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ヤフーのビッグデータで探る、「ファンベース」なチーム作りのヒントとは?

2021年7月21日に開催されたオンラインイベント「まちづくりとデータ利活用 ~多目的アリーナ・プロスポーツを軸としたスマートシティ~」のイベントレポートをお送りします。

ヤフー株式会社の内田 真由美より、「ヤフーの検索データから見るBリーグ興行のヒント」として「Bリーグへの関心」と「ファンベースなチームの考察」について発表しました。

ヤフーの検索データの分析について
※検索データはすべて統計情報として分析しており、個人を識別可能なデータは含まれません
※分析の一部は、ヤフーの保有する行動ビッグデータを分析できるデスクリサーチツール「DS.INSIGHT」を用いて分析しています。

検索データ分析によって人々の関心を理解する

「検索」は「消費者行動のモデル」でいう、「行動」の手前にあります。例えば、アリーナへの来場、グッズの購買などを「行動」だとすると、検索データを見ることによって、人々が何に関心があるのか、関心を理解することができます。

それではさっそく、Bリーグについて深堀してみましょう。

Bリーグへの関心

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BリーグとJリーグとプロ野球の検索データを比較すると……

検索ボリューム:
Jリーグの3分の1、プロ野球の6分の1の規模感

性別:
Bリーグは 32パーセントが女性
(Jリーグとプロ野球に比べると若干女性が多い)

年代別:
40代が3割、全体の年齢層割合もJリーグと似ている

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検索のデータの推移:
関心は上昇傾向に。
21年の5月のチャンピオンシップが盛り上がり、過去2年ではピークに。コロナ禍での視聴の変化や試合が中止、無観客になるのか、という関心も背景にあると思いますが、いずれにしても関心は上昇傾向にあります。

10チームを抜粋、チーム別に調査してみると

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性別:
ストークスは、41パーセントが女性。
千葉ジェッツやレバンガは45パーセントが女性と、女性比率が高いです。
仙台やワッツは、女性比率が33パーセント。若干男性が多めです。

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年代別:
琉球や仙台、ワッツは30代以下が約5割。若年層が多いです。
ストークスは40代が最も多く、比較的年齢層が高くなっています。

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検索ボリュームの地域比較:
ストークスは、兵庫県で一番ボリュームが多く、どのチームもホームタウンでの検索ボリュームが多いです。

特徴度:
(特定の地域でそのキーワードがどれくらい特徴的か?を表現したスコア)
ストークスは、兵庫県以外にも、大阪府、鳥取県での関心が高いです。他のチームも、ホームタウン隣県まで関心が高いという結果になっております。このことからも、地域のファンが重要であるということがわかります。

検索推移

チャンピオンシップで話題になったチームは一気に検索が上がるという結果が出ました。

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ファンベースなチームの考察

佐藤 尚之氏の著書「ファンベース」(ちくま新書)では、

ファンベースが必然な理由として
・人口減少やモノの普及により新規ファン獲得が困難になる
・売上の大半を支えるのは既存のファンである
・友人の情報は波及効果が高い
が紹介されています。

つまり今いるファンを大切にすることが未来のファンにつながるということになります。

検索ボリュームとツイッターの公式フォロワー数を比較してみると

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以下のように仮定しました
・検索:
新規や「ちょっと気になるから検索してみよう」といった潜在的なファン 
※チーム名は記載の「完全一致」のみでの検索結果 

・フォロワー:
顕在的なファン


ストークスは名古屋と検索ボリュームは近く、フォロワー数では開きがあります。目指すフォロワー数の指標になりそうです。

千葉ジェッツは、「顕在的なファン」「潜在的なファン」がバランスよく存在するように見えます。

千葉ジェッツをモデルに、「ファンベースなチーム」を考える

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共起ネットワーク:
「西宮ストークス ○○」「千葉ジェッツ ○○」という共起キーワードの「〇〇」の部分をカウントして、比較し、構成割合などから特徴度が高いものをプロットしたもの

千葉ジェッツの特徴キーワードを見ると、グッズや、オンラインイベント、マイルなどファンとのコミュニケーションや、会員特典が充実していることが伺えます。

また、選手、入場曲、音楽など、選手を中心とするライブのような演出、アリーナ、放映への関心が伺えます。全体的にはエンターテインメントな特徴があります。

千葉ジェッツの会員特典は、グッズや飲食購入からもマイルが獲得でき、そのマイルを会員特典と交換できる仕組みができています。このような点がファンのモチベーションにつながりやすいのかなと感じました。

西宮ストークスから見える「地域密着型の特徴」

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西宮ストークスも、ホームアリーナが変わることによって「チーム名が変わるのか」といったことや、千葉ジェッツと同じような形でファンクラブへの関心が表れています。

特徴的だったのは、市民との関わりや、キッズに関するキーワード。ストークスには市民感謝デーや、キッズが無料で観戦できる企画があります。

ユースやトライアウトなど選手育成に関わる検索も伺えました。全体としては地域密着型の特徴があります。

「千葉ジェッツ」「西宮ストークス」両チームの特徴

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千葉ジェッツ:
・エンターテインメント型で、ファンを楽しませる演出や特典、交流が活発
・ファンのエンゲージメントにつながり、ファン継続のモチベーションとなっている

西宮ストークス:
・市民とキッズとの関わりや選手育成など、「基盤づくり」が認知されている点がチームの強み
・エンターテインメント性や会員特典の充実、選手との交流が加わると、さらにエンゲージメントにつながりそう

ここで1つ、急遽飛び入り参加してくださった、千葉ジェッツの池内GMからもコメントをいただきました。

池内さん:
 千葉ジェッツとしては、情報発信だったりエンタメ性みたいなところは、お客さまに向けてどうやってやっていくかというのをすごく念頭に置いてクラブ運営をしているので、そこがよく反映されているのかなと思って、見ながらうれしくなりました。逆にもっとお客さまに「千葉ジェッツ」という名前を届かせたいなという思いはあるので、どうやったらもっと検索ワードに引っかかるようになるのか、気になりますね。

ファンの支持を強くするアプローチ

「ファンベース」では、ファンの支持を強くするアプローチとして、共感、愛着、信頼が大事であるということが書かれています。
どういった施策が考えられるのでしょうか。

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「共感」では、イベントやSNSでの交流、ファンコミュニティの促進、エンターテインメントな企画。

「愛着」では、選手やアリーナの秘話の紹介や、参加型イベント、ファンとともにつくる企画。

「信頼」では、ファンや社会に対して誠実であることや、丁寧な開示、等身大の発信など。

全体的に、情報発信と交流とエンターテインメントが重要のようです。

さいごに

2年前にNBAに行く機会があり、大変感動をしました。今回はファンエンゲージメントというテーマでお話をさせていただいたのですが、全くバスケットを知らない人が入り口に立つという点で大変いい経験をしたなと思ったので共有をさせていただきます。

ファンの入り口としてよかったこと
① スマホファースト:購入や入場がスマホで可能。簡単スムーズ
② バスケットを知らない人でも楽しめるエンターテインメントな企画が多い。
③ アリーナのスケール感

今回、神戸にアリーナができるということで同じような体験ができるのかなと思うと、大変楽しみです。ご清聴ありがとうございました。楽しみにしております。

編集後記
ヤフーでは、検索や人流データなどからインサイトを見つけて、どうすれば皆さまに喜んでいただけるような未来をつくれるか、企業さまや、自治体さまと一緒にデータを活用した取組みを行っております。

動画アーカイブ

内田のパートは58分30秒から1時間13分25秒までの部分です。