そろそろ自分の体をいたわることを考え始めたほうがいいのかもしれないと思った日の午後、床の上で寝てしまい体バキバキ

最近、悪いところが増えてきたように思う。
加齢にともない、いろいろ悪くなってくることは仕方がないのかもしれない。それにしても多すぎる。ざっと見渡したところ、複数個の悪いところが目につく。
腰、膝、目、記憶力、天気、治安、店員の態度、車の燃費、途中から加齢関係ないだろバカヤロー。言葉遣い。

中でも最近特に気になっている悪いところ。それが姿勢だ。
私は姿勢が悪い。猫背だ。
念のため記しておくが、猫背といっても背中がふわふわの毛になっているわけではない。せいぜい語尾にニャンをつけるくらいだニャン。

意識して背筋を伸ばさないと、すぐにくるりんちょっと背中が丸まってしまう。歩き疲れたときなんか、背中を丸めて丸めて球体にトランスフォームして転がって家に帰ろうかと思うほどだ。

なぜこうも背中が丸まってしまうのか、自分なりに分析してみた。

以下の記事にも書いてあるが、私は人が苦手だ。

類は友を呼ぶというが、「人が苦手」の類は誰も呼ばない。|英令目野ピイ (note.com)

いつでも闇に隠れて生きる俺たち妖怪人間なのさ。

人に見つからないよう見つからないよう縮こまって縮こまって生きてきた結果、肩がどんどん内側に向き、背中も前側に曲がっていったに違いない。最終的には右肩と左肩がくっついてしまい、名称はただの「肩」となる。背中は緩やかに曲がっていき、おなかと一つになる。おなかと背中が合体し、名称は「お背中」だ。このままでは「お背中流しましょうか」とか言われてしまう。聞いたことある普通の表現だった。

自分で分析してみてよくわかった。これは仕方がないから諦めよう。だってしょうがないじゃないか。妖怪人間なんだから。妖怪ボール男になって転がってしまえばいいのさ。

抱えている問題は猫背だけではない。
首がいつも少し傾いている。
いつでも小首を傾げているといえば、かわいらしく思われるだろうか。
顔をまっすぐにキープすることがどうしても難しい。すぐにこてっと右側に倒れる。
大丈夫か、これ。いや、あせるな。落ち着け。たんにまだ首がすわっていないだけなのかもしれない。バブバブ言ってればそれで済むのかもしれない。ほら、ますますかわいく見えてきたでちゅねぇ。

姿勢が悪いせいで困っていることもある。
たとえば、街中を歩いていてぴったり人型にくり抜かれた壁があったとき、間違いなく私はその穴を通り抜けることができないだろう。
それに、姿勢が悪いと体が疲れやすくなったり集中力が持続しないなどの問題もあるらしい。

そこで私は少しでも姿勢を良くするために、ハイテク姿勢矯正ロボットを装着することにした。嘘だ。そんなものはない。そんなものはないが一応聞いておくれ。
ハイテク姿勢矯正ロボットとは、宇宙服を上半身だけ着るような形で、頭からすっぽりかぶる仕様になっていた。素材はなんというか、洗濯機みたいな感じだった。ガチガチに硬いので関節もうまく動かせない。胸に電子パネルがついていて、矯正の度合いを調整できるようだ。腕や背中、腹部のあたりにはかわいらしい猫のキャラクターがデザインされている。きっと猫背からきているのだろう。という話が全部どうでもいい嘘なのである。

ハイテク姿勢矯正ロボットではなく、実際に私がとった対策はストレッチだ。ストレッチで体をほぐし、鮭の身をほぐし、緊張した場の空気をほぐそうと思ったわけだ。
中学生の頃、私はバスケットボール部に所属していた。そのときに毎日やっていたストレッチ14種類を今でもちゃんと覚えていた。体が覚えていたのだろう。体が覚えているってことはもしかしたら今でもあの頃のようにレイアップシュートをきれいに決められるかもしれないし、あの頃のようにスクリーンアウトもばっちりかもしれないし、あの頃のように髪の毛もふさふさかもしれない。

一日二回、朝と晩にストレッチをやり始めた効果は絶大だった。
凝り固まったような体がしなやかになっていくのを感じ、疲れにくくなった。これが本当なの。疲労が全然たまらなくなったの。これテレビショッピングじゃないから大袈裟に言っているわけではないの。
正直、若い頃はストレッチの効果なんてまるで感じていなかった。この歳になって初めて体をほぐすことの大切さを理解した。

そして、これがまた嘘のような話なのだが、毎日ストレッチを続けていると本当に体がやわらかくなってきた。なんなら若い頃より今の方がやわらかい。膝を曲げずに足をまっすぐに伸ばし、つま先に向かって手を伸ばすあれ。昔は全然手が届かなかったのに、今は足の指をしっかりとつかめるまでになった。ものすごく体がやわらかくなったのか、ものすごく足が短くなったのかのどちらかだ。
他にもやわらかくなったものはある。昔ならビービビービーとクラクションを鳴らしていたところ、最近は急な割り込みにも「ふぅむ……。まあいいでしょう」と思えるほどやわらかい性格になった。あとはタオルだ。タオルを新調したところ、すごくやわらかかった。

この勢いで姿勢もよくなったと言いたいところだが、正直、まだ姿勢が美しくなったとは言い難い。しかし、性格がやわらかくなった私はそんなことまったく気にならなくなっていたのであった。


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