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2023年、「産業消滅社会」到来の予感

皆様、あけましておめでとうございます。新年を迎え、ローカルツーリズム株式会社代表の糀屋総一朗から皆様への新年のご挨拶と、今年の展望について語らせていただきます。

「地方消滅」ならぬ「産業消滅」

みなさま、あけましておめでとうございます。
本年も公私ともどもよろしくお願いいたします。

さて、2023年の新年の始まりを迎えて、今年の私なりの展望をまとめてみたいと思います。

宗像市の離島大島への投資を2019年から始めて3年が経ちますが、ここ最近とくに意識させられるのが「地方消滅」ならぬ「産業消滅」の姿です。急激な高齢化と後継者不在によって産業がなくなっていく事態を目の当たりにすることが多くなってきました。

大島の民宿は、60代〜70代の高齢者によって運営されているのですが、今年に入って、怪我や病気で宿の運営が困難になるケースが見受けられるようになってきました。足の怪我で2階に上がるのも大変だったり、病気による入院などで宿の運営がままならない状態が生まれています。

かといって、その宿を代わりに運営してくれる若手がいるわけでもなく、放っておいたらこうした事業はなくなってしまいます。運営している本人たちも、誰かに譲ってまで事業を継続させようという考えは希薄なように思えます。特に田舎ですと、事業をやめて誰かに売却するということが世間体もあり消極的に捉えられがちなのかもしれません。当たり前ですが、放っておけば、私たちからみて魅力的な宿もいつの間にか無くなってしまうでしょう。

こうした事態は、人口580人の小さな島の話だけには止まらず、日本のいろいろな地域で見られる光景なのではないでしょうか?こちらの記事「事業創出だけではなく、事業承継で地域の未来をつなぐ ローカルツーリズム株式会社の新たな展開」でも書きましたが、中小企業庁のデータによると、経営者年齢のピークは60〜70代。多少改善されたとはいえ、6割程度の会社が後継者不在だというデータも帝国データバンクから出ています。今度経済のリセッションが予想される中、廃業へのインセンティブが高まり後継者不在率が悪化する可能性もあります。

帝国データバンクのリリース(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000376.000043465.html)

このように、日本の中小企業のおよそ半数以上は、事業承継の候補がいない状態となっています。もちろん、将来的にそのうちのいくつかは事業承継により事業が継続されることになりますが、承継する人がいなくなればその代で終わってしまうわけです。

もちろん、補助金に支えられてなんとか成立しているようなソンビ企業はなくなってもらった方がいいわけですが、しかし、現代的な感覚でリノベーションすることで蘇る事業もあるはずで、そうした事業をみすみす消滅させていくことは日本にとって大きな損害だと言えるのではないでしょうか?

この数年で「産業消滅社会」はもっとわかりやすい形で顕在化してくると思います。この事態を解決しないと、地域の衰退は決定的なものとなるでしょう。

事業創出だけはなく、事業承継を!

今述べたように、日本は「産業消滅社会」に片足を突っ込んだ状況だといえます。そのような状況下で、私たちはどのようにこの課題に挑んだらいいのでしょうか?

もちろん産業には新陳代謝があり、新しい産業が生まれて、旧態依然とした産業は衰退していきます。そうした正常な生態系の摂理によって生じる産業の消滅は避けられるものではありませんが、急激な高齢化と事業承継者の不足によって、まだまだ可能性のある事業が消えていくことには歯止めをかけないといけません。

当社は、「地域循環経済圏の拡充」をビジョンとして地域で活躍するローカルエリートへの投資を行ってきました。それは主に、事業を創生する、いわばベンチャー企業に投資をしているようなものです。

しかし、事業を創生していくことも大事なわけですが、従来から地域に根ざしていたり、地域の特徴となっているような、その地域にとってなくてはならないような事業をどうやって次世代に残していくか? という視点もとても重要です。

そこで、私たちは事業を創生していくだけではなく、すでにある地域の事業をいかに継承させていくか? という視点から、今年は事業承継に関するサービスをいくつか展開していこうと考えています。当社が得意とする宿泊事業に関する事業承継のサービスと、事業承継のマッチングを可能とするサービスを検討しています。具体的な内容は、追ってリリース等で皆さんにお知らせさせていただきます。

産業消滅がコミュニティを消滅させる


みなさん「シュレード」という会社をご存知でしょうか? この会社はアメリカのニューヨーク州で設立された老舗のナイフメーカーで、ナイフ工場を多く保有し、100年以上にわたって雇用を生み出してきました。また、地方都市のコミュニティの一部となっていました。

ところが、2004年にシュレードの工場が一斉に人件費の安い中国へと移転してしまい、ナイフ工場は姿を消し、500人以上もの失業者が生まれてしまいました。この結果、都市のコミュニティが変容しはじめ、職を得られない人も多く、精神障害者や薬物依存者が増えてしまったのです。

こうした事象は、日本の各地でこれから起きる姿に思えます。実際に、私が投資をする宗像市の大島でも、民宿や旅館などが廃業していきますから、そこでの雇用がなくなります。実際に大島のママさんたちと話をしていても「仕事がない」という言葉を何度も耳にします。仕事がなければ、大島から出ていく人たちも増えていくでしょう。高齢化による人口減に相まって社会的人口減少も増えて、コミュニティは衰退してくことにならざるをえないでしょう。コミュニティが衰退していけば、この大島の歴史伝統を支える骨組みが弱まっていき、地域の魅力を失わせる原因となります。

事業をつくり、そして繋ぐローカルエリートの時代へ!

悲観的な話が続きましたが、その一方で、日本の各地域には、現代的な感覚で旧来からある事業を生まれ変わらせて高単価のサービスに磨き上げている人たち(私たちはローカルエリートと呼んでいます)がたくさんいて、希望をつないでいます。

例としては、福岡で焼酎の価値を再定義し、日本国内のみならず世界を視野にビジネスを始めている「SHOCHU X」さんのような取り組み、プロダクトに注目しています。2023年はもともと地域の資産としてあったものをブランディングし直して、外に大きく展開していきたいと考えている方やプロダクトに対して適切に投資を行っていきたいと考えています。

また、経営難に陥った熊本県人吉市の第3セクター「球磨川くだり株式会社」の経営再建を依頼された瀬崎公介さんも私が考えるローカルエリートです。過去8年間で7回の赤字決算、債務超過3年目という第三セクターの再生を依頼され、2020年7月豪雨に襲われ全ての財産を失うという絶望的な窮地にもかかわらず、わずか1年で観光複合施設”HASSENBA"を開業し、「シークルーズグランピング熊本天草」を開業するなど、地域の再生に大きな役割をになっています。

私たちは、産業消滅社会を迎えている日本において、こうしたローカルエリートの頭数を増やしていく必要があると考えており、当社のWEBメディア「ローカルツーリズムマガジン」でも新年から、時代の新しい開拓者の特集を組んで紹介をしていく予定です。ローカルエリートがこれからの日本の地域創生に必要な事業創生者であると同時に事業承継者であるという思いを強く持っており、そうした人たちの活動を多くの人に知ってもらいたいと考えています。

2023年もどうぞ、よろしくお願いいたします。

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当社の事業・投資等に興味がある方は、ホームページやTwitter @komehanaya のDM、Facebookのメッセージからお気軽にいただけると嬉しいです。

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