第3回「鉄道に乗っている人の推計、駅改札を通過する人の推計の話」
電車の車両内や鉄道駅には、たくさんの広告枠があります。交通広告といわれるものですが、今ではマスコミ4媒体といわれている「雑誌」や「ラジオ」よりも市場規模が大きく、かつ、デジタルサイネージという成長分野もあって、大変に注目度が高い広告サービスの一つになっています。
しかし、新型コロナウィルス感染症のために通勤する人が減ると、こうした広告枠の売れ行きが悪くなったり、広告主から値下げを求められたりするようになりました。鉄道会社であれば電車の車両に乗っている人の数も、それぞれの駅の改札を通過している人の数も、正確な数字がわかりますが、これらの数字は門外不出の扱いで、鉄道会社の広告代理店の子会社であっても必ずしも自由にアクセスできる数値ではありませんでした。
これでは広告主を説得することが難しいですから、鉄道会社とは別に、広告代理店が協力して、いくつかの駅を選び、いくつかの日を選んで、カチカチと人流をカウントし、広告主の参考になるようなデータを作成していました。
LocationMindでは、ある程度の誤差で「個別の路線ごとに何名くらいの人が乗車しているか」また「個別の駅ごとに何名くらいの人が改札を通過しているか」を推計しています。当たり前にできそうなお話に感じるかも知れませんが、この裏側にはLocationMind独自の技術が貢献しています。
LocationMindでは、GPSデータの基礎処理(🤞)をする際に、「移動」しているデータと、「滞留」しているデータ(🤞)とを振り分けた後、「移動」しているデータは、移動手段を機械学習によって「徒歩」、「クルマ」、「鉄道」に分解しています(「交通モード判定」(🤞)といいます)。その後、その点の移動パターンを実際の地図と比較して、点列の移動を道路や鉄道路線上にぴったりと一致させる処理をしています(マップマッチング(🤞)といいます)。この処理により、乗車していている路線を判定したり、交通モードが「徒歩」から「鉄道」に変化したタイミング、あるいは、「鉄道」から「徒歩」に変化したタイミングで、改札を通過した、と推計しています。
これらのデータは、ダッシュボード形式のサービスにしており、xPop for Station / Trainという名称で、主に鉄道広告の業務を担っている企業にお使いいただいています。これらの会社から鉄道広告の提案を受けられる広告主の方々には、駅前の人流の多寡ではなく、きちんと駅改札通過数や鉄道車両乗車人数の推計値をもとに、提案書が作成されています。
鉄道路線別の移動がわかるため、例えばJR新宿駅で乗り換えた人が、その後どの路線に乗り換えたか、であるとか、サンシャイン60のように近隣に複数の駅がある場所では、鉄道できた人たちが実際にどの駅を利用しているのか、その増減の傾向はどうなっているか、といったことを把握できます。
また、ある駅で降りた人が、次にどこで滞留しているのか、あるいはどのような推定居住地(🤞)からやってきたのか、その頻度は週に何回くらいあるのか、などを分析することもできます。また、あるイベントにやってきた人は、推定勤務先(🤞)から直接来場したのか、推定居住地(🤞)から来場したのか、イベント後は近隣に立ち寄って帰宅したのか、あるいは直接帰宅したのか、いくつかの利用駅のなかで、どの駅を使っている人が多いのか、なども過去に分析実績があります。
※(🤞)マークがあるものは、いずれ掘り下げたBlogをポストする予定です
「LocationMind xPop」データは、NTTドコモが提供するアプリケーションの利用者より、許諾を得た上で送信される携帯電話の位置情報を、NTTドコモが総体的かつ統計的に加工を行ったデータ。位置情報は最短5分毎に測位されるGPSデータ(緯度経度情報)であり、個人を特定する情報は含まれない。