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創りたいものを創るではない!カウンターパートと協働する開発

初めまして。リンクアンドモチベーションの石上です。
今回は、弊社で2019年より取り組んでいるヘルススコアの浸透PJTについて紹介できればと思います。今回は、何に取り組んだのか、その上でつまずいた点をお伝えしますので、何かのヒントになれば幸いです。

そもそもヘルススコアとは

ヘルススコア(health score)とは、「顧客が自社のプロダクト利用を継続するかどうかを測る指標」のことで、主にカスタマーサクセスが運用する指標です。
分かりやすいものですと降水確率をイメージしていただけるとよいと思います。ヘルススコアが高ければ降水確率が低いので、晴れ。継続が見込めると判断されます。反対に降水確率が高い顧客は、雨で解約(チャーン)の確率が高いと考えられます。雨の場合は傘を持っていくなど、適切な対応が必要となります。
適切に対応していればヘルススコアは上昇するため、お客様の利活用が上手く進んでいるのか、あるいは問題があるかをデータ上で判断することができます。

参考:カスタマーヘルススコアの運用を今すぐ始めるべき理由

創った仕組みとポイント

さて、ここからは具体的にヘルススコアを活用していくために、社内で取り組んだ仕組みについてお伝えします。今回は、仕組みとして、スプレッドシートを使った簡単なシステムを作りました。これを運用にのせていくためには、以下の下記4点を網羅する必要がありました。

引用:SaaSマーケティング戦略の実行度を高める -PDCAマネジメントの3つのポイント-

具体的にどのような進め方をしたのか、何がポイントかをご紹介していきます。

①Immediately(即時性)
弊社のカスタマーサクセス部署は、基本的に毎日朝会を行っています。その朝会の中でヘルススコアを確認し、どのお客様に、どのようなコミュニケーション・アプローチを行うのかをリーダーやマネジャーと共に確認しています。
しかし、朝会が毎日あるにも関わらず、ヘルススコアを見える化したスプレッドシートの更新頻度は1週間に一度。カスタマーサクセス部署の確認頻度とスプレッドシートに更新されるヘルススコアにタイムラグが生じていました。これによって、対応したのにスコアが変わっていないなど不都合が出ており、PDCAをまわすスピードが遅れてしまっていました。
そこで、カスタマーサクセス部署が毎日確認できるよう、スプレッドシートの更新頻度を週一から毎日に変更しました。結果として、カスタマーサクセス、私達Opsチームの双方で、PDCAをまわすスピードが一致。より運用を加速することができました。
勿論、会社によって、どの頻度で更新するべきかは異なると思いますので、適切な更新頻度を関係部署と合意をすることが大切になります。

②Display(周知性)
Displayは、弊社もつまずいた過去があります。
ヘルススコアを管理するシステムは数多くあり、弊社もシステム導入を検討したことがあります。しかし、この導入は上手く進みませんでした。理由としては、関係者全員の目に止まるシステムを採用できなかったためです。
弊社は、スプレットシートを活用することが多く、カスタマーサクセス部隊にとって馴染みのあるのもスプレッドシートでした。そして、経営層含む多くの関係者が確認しやすいのも、スプレットシートでした。
勿論、システムを導入した方が管理・保守しやすい側面もあるとは思います。ただ最初は、関連部署が最も使いやすく、確認しやすい形で管理していくことが重要でした。

③Entirely(一覧性)
私が運用に乗せていく上で、一番重要であると感じているのは、このEntirely(一覧性)です。もしかしたら、皆様も作成した(または導入した)システムが使われなくなるといったご経験があるのではないでしょうか笑
弊社も過去何度もそのようなことがありました。
その多くの原因は、システムに欲しい情報がなく、複数のシステムを管理する。あるいは、別のシステムを新しく作るや、スプレッドシートをたくさん増やすといったことです。
複数を管理することは、カスタマーサクセスにとってもストレスになりますし、作成した側からすると一元化されず、どのようにシステムを改善したらよいか分からないといった状況が生じます。なので、ヘルススコアの改善を推進していく上で、どのような情報が必要か、どの情報は不要かを丁寧にすり合わせていくことが重要でした。また、必要な情報を一つに集約するというのも大事なポイントとなっていました。

④Alarm(問題発見性)
ヘルススコアは数値で顧客の状態を表すものです。しかし数値化だけでは意味がありません。ヘルススコアを高めていくためには、どの変数に乖離があるのか、何を行動として起こさないといけないのか、この2つを明確にする必要があります。
ヘルススコアを算出するためには、様々な変数を元に算出をしており、変数については、Gainsight社が提唱しているDEAR Frameをベースにしています。この変数の1つ1つ、良い状態か、悪い状態かをスプレッドシートで確認できるようにし、そこに対して打ち手(行動)を設定する必要がありました。

参考:https://blog.allstarsaas.com/posts/saascs-health-score

社内のモメンタム創り

ここまではスプレッドシートを使った仕組みについて述べてきました。仕組み側を完璧にしても運用に乗らないのは皆様もご存じかと思います。いかに社内のモメンタムを創るかが重要です。つまり、ヘルススコアがあることでお客様との関係性を深めることができる!と思ってもらうことができるか、です。

①スモールスタートで成功事例を創る!
私も過去あるプロジェクトを推進するときに最初から全体で進めようとして、上手くいかないとことがありました。
全体で進めようとすると、関係者も多くなります。そのため、そもそもこのプロジェクトが自分達にとってメリットがあるものかどうか分からないと疑念を持ったまま進めてしまう人が増えてしまう可能性があります。こうした事態を防ぐために、弊社では臨界点を超えるといったことを大切にしています。臨界点とは、新しいやり方が定着するかどうかを分ける点のことです。会社において、何か新しいことが浸透するには、まずはその構成員の20~30%の人に受け入れられ、活用される必要があります。

引用:組織風土(企業風土)とは?改革のポイントや事例を解説

具体的には、特定のカスタマーサクセス部署とタッグを組みました。お客様への対応方針を話し合う会議体に参加し、何が課題か、何をモニタリングしているのか、どのような対応策をとっているのかを徹底的に把握しにいきました。また、カスタマーサクセスメンバーに解約の仮説を洗い出してもらい、ヘルススコアの精度を向上させていきました。徐々に活用するメンバーを増やし、結果として、現在では精度も90%程度、全カスタマーサクセス部署でヘルススコアを活用してもらっています。

②指標を対象に合わせる!
社内のモメンタムをつくっていく上では、カスタマーサクセス部署のメンバーが価値を感じるのと同様に、上位役職者にとっても意味のあるものになることが重要になります。つまり、どちらか一方の共感ではなく、双方の共感を得ることが重要です。そこで、弊社では役員陣にもヘルススコアを金額換算した予測額を出すようにしました。これで、目標に対しての進捗を確認、判断してもらっています。
メンバーは担当企業の全体平均ヘルススコアを使い、経営は金額換算したものを使う。元の指標は同じでも、見せ方を対象に合わせて変えています。

最後に

今回はスプレッドシートを使った仕組みとモメンタム創りの観点で記事を書かせて頂きました。ポイントは活用する相手を徹底的に理解し、小さな改善を積み重ねることだと思います。
是非、相手は何を求めているのか、何を実現していきたいのかについて、対話を重ねていただければ幸いです。


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