

なので、ふるさと納税の返礼品として食料品を中心にたくさん返礼品を載せてもらうように最初に手を打とうと決めました。自信を持ってやっていましたね。

大屋さん:
なるほど……。では、意地悪な質問をしてしまいます。こういうデータのレポートができたとき、すぐに現場の皆さん「ああそうだよね」と理解してくれるものなのでしょうか?

岡さん:
やっぱりそういう時は、そのままグラフを出してしまうと(読み解くほうも)大変なので、工夫してグラフに丁寧な説明をつけるようにしています。これだけだと何のことだか分からない方も、グラフを使ったら自分の説明、意見を付け加えるということをお勧めします。相手が何を知りたいのかを考えて説明を入れると、有効にグラフを活用できると思います。

大屋さん:
説明や比較が分かるように、イメージがわくように、話を通しやすくなるように、という工夫ですね。

岡さん:
そうですね、「言いたいことだけを書く」ということですね。

まとめ

今回は、地域経済分析システムRESASを使った分析方法について現役公務員でRESASを使いこなしていらっしゃる、糸島市の岡さんからご紹介いただきました。今後の地域経済の活性化のヒントとしてぜひお役立てください。

ちょうど夏休みなので、自由研究や宿題として、親子でRESASを使ってみるのも面白いかもしれません。ぜひ一度RESASにアクセスして使ってみていただけたらと思います。

イベント中でご紹介したサンプル資料

実践用にご用意したサンプル資料はこちら

参考)ヤフー・デジタル行政コミュニティ

ヤフーの多様なサービスから得られるビッグデータを活用し、企業や自治体の事業活動を支援する「ヤフー・データソリューション」。 こちらのコンテンツでは、主に行政でのヤフーデータ活用事例をご紹介しています。

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