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ベンチャー経営者と資金調達の検討(Part1)

こんにちは。LocationMind代表取締役の桐谷直毅です。今回の記事は、ベンチャー企業を始めようとか、資金調達に悩んでいるような人の参考になると良いなと思って、資本政策について書いてみようと思います。社内からも知りたいというリクエストがあったので、それも私のモチベーションになっています。ちょっと長いので何回かに分けて書いてみます。

自己紹介

まず、簡単に自分の経歴を簡単に書いておきます。
・東京大学経済学部卒業。ゼミでは企業金融を専攻
・ゴールドマン・サックス証券株式会社 投資銀行部門入社
・ベンチャーキャピタルAngel Bridge創設パートナー
・LocationMindの代表取締役

ということで、私は金融出身で大企業のIPOやM&Aをお手伝いすることからキャリアを始め、自分自身がベンチャーキャピタルを作ってベンチャーに数十社投資してきたような人間でもあります。そして縁があって自分が作ったベンチャーキャピタルをやめて今は東大発ベンチャー『LocationMind』の創業社長をしています。経歴としてはユニークだと思います。大きな会社や小さな会社のIPOやM&Aどちらも経験していて、投資する側の気持ちもわかっていることは会社経営の際に色んなメリットがあると感じます。その一つは資金調達の場面です。

桐谷の略歴。金融・経済に長く関わってきた人間です

資金調達の検討

自分が社長やCFOとして、資金調達をしたことがある人は、あまりいないのではないかなと思います。投資家とお話しして自分の会社の将来を語り、実際に資金を得ることはワクワクするし、同時に結構大変なことです。たくさん準備したとしても、投資家になかなか良い顔をしてもらえなくて、どうすればいいのか悩む人も多いと思います。よくご相談を頂くので、色々と書くことに悩むのですが、起業家として私が考えていることを書いてみようと思います。

自分の会社に必要か?

資金調達する会社が偉いとか、資金調達の金額で会社の凄さが決まるかというと、それは間違いです。資金調達をしていないから後ろめたい気持ちになる必要も全くありません。もちろん、巨額の調達を出来る会社はそれだけ投資家を魅了したので素晴らしいことなのですが、資金調達のポイントは、あくまで『必要なときに必要な金額を自分の会社に用意できるか』です。会社が十分現金を持っていれば無理に資金調達をする必要はないし、せっかく頑張って成長させた会社の株式を放出することもありません。経営者の責任は『株主のために会社の企業価値を最大化する』ことですから、資金調達をすることでそれが達成できると考えるのであれば、資金調達に取り掛かれば良い、となります。

本当に資金調達してまで、お金が必要なのか良く考えてみること

例えば、自分が100%株主であって、現状でハッピーならば資金調達しなくて好きに経営するのもすごく良い事だと思います。例えば日本を代表する優良企業のなかには上場していなくても巨大企業を作れているケースなどもあります。上場したりすると外部株主に色々と言われるので、非上場のまま自由度高く経営することは創業者としてメリットが大きいと思います。この道は並大抵ではなくて、優れた経営の形の一つだとも思います。羨ましい!

自分が100%株主ではない場合、色んな株主が会社の経営方針で衝突することがありえます。もちろん会社を経営するのは経営者であり必ずしも株主とイコールとは限りませんが、ベンチャーの場合はほとんどの場合が創業者達=株主=経営者です。また、一度でも資金調達をすれば創業者以外の利益も考える必要が出て来ますから物事の調整が格段に難しくなります。なので、本当に資金調達は必要なのかと真摯に向き合うべきです。調整相手が増えますよ!究極的には、会社は株主のものなので、やはり前述の通り、企業価値の最大化を考えることで意見を取りまとめながら経営することになります。

何をもって資金は必要なのか?

もちろん、お金はあればあるほど安心なのですが、わざわざ資金調達するほどのことって、どんなことでしょう?

ポジティブな資金調達シーンは『自前の現金だけでは積極策が取れなくて、お金さえあればかなりの確度で会社を大きくできるのに!』といった場面でしょうか。資金調達がなければ10年かかるところを1年で達成したい、とか、今は赤字先行だけどガンガン投資することで積極的成長に挑戦したい、といった発想です。よく時間をお金が買うという表現がありますが、ベンチャーの企業価値を上げるためには勝負所でのスピード感や思い切りが大事な場面があります。高成長を続けられるベンチャーと、堅実ながら成長のペースが遅いベンチャーでは企業価値が全く違いますし、積極的な成長能力が示せないベンチャーは投資家にとって面白くはありません。自分がどういう会社を目指していて、本当にいま、資金が必要だと確信を持てているのであればそれは資金調達のタイミングかも知れません。

ちょっと苦しいシーンでは、「お金が足りなくて会社がつぶれてしまいそうだから資金調達したい」というケースもあるでしょう。つらいときほど資金調達は難しいですから、そういう場面に陥る前に資金調達しておけるのが本当は理想的なのですが、そうも言ってられない場面もあります。仕方がないときは仕方がない。上場企業だって倒産するときは倒産するので、上場できるほどエクセレントな会社でも資金調達を上手にできない場面は少なくありません。確固たる数字を持っていませんが、未上場企業はつぶれる会社の方が格段に多いし、資金調達を一度もせずに終わる会社が大半だというのは、まず間違いないことと思います。

大成長?常識的な成長?成長しない?

資金調達の覚悟!

覚悟というと構えてしまうかもしれませんが、私は資金調達をする際にいくつか覚悟していることがあります。

  1. 企業価値最大化していると心から信じること

  2. 自分の当分の人生を賭けること

  3. 人生で一番喜怒哀楽で忙しいこと

  4. 投資家と添い遂げること

この4つです。

 一番喜んでもらいたいのはやはり会社の仲間ですし、彼らの家族が養えることも非常に大切です。会社の価値が上がり続ける限りはそれが満たせる確率が上がり続けると私は思っています。また、そのために自分の当分の人生を賭けることは当然のことで、気まぐれに辞めて色んな人に迷惑をかけて良い事でもないと思っています。
 私のような若輩者は成功してから語るべきとは思いますが、一般論として経営者をしていると、得るものも多いのですが、同時に色んなことを犠牲にする覚悟も必要に感じます。起きて寝るまで会社のことを考えているという社長もいますし、寝ている間も会社のことを考えているという社長もいます。
 資金調達は会社にとって最大級の大きな意思決定なので、あのときミスったなと後から思ったりしないかなとか、経営者にはプレッシャーも責任もあります。この選択には向き合う必要があります。幸いなことに資金調達の縁があった投資家とは一蓮托生で添い遂げる気持ちでちゃんと向き合うことも大事です。投資家によって多様ですが、仲良くすることで会社の成長を助けてくれることもたくさんあります。悩んだときに相談にのってくれて頼りになるのも投資家だったりします。ドライに言えば会社をうまく育てられると投資家は儲かるし、それは投資家にとって大事なことですから、投資家としても向き合ってくれるはずです。逆に言えば、自分の会社の株主と反目して良い事など一つもありませんし、自社への理解を示さない株主を迎え入れるか入れないかは経営者はよく考える必要があります。私も人間ですから、資金調達活動中にお話しする投資家候補のなかには波長があわないなと感じることが何度もありましたが、そういったときは心に従うようにしています。何年もこの人は違うなと思う人と一緒にいるのは、とても大変です。良い縁に辿りつくまでには一定程度の人数とお話しすることになると思います。

まとめ

『資金調達が必要だな、覚悟が出来たな』というあたりまで書けたので今日はこの辺りで筆を下ろします。次回は実際に資金調達をするときに、どんなフレームワークで私が考えているかを書いてみようと思います。色んな記事を書こうと思っているので前後するかもしれませんが、反響があるのならPart2の優先度を上げるかも知れません。

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