英令目野ピイ

面白い物語や面白い文章が好き。エッセイでは笑える文章を目指しています。小説では文章だけ…

英令目野ピイ

面白い物語や面白い文章が好き。エッセイでは笑える文章を目指しています。小説では文章だけではなく展開で楽しんでいただけるものを。基本的には「何言ってんの、こいつ」と思われる作風ですので、そのリアクションで正解です。 Twitter(@lmnopdesu)

マガジン

  • エッセイ

    雑記。日常にあったことを本当半分、嘘半分で。

  • ショートショート

    とっても短いお話たちの住処。出かける前や寝る前などに、ぱくっと一口でどうぞ。

  • 短編小説

    ショートショートよりも少し長めのお話たちの住処。

  • 漫才

    かわいいかわいいおサルによる漫才劇場。

最近の記事

  • 固定された記事

類は友を呼ぶというが、「人が苦手」の類は誰も呼ばない。

私には友人と呼べる人がいない。 孤高な人間を気取って感傷に浸っているわけでもなければ、「なので、みんな、お友達になろー!!」などと陽気に振舞いたいわけでもない。 ただ客観的な事実を述べただけだ。 それは言ってみればこういうことだ。 私の身長は180センチ以上あり、スタイル抜群、学生時代にはモデルを経験し、現在では若くして巨万の富を築いたカリスマ経営者として脚光を浴びる、などというような客観的事実を述べたに過ぎない。 「客観的? 多分に主観が含まれているではないか!」とのご指

    • はじめてのポイントアプリでしょげないでよベイベーな話 /エッセイ

      私には行きつけのドラッグストアがある。 サツドラだ。 かつてはサッポロドラッグストアーという名だった、札幌を拠点とするお店だ。(今調べてみたら東京にも出店しているようだ) なぜ行きつけなのかというと、簡単な話だ。近いから。私の両脚には生まれつき、歩数制限機能がついており、なるべく歩かないような体になっている。一方で、ダラダラ無制限機能まで搭載しているもんだからなおさら歩かないってことになっちゃう。 サツドラで買い物をするたびに、いつも店員さんから「アプリはございませんか」

      • インスタント三角関係/ショートショート(※毎週ショートショートnoteお題「レトルト三角関係」のボツ作品)

        「ここにいる皆様で即席の三角関係を作ってください」  一瞬だけ参加者の間に張りつめた空気が流れた。しかし、みな、すぐに平静を装う。  二人一組になってくださいと指示される状況に出くわすことはよくある。しかし、三角関係とは。 「男女の構成比はお任せします。さあ、どうぞ」  参加者たちは座席の近い者同士で組みになっていく。僕も周りにいた女性二人と組んだ。いきなり会話が始まる。 「この女、誰」いや本当に知らない。なんなら君のことも知らない。 「ひどい。他に女がいたのね」 「い、いや

        • 【毎週ショートショートnote】レトルト三角関係

          「本日の地球人生態学の授業では、三角関係を学びます」  先生が告げると、生徒たちから疑問の声が飛ぶ。「なにそれー」 「簡単に理解できるよう、今日はレトルト三角関係をもってきました」先生は教壇の下から数種類のパウチパックを取り出した。「このパックを加熱すると、中から三角関係が飛び出します」  先生はコンロで湯を沸かし、レトルト三角関係を温めはじめた。「そろそろですね」封を切ると、二人の女性地球人と一人の男性地球人が出てきた。 「こちらは、二人の女性が同じ男性に恋してしまった様子

        • 固定された記事

        類は友を呼ぶというが、「人が苦手」の類は誰も呼ばない。

        マガジン

        • エッセイ
          55本
        • ショートショート
          9本
        • 短編小説
          7本
        • 漫才
          5本

        記事

          【毎週ショートショートnote】洞窟の奥はお子様ランチ

           数々のモンスターをなぎ倒し、ようやく目的地にたどり着いた。酸素ボンベをはずし、入口のドアを開く。  腹を空かせ楽しみに待っていると、メニューが運ばれてきた。 「こちら、アサリの酒蒸しでございます」  俺はあんぐりと口を開け、店員を睨みつけた。 「はぁ? 海の底まで来たってのに、アサリの酒蒸し? 【海の底はアサリの酒蒸し】? そんなもん浅瀬でやれよ!」 「と言われましても……」 「知らないの? 【洞窟の奥はお子様ランチ】だし【フェニックスの火山は焼き鳥串】だし【眠りの森はホッ

          【毎週ショートショートnote】洞窟の奥はお子様ランチ

          人々のにぎわい/短編小説

           絶対にあったはずの一万円札がない。しわの寄った一万円札。読みかけの本の栞代わりに挟めた気もするが肝心の本が見当たらない。  机周りに山のように積まれた書籍を一つずつ確認していくが、どれも違う。六冊目の本を閉じたときに思い出した。図書館から借りた本に挟めたまま返したかもしれない。諦めきれずに図書館へ。  本を探していると、着物姿の少女と目が合った。そうか。そういえば今日は近所で夏祭りがある。少女はトコトコとこちらへ近づいてきた。おかっぱ頭が印象的な艶やかな黒髪。綺麗に切り揃え

          人々のにぎわい/短編小説

          【毎週ショートショートnote】デジタルバレンタイン

           もう悩まなくていい。チョコをあげるべきか否か、あげるならどんなチョコか。最新AIを搭載した「デジタルバレンタイン」が全て判定してくれる。  私は身の回りの男性たちの情報を入力する。上司には義理チョコ、同僚には友チョコ、父には新しいネクタイと結果が表示される。  キーボードを叩く手が止まる。私の頭には彼がいた。もし彼の名前を入力したらどんな判定がでるだろう。  何股もかけられていた。彼はスマホに私の名前を「女013」と登録していた。  でも、忘れられない。私は震える指で彼の情

          【毎週ショートショートnote】デジタルバレンタイン

          ものもらいになったことに関してどうこう書こうというのです

          普段から目を酷使しすぎているなとは思っていた。 本来なら口で言うべきところを、目にモノを言わせてみたり。 本来なら魚の鱗を落とすところを、目から鱗を落としてみたり。 本来なら鼻くそを笑わなきゃいけないところで、目くそを笑ってみたり。 少し目のケアをしないといけないな、と思っていた矢先にものもらいになった。 右目だ。 始まりは痛みだった。眼球自体に痛みがあると同時に、まばたきをする度に眼窩が痛む。骨だよ、骨。目の周りの骨が痛み出すのさ。 最初はあれかと思った。憎きアイツに思

          ものもらいになったことに関してどうこう書こうというのです

          予知夢/短編小説

           友人が電子レンジに卵を入れていた。 「おい、そんなことしたら……」俺が慌てて声をかけるも間に合わず。レンジの中から爆発音が聞こえた。  彼はゆっくりとレンジの扉を開き「よし」と小さく拳を握った。 「いや、よしじゃないよ。何やってるの」 「卵を爆発させてる」 「俺の訊き方が悪かった。なんで卵を爆発させてるの」  すると友人は急に顔を真っ赤にして怒鳴った。「こっちだってな! 大変なんだよ!」 「……マジでどうした」 「感情を爆発させてる」  少し間をあけてもう一度訊く。今度は冷

          予知夢/短編小説

          先輩のお下がり/短編小説

           高校時代から慕っていた先輩が、飲酒運転の暴走車にはねられ亡くなってからもうすぐ二年が経つ。俺とは違って酒も煙草もやらず健康に気をつけていた先輩がああもあっさり逝ってしまうなんて。  俺はよく先輩からお下がりの服をもらっていた。当時、収入も少なく着古した洋服ばかりに袖を通していた俺に「お前、いつまでそれ着てんだ」と言いながら、これ本当にお下がりか? と疑いたくなるような新しい衣類ばかりをくれた。「小さくなったからやるよ」と成長期などとうに終えたはずの先輩の体はどんどんでかく

          先輩のお下がり/短編小説

          遥かいにしえより夏に涼をもたらして参られた扇風機様のご降臨

          久しぶりにただの雑記を書こうと思う。 正直に言えば、毎週ショートショートのお題に対するネタがまるで浮かばなかったということだ。みんなで集まったときには浮いてばかりいるというのに。 もしかしたら暑さのせいかもしれない。 だいたいなんでも暑さのせいで済むかもしれない。 そういえば、今年、新しい扇風機を買った。 なんか、この酷暑だというのにのんきなこと言ってんなって感じになってない? は? 扇風機? いつの時代の遺物? 時代はもう地下シェルターだよ、地下シェルター。暑さをし

          遥かいにしえより夏に涼をもたらして参られた扇風機様のご降臨

          金持ち教習所【毎週ショートショートnote】

           夏休みを利用して運転免許をとりにきた。このためにバイトをして、学生にはちょっとした額のお金を貯めた。  教習初日。ウェルカムドリンクで迎えられた。ペルシャ絨毯の上を歩き、座学がおこなわれる教室へ。 「運転にもっとも必要なものはなにかわかりますか」  ごつい金の指輪をつけた教官が猫をなでながら訊ねる。 「注意力です」 「判断力です」  いくつかの答えが飛びかった。教官が優しい声音で正解を発表する。「心のゆとりです。ではそのゆとりはどこから生まれるのでしょう。金です。金を持ちま

          金持ち教習所【毎週ショートショートnote】

          ほんの一部スイカ【毎週ショートショートnote】

          「スイカ食べたい」病床の祖父がそう言ったのは、窓の向こうに白い雪が舞う一月の半ばだった。病状からみるに、今夏、スイカが市場に出まわる頃に祖父はもう——。  地元の八百屋をしらみ潰しに回ったが、ない。県内中心部まで車を走らせることに。  デパートの中を歩いていると、幼少期の記憶が蘇った。ここに祖父と来たことがある。あれは今と同じくらいの季節。たっぷりとお年玉をくれたのに、祖父はおもちゃまで買ってくれた。  生鮮売場にいくと果物は豊富に売っていたが、スイカはなかった。諦めかけた僕

          ほんの一部スイカ【毎週ショートショートnote】

          スナイパーの意外な使い方【毎週ショートショートnote】

           ライフルを入念に整備していると、ボスに呼ばれた。 「優秀な狙撃手である君に仕事を頼みたい」  私は頷く。 「わしの孫の運動会がある。最高の瞬間を写真に収めてほしい」 「……狙撃手の私が?」 「君の特技は何だね」 「もちろん狙撃です」 「違う。場所取りだ。敵を狙える最高の場所をよくわかっている。撃つだけなら誰でもできる。問題は引き金を引くまでだ」  不本意ながらも校庭へ。くじ引きで入場順が決まっており、若い番号を引いた者からいい席がとれる。ボスの孫が引いたのは384番。クソ

          スナイパーの意外な使い方【毎週ショートショートnote】

          生き写しバトル【毎週ショートショートnote】

           ある日、A君が言った。 「世の中には自分と似た人が三人いるって言うだろ。同じ顔は四人までだ。なのにこのクラスには同じ顔が五人もいる。つまりこの中の一人は偽者」 「……偽って何? 似てるだけでみんな自分の顔だよ」 「偽者をあぶりだす」 「話、聞いてる?」  かくして同じ顔を持つ男五人の戦いが始まった。 「見抜く方法はこれだ」A君はスマホを出した。「顔認証。全員のスマホのロックを解除できれば本物。できない奴が偽者だ」  一人ずつ試していく。A君は全員のスマホをクリア。B君、C

          生き写しバトル【毎週ショートショートnote】

          塩人【毎週ショートショートnote】

           私はかつて病気療養のため南国で暮らしていた。  病室からの景色に飽き、海辺を散策した。地元では見かけない木々の緑の奥に真っ青な海が広がっていた。  ある日、浅瀬を歩く妙な人物を見かけた。  足首まで海水に浸かったその男はふんどし一丁だった。彼が私に手招きするので砂浜におりる。「君、どこか悪い」ドキリとした。「服脱ぎ、そこ寝る」有無を言わせぬ口調が私を砂浜に寝かせた。 「腕、胸、腹、塩盛る。動くな」  奇異に感じたが私は従った。体の上に塩の山を築いていき、最後に男は手を合わせ

          塩人【毎週ショートショートnote】