小説家の連載「18歳高3娘の彼氏が35歳?!」第4話

〈前回のあらすじ:18歳成人だから自分の恋愛に口出しされる権利は無いと主張する娘・ヒナコ。父のヒロシは、交際を認めてもらいたいなら挨拶に来るのが条件だと言う。だが、35歳の彼氏・ヨウタはヒナコの親の事をめんどくさいと言い放ち、距離を置きたいと言い出し・・・・〉

 ヒナコは元気無い様子で学校へ行った。アオイは話を聞いてあげたかったが、時間が無かったのでできなかった。ヒロシは朝早く出勤し、夜まで帰ってこない。
 午後から勤め先の英会話教室へ出勤したアオイは、生徒達が来る前、同僚の講師に娘の事を愚痴る。アオイの勤め先は、1日に数クラス教える。子供達の年齢や習熟度で、レッスンの時間帯を分けており、1日に3人の講師が出勤する。2人はその日1日レッスンを担当し、残る1人はその日は教えず、代わりに事務作業や入会希望の生徒の対応、保護者対応などを行う。曜日ごとに出勤する講師を決めてローテーションを組んでいて、この教室で働く講師達で上手く回していた。アオイも、事務作業をする曜日には教えない。ちなみに働くのは日本人だけでなく、英語圏出身の外国人講師も所属している。
「・・・・っていう事があってね、そりゃ18歳が成人って言うのは理解してるけど、35歳ってあんまりじゃない?私だって若い頃は自分の恋愛について親に口出しされるのはうざかったけど、そんなに年の離れた人と付き合った事は無いわよ。感覚が違うのかしらね、私がおばさんだから今の時代の感覚に合ってないせいなのかな?」
「アオイさんがおばさんくさいとは思いませんよ。あたしもその彼氏はちょっとやばいと思います。だって、35の人が18歳の子と付き合いますか?ちょっときもいですよね」
 講義の無い日にだけ働く女子大生講師が眉をひそめながら答える。
「そもそもXで出会ったってとこが既にやばいですよね。進路のアドバイスって、塾講師とかでもないのにそんな事します?普通。娘さんの行きたい大学の卒業生とかならまだわかるけど。でも女子大でしょ?娘さんの進学予定の大学って」
「そうなのよね・・・やっぱどう考えてもあやしいわよね」
 今日は事務作業担当の講師も話に参加する。この人はずっと中学の英語教師として働いていて、定年後にこの教室で働き始めたおばあちゃんである。
「まあねえ。親としては心配よねえ、アオイさん」
「ええ、本当に」
「私も教師をしてたからわかるけど、35歳と18歳なら、教師と生徒ぐらいの年齢でしょ?その年齢の若い女の子をそういう目で見るのは感心できないわねえ」
「そうですよね」
 がっくりするアオイ。
 一方、ヒロシも、会社の昼休みにこの話をしていた。
 昼休み、20代の男性部下を誘って蕎麦屋でランチしたヒロシは、娘の事を相談する。
「・・・・という訳なんだよ。今は歳の差恋愛って普通なのかな?」
「うーん。俺の意見ですけど、歳の差恋愛をするやつって、どっかおかしいと思うんですよね。個人的な意見なんですけど」
 若い部下は蕎麦をすすりながら、
「だいたいの人って、同い年ぐらいと付き合うじゃないですか。でも、歳の差恋愛を求める人って・・・若いのにおじさんを求める子は、ファザコンとか、母子家庭で育って父親に憧れがあるって言うし」
「でも、俺はこの通り健在だし、娘ともよく話すんだよ。ヒナコがファザコンだとは思えないんだが・・・」
「じゃあお嬢さんはファザコンって言うより、相手の男に丸め込まれたのかも。進路の相談で付き合うようになったって事は、相手の男が言いくるめてきたのかもしれませんね。俺は彼氏の方がやばいと思います」
「だよな・・・」
 肩をがっくりと落とすヒロシ。
「だいたい、そんだけ歳離れてたら、普通は話も合わないし、付き合っても面白くないですよ。俺も年下は好きだけど、あんまり若かったら会話にならないから嫌です。それに若い子に行くって事は、同年代やちょっと下には相手にされないって事ですよね」
「・・・・」
 部下の言葉に何も言えなくなるヒロシ。

 その夜、食卓に揃った親子3人。
 まずアオイが口を開いた。
「ヒナコ、ママは、あなたに彼氏ができても構わないと思っているけど、やっぱり35歳なのは、歳が上過ぎると思うの。もちろん、彼が挨拶に来てくれて、ちゃんとした人なら、何も言わないけど」
「パパも同感だ。年下と付き合うって事は、同年代の女性には相手にされない男って事だしな。ただ、頭ごなしに否定する権利はパパとママには無いから、まずは挨拶に来て欲しい」
 両親の意見を聞いたヒナコは、顔をくもらせた。そして、泣きながらぶちまけた。
「無理なの・・・彼が、ヨウタが、両親には会いたくないって・・・」
「何だと?」
「何ですって?!」
 娘の発言に驚く両親。ヒナコは泣きながら、ヨウタに言われた内容を伝えた。
「・・・・っていう訳なの。トラウマがあるから、パパとママには会わせられないって」
「な、何てクズなの?!そんな男大丈夫?!」
「ヒナコ、お前はそれを言われてどう感じた?」
 怒る母と、冷静な父。娘は泣きじゃくりながら、答えた。
「わからない。でも・・・・彼が会いたくないなら、2人には会わせられないと思う。ごめんなさい」
「何て根性の無い男なの?別に大した事は言って無いのに。挨拶に来てねってだけでしょう。ママだって、彼に会わないとどんな人か見極められないじゃない」
 憤慨するアオイ。
「うん・・・私だって、パパとママに会って欲しいよ。でも彼が・・・」
 ヒロシは黙って考え込んだ後、娘に告げた。
「ヒナコ。この件はママと話し合う。とりあえず、その彼氏と会うのはしばらく控えなさい」
「で、でもパパ!」
「別れろとは言っていない。別れて欲しいとは思うが。パパもママも、18歳のお前が35歳の男と付き合うのには反対だ。ただ頭ごなしに叱りたくないから挨拶に来て欲しかったんだ。それなのに、その挨拶から逃げる人との交際は認められない。ちょっと、落ち着くまで頭を冷やしなさい」
 ヒナコは父の言葉にうなだれた。食卓には、重い空気が漂った・・・。
                             次回に続く
 

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