褒める話し

時の流れには逆らえず、お誕生日を迎えるごとに、シワやシミが増えてくる。鏡をみながら「美肌が良しとされるのは美容業界の洗脳のせい、気にしすぎ!」「これは歳を重ねたという証。美しいものなの!」と極力前向きに捉えようとしても、どこか諦めや劣等感を抱いている自分に気がついた。

「やっぱり美肌を目指してみよう」と心に決めて、いつもより丁寧にケアをしてみた。

その2,3日後、素敵な知人男性がふと「なんだか肌が綺麗になったね」と言ってくれた。彼はホストのように世辞を上手に言えるタイプではない。きっと、なんとなぁく言ったのだ。でも前述のコトがあった私は本当に嬉しく、気持ちが舞いあがった。「ありがとうございます、嬉しいです」と、さらっと答えたけれど、私が天にも昇るような気持ちであったことを、彼は知らない。

人間以外の「褒められて喜ぶ動物」といえば、やはり「犬」だろう。数万年前からヒトと暮らしていた形跡があるそうで、人間は犬を牧羊や狩に使い、餌をあげる。そして犬は、人間の役に立ちご飯をもらう。お互いを必要として助けあう関係性ができて長いので、あの愛くるしい瞳の生き物は「人間が喜ぶことをして、褒められれば餌が貰える」と理解している。他人を幸せにすることが、自分の生存=幸せに繋がるのだと本能で知っているのだ。

他人を褒めることは、自分を幸せにすることと同じなのかもしれない。

褒めるのが苦手、どうしたらいいの?という場合は、素直に「良いな、素敵だな」と感じたことをシンプルに相手に伝えるだけでいい。苦手で不安であれば、身近にあるモノを褒めてみてもいい。「この靴履きやすくていいな。」とか、この映画の音楽がいいな、このスマホのCPUスゴい、など、なんでも口に出していると、そのうち褒め上手になってくる。

注意が要るのは、初対面や興味のない相手に身体的な外見について言われることを不快に感じるひともいること。「可愛いですね、スタイル良いですね」などは、避けたほうが無難かもしれない。会話をしながら、そのひとの好きなものや、話しの内容を褒めたり、服や持ち物をみて「良いですね」と言うだけで、まずは充分だ。

それから無理に褒めないこと。「素敵だな」と思うことを口にする、それだけ。モテ講座などで「相手を褒めましょう」と教えるところがあるけれど、あれは言葉が足りない。無理に褒める必要はなく、いいなと思うことを言語化して他人に伝えればいいのだ。無理やり褒めていると、だんだん辛くなるし、言葉の重みがなくなってくる。

あなたの何気ない褒め言葉が、誰かにとっては本当にありがたい励ましになったり、幸せに繋がったりする。最近褒めてないな、とお心あたりがありましたら、ぜひお褒めください。