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背後に気配を感じる観音堂

免許の更新のために車で市街に出たことがあった。
免許の更新が終わったのは午後3時ごろ。

市街は街の中央あたりに山があり、頂上には山城が建っていて、天守閣が展望台になっている。
免許更新で近くまで車で行くし、久しぶりなので展望台駐車場に車を停めて、天守閣から街を一望した。

そろそろ帰ろうと思って下山していたところ、途中で『この先ドライブウェイ』の看板が見えた。
その山には数kmのちょっとしたドライブウェイが通っていた。
ドライブウェイは夜間は通行不可で、通れるのは日中だけだが無料である。
一度も通ったことがなく、これもせっかくだし通ってから帰ろうと思って、その看板の先へ車を走らせた。
私の他は誰も走っていなかった。

ふと道に沿って幟旗が見えた。
神社があるのだろうと思って側道に車を止めた。
確かに神社があって、道の反対車線側にお寺もあった。
なんとなくお寺の方の階段を上ると、お寺には住職も誰もいないようだった。
ただ、常香炉の中に消えかけている線香が煙を上げているだけだった。
私はお参りだけしてお寺を後にした。

車を停めている側にあった神社は、階段下に賽銭箱があった。
その賽銭箱の奥に長い階段が伸びている。
もう時計は4時半に差し掛かろうとしていた。
なんだか異様に怖かったが、ここまで来て無視するわけにもいかないと思って階段を上った。

階段は左へくの字に曲がった。
階段の途中に社務所があったが、そこを曲がった瞬間に冷や汗が止まらなくなった。
背後に誰かがいるような気がして、後ろを振り向くことができなかった。
怖かった。
いままで生きていて、こんなにも恐ろしい思いをしたのは一度もなかった。

お社の前に着いて、ここが神社ではなく観音堂だったことを知った。
巨石の前に社が埋め込まれている、岩窟観音だった。

お参りをした。
背後が怖いだけで、観音様を怖いとは思わなかった。
不躾ながら写真撮影の許可と、安全な帰路を願った。

思い切ってえいやっと背後を振り向くと、そこには誰もいなかった。
私は観音堂を後にして、逃げるように家まで帰った。

帰宅してから、あの山は心霊スポットとして有名な場所だったと知った。
山中で自殺したひとの霊だとか、事故死したひとの霊だとか、武者の霊が出るらしい。
おそらくドライブウェイが夜間通行禁止なのも、事故が多発したせいなんだろうと思う。

それにしても、あの恐怖はなんだったのだろうか。
あの観音堂はどうやらパワースポットらしいのだが、確かになんらかのパワーは感じた。
調べている中、5chのオカルト版に『観音様が奉ってあるところ、上の方から視線を感じる』という言っている方がいた。
私が背後に感じた気配は、その視線の持ち主のものだったのだろうか。

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