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海上レストラン、ヴァージン島

ヴァージン島でビールを飲んだ時の話。正確にはその島に辿り着いてはいない。その島の沖のレストランに行っただけ。満潮時、座席は海に沈む。


ボホール島にはセブからフェリーで2時間かかる。ボホール島の港、タグビラランからタクシーで40分走り、橋を渡った先にパングラオ島がある。そのパングラオ島からバンカーボートで30分走ると、ヴァージン島に着く。

そこで昼食を食べるということは聞かされていた。新鮮なシーフードが売りだということも聞いていた。だから島陰が見えて来ると喉が渇いていたことを思い出し、ビールを飲みたくなった。視界の中、徐々に島は大きくなっていく。そして、私と島との間に白い煙が上がっていることに気が付く。心なしかいい匂いもする。煙を辿って行くと小さなボートが集まっている。大した数ではない。10隻程度だろうか。
島はまだ先、船はエンジンを低速に落とす。気が付くと水面が白くなっている。島から砂洲が伸びているのだ。ボートの集団はその砂洲に沿って停泊していると気がつく。我々のボートはその端に錨を下ろす。

船頭は言う。ここで待っているから食うなり飲むなり好きにしてこいと。梯子を海の中に下ろす。まだ状況がうまく飲み込めていなかった。が、少し先に海の中、パラソルが立っていることに気が付く。その下にテーブルがあり、椅子が漂っている。ようやく気が付く。市場やレストランに行くのではない、ここが昼食会場なのだ。

ヴァージン等の海上レストラン

昨晩は満月であった。大潮である。そうして、満潮時であった。水位は腰下の位置である。i Phoneと財布だけ持って海に降りる。50m程歩いて一番船から近く、最初に目に入ったあのパラソルに向かう。その先にバンカーボートが停泊している。魚、烏賊、貝類、雲丹、海老なんかが並べられている。それらはついさっきシュノーケルで見て来たようなそれである。その辺で取って来たのであろう。貝類はバケツに入っていて、もちろんまだ生きている。値段を聞く、試しに魚の名前も聞いてみる(現地語だから結局よくわからない)。注文したら焼いてくれる。ボートには数台のカセットコンロ、大きなフライパンが乗っている。鮑をふたつと、烏賊を一杯注文する。味付けはおまかせにする。

席に通される。テーブルとパラソルは砂洲にしっかり刺さっている。ドリンク類が置いてある。連れはココナッツを注文する。ココナッツの実に穴を開けて、ストローを挿しただけである。うまいそうだ。私はサンミゲル ピルセンをお願いする。冷えてないがいいか?と聞かれる。ノープロブレム。ここで飲んだらなんだってうまいだろう。案の定、一本では足りず正午前から1リットル程ビールを飲むことになった。

立って飲む。椅子は高さが足りない。座ると胸まで水に浸かりそうだ。すると、たくさんの椅子を持って来てくれる。重ねて高さをだせということであった。連れと私はそれぞれ、そのプラスチックの椅子を5〜6個重ねて、その上に座る。と、砂に沈む。もう一つ椅子を追加する。

料理が届く。鮑は刻んで、にんにく、青唐辛子、赤いスパイシーソースで炒めてある。爪楊枝で食べる。美味しい。ややあって烏賊も届く。こちらは塩胡椒で味付けされている。カラマンシー入りの醤油で食べる。美味しい。

隣のテーブルに家族連れがやってくる。雲丹を4人で10個くらい頼んだようである。そちらのテーブルは背がやや低い。小さな波が来る。雲丹たちは流されて、海に帰って行った。

上を見る。水色のそらに薄い白い雲が幾筋か走っている。日差しは夏のそれである。風はほぼない。あたりのボートから魚を焼く匂いが漂っている。遠く水平線を眺めて、烏賊をつまみ、サンミゲルをおかわりする。
下を見る。海藻が漂っている。その合間に小指の第一関節くらいの海月も漂っている。四角い海月。
ボートがやってくる。品物を運ぶ船のようだ。海にサンミゲルやコーラが投げ込まれる。ウエイターがそれを拾う。注文すればその栓を開けてくれる。

php1,000。会計はたぶん適当である。というよりか品物を決めたときの言い値よりも安かったと思う。それでいいのだ。ちょうどいい。

我々のボートに戻る。船頭とその補佐(弟)は寝ている。我々が乗り込むとさっと起きて仕事に戻る。休憩は大切である。

笑顔で飯はどうだったか、と聞きながらエンジンをかける。
大きな声で答える。最高だった。


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