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#16 銀河の犬と水玉~曼珠沙華の伝言~


合併症の拾い物

 有名な病院だから、大きな病院だから……そんな事に気を許して命を預けることがどれだけ愚かで恐ろしい事かを学んだ私は、どの病気に対しても、その専門的な知識をもち、自分の命を預けても良い人間か?失敗されてもこの医師なら仕方ないと思える程信頼出来る相手か?をよく吟味してから動くという大切な事に気づけたと共に、素晴らしい出逢いに導かれた。

 合併症にさせた医師には「脳脊髄液減少症だ」と診断されたが、もはや、私には信用出来なかったのでその診断はカウントに入れていない。
 改めて脳脊髄液減少症の専門医の判断を仰ぐべく調べた結果、
 ある医師が浮上し、その医師を受診した患者さんのブログを読んでやはりその先生に診てもらおうと、またしても他県の病院を訪れた。
 沢山の患者を見てきたその医師は初診で
「脳脊髄液減少症では無いと思いますが…最初から何故針を刺す検査をしたのか理解出来ませんが、通常はMRIの検査から始めます。MRIだけでもしてみますか?」と言われてお願いした。
 そこで問題が浮上した。
 私の腕にはタトゥーが入っている。
 これはファッションで入れたものでは無い。
 意味があり願掛けとして入れたものだった。
 昔の刺青と言えば、鉄の成分の入った墨で針も使い回しで行われたとの噂もあったが、その鉄の成分の入ったインクを使っていると、MRIに入った時に鉄を吸引するので、場合によっては火傷をしたり、その鉄の部分の肉が引きちぎられる恐れもあるが了承願います。と言うとても了承など出来そうにない同意書にサインをしないと、検査を受けられないのであった。
 私が入れたのは20代前半。
 そんなに古いインクでは無いはずだから、鉄は入ってはいないと思う…思う…けど、わからない。
 貰った名刺は、彫り師を紹介して欲しい!と言ってきた見ず知らずの子にあげてしまい、原宿のあの辺…という記憶しか残っておらず、彫り師の名前すらうろ覚えであった。
 ネットでうろ覚えの名前を検索してもヒットせず、原宿のそのお店はもう無くなっていた。
 確認しようが無いとは思いつつ、寝たきりでえらい目にあったばかりの私にはこれ以上リスクを背負うのが戸惑われた。
 ダメ元で、タトゥーが入ってる知人に片っ端から聞いてみた。
 するとやはり若者はネットでの検索の仕方も色々知っているのですぐに見つけてくれた。
 名古屋で今も彫り師をやっていらっしゃった。
 その方はレイキヒーリングも習得されており、事情を話すと、使用していたインクに鉄の成分は入ってないので大丈夫という事と、検査の当日、遠隔ヒーリングをして下さると仰った。
 しかも無料で。
 20年近く前にお客として出会っただけだけど、そのご縁を大切にしたいのだと、その方はこうしてまた繋がれたご縁も大切にしたいのだと、遠隔ヒーリングはいつでも出来るので言って欲しいと言ってくださった。
 ここにもまた、拾う女神がいらっしゃった。
 経験したくは無かった体験をする羽目になったが、人生において素敵な出逢いをする為のただのプロセスだと思えば…それでも嫌だが、納得せざるを得ない。

脳脊髄液減少症、除外

 MRI検査を数回に分けて行った結果、漏れの箇所は見つからず、それ以上の検査をするには東京のセレブな病院で入院しながらの検査となるがどうするか?と聞かれる。
 一泊3~4万円の入院費の他に検査……それだけで答えは決まっていた。
 障害年金が不支給決定となり、生活費にも困り、穴のあいた下着を着続ける私には払えるはずも無かった。
 障害年金の不服申立てと第二審は無駄に引き伸ばされ、質問も無視され、2年もの経過と共に何も変わらない同じ不支給結果が裁決された。
 その間、保険外の高額な治療法は諦めざるを得なくなった。
 とりあえず、専門医として名高い医師の見立ての「アナタは脳脊髄液減少症では無いと思う」を信用し、私は脳脊髄液減少症の可能性を除外する事とした。

地元に専門医が

 数少ない専門医の一人、他県におられた医師が地元の大学病院へ移動されているとの情報を得て、早速受診する。
 心療内科なので、流石に今までの地元での酷い扱いについて受けた沢山の心の傷を、一瞬で癒してくれた。
 話をちゃんと聞いてくれて、辛かったでしょう。と理解してくれる。
 症状についても把握されてるので、部屋も電気を暗くして「光過敏」に対する対策をしてくださる。
 今まで受けたことのない検査も受けることになる。
 ドクターハラスメントによる傷は癒され、処方薬に関しても専門医に相談出来るという安心感と希望を取り戻したように思えた。
 しかし通院を重ねる度に、何かが一致しない感覚に気づいていた。
 私は薬害の被害者を何人も知っている。
 だからこそ、抗うつ薬は絶対飲まないと決めていた。
 精神的な病気になり必要なら別だが、私には必要ないので、その薬害を引き受ける気にはなれなかった。
 しかし、やはり心療内科となると結局はそこへ辿り着く。
 そんな中、抗うつ薬で副作用や離脱症状で何年も、何十年も、寝たきりになってしまっている患者、重症化で苦しんでいる患者さんと次々と繋がる出会いがあった。
 そこで、薬害の恐ろしさを改めて知った事で、私はその治療を受ける事と決別する事にした。
 せっかくの地元県内の専門医との出会いだったが、合併症で学んだ事も大きく作用し、私は5回の通院で、その病院を卒業した。

再び整骨院へ

 合併症も落ち着き、地元の専門医も卒業したので、改めて治療法は整骨院と内科の処方薬を続けることにした。
 東京の専門医の一回の費用で十回は受けられるのが整骨院の費用だった。
 順調に痛みを取ってくれる腕もあがり、なくてはならない治療へとなった頃、院長先生の県外へのお引越しと独立開業が決まってしまい、また、尊い治療法を失ってしまった。
 院内で引き継いではくれたものの、やはり院長という立場になるまでの実力もあり、他の先生では同じ効果は得られなかった。
 施術後に羽根が生えた様な軽い身体になる体感は、院長先生の施術でなければ得られない効果だった。

麻酔は4分の1

 数年ぶりで治療した歯が痛みだし、新しく近所の歯科へ行くことにした。
 この病気の特徴として過敏反応がある。
 光や音の過敏。
 香害という言葉が浸透してきたが、まさに柔軟剤やタバコ、香水、シャンプー、制汗剤などの化学物質の過敏症。
 そうなると、例え体調が良く少し外を歩いてリハビリを…と出かけた所で、シャンプーの香りを漂わせたロングヘアのお姉さんとすれ違っただけでアウトとなる。
 未だに絶えないくわえタバコで自転車やバイクを走らせる人。歩きタバコ。車の窓を開けてタバコの煙が流れてくる瞬間。それもアウトだ。
 これでは社会復帰は無理ではないかと、また絶望感を味わいながら、あらゆる不調を受け止める。
 これは何年も何回も家族に話しても未だに理解されない。
 「この香り、キツイから嫌い」位の発言と同じ意味だと捉えられてしまう。
 体調不良などと生易しい表現をすると、永遠に伝わらない。
 シャンプーも洗剤も、私のだけ違うのを使えば良いと思っている。
 家族が使用してその匂いが私にはとんでもない悪臭としてあちこちに漂い、吸い込む度に頭痛や吐き気や目眩をしてる事など、無い事として流されている。
 直接使わなければ、大丈夫でしょ?程度の感覚なのだ。
 「香り長持ち」などと謳う柔軟剤のCMを見る度に憎しみが込み上げる程だった。
 そんな状態が進み、ついに歯科の麻酔も効きすぎてしまい、半分の量でも目眩と気持ち悪さでクラクラして、寝ているのに目が回る、血の気が引くような思いで手足が痺れ始めた。
 治療は即中止となり、少しそのまま寝かせてもらって帰宅した。
 歯肉を削らねばならないので麻酔は必要なのだが、このままでは麻酔をする度に意識低迷となるので、量を少しずつ減らしながら様子を見ることに。
 4分の1まで減らして、やっとなんとか、後は気合いで乗り越えられる程度となった。
 次回にはまた、どうなっているのかわからない。
 出来ることならもう2度と麻酔が必要な施術は受けたくないと思う。

車椅子の申請

  障害者手帳の受理と共に車椅子の申請書の用紙を渡されていた。
  他県の医師に頼んで書いていただけたその診断書の中には握力4kgの為、自走式を操作するのは困難なので電動車椅子を…という文面もあり、体幹を保てない事からも背もたれが高くヘッドレストがあるもので電動車椅子を希望していた。
  車椅子の申請って、業者を自分で探す所からスタートだということを初めて知った。
  市役所で教えてくれるものと思っていた。
  普通に車椅子の業者を知ってる筈はなく、ネットで検索しても詳細はわからず。
  知り合いの看護師に紹介して頂いた業者も、電動車椅子で尚且つそこまで重症の人向けのタイプは取り扱っていない、との事だったが、電動車椅子を扱っている業者を探して連絡すると言ってくださった。
  なんて良い人なのだろう。
  そして紹介して頂いた業者さんは市の80%程の車椅子を担っているらしかった。
  私の病気と症状を伝え医師の診断書を見せて相談したところ、岐阜県から今仙というメーカーの車椅子を試乗する事になった。
  はるばる岐阜からやってきたその車椅子はなんとも素晴らしい商品だった。
  ただ、重くて大きいので車に載せるには、福祉車両でなければ無理だった。
  しかし県外の通院にも通院介助をして貰えるので問題はなく、それを申請することに決めた。

ところが窓口へ申請に行くと受付の男性が何かを確認しに他の方へ話に行くと、奥から出てきた若い女性が
「電動車椅子って高いんですよ!1年に1人通るか通らないかなんです。」と申請の用紙を見る事もなく、病名も症状も聞くことなく、突然強めの圧で話しかけてきた。
  「週に2回外出が必要な仕事とか通院とかの理由がある人でなければ申請できません」とも言った。
  そんな条件は業者さんからも聞いてないし、行政からも聞いてない。
  後で確認したが、業者さんもそのような条件は無いと言っていて、Twitterでも知識ある方々が、それはおかしい。厚労省のページにもそんな事は書かれていない。との事だった。
  私は今は杖で来ているけれども15分しか立っていられないので、ここへ来るのも数日寝込んで、そしてこの用事の後にはまた寝込んでしまうことも話したが
「じゃあ、車椅子持ってきましょうか?!」とまた高圧的な態度で言われた。
  「電動車椅子ならこの申請書じゃないんですよ。理学療法士の適性検査を受けて申請するんです。」
と、とにかくこの申請書は受け取れないとして門前払いされてしまった。
  「みなさん、自走式の車椅子を自分で電動に改造されてますよ」とも言われたが、改造したものは保証が付かなくなるという事もTwitterの人から教えて貰えた。
  行政って怖い所だなと改めて思った。

結局、「申請が通る車椅子」しか申請出来ないようなので、自走式の車椅子を申請し、障害者手帳を受理してから1年後に、その「結局使えない車椅子」は届いた。

クッションもペラッペラで身体中が痛い。
50分座ってるのが限界。
背丈が高いのでセダン車に乗らない。
軽自動車の後部座席を倒して横に積むのがやっとだった。
これでは使えない…そう困っている私を見かねた介護業者の社長さんが、
私がお金が貯まったら欲しいと思っていた楽天で9万円で買える輸入の電動リクライニング車椅子を会社で買って下さった。
  そしてそれを私にレンタルという形で使わせて下さった。
  後からその行政から貰った税金が使われている車椅子の金額が11万円という書類が届いた。
  であるならば、そのお金で9万円の楽天の電動車椅子を買ってくれたら私はとても助かったのに、税金の無駄遣いではないのか?とも思ったが、税金を使うからこそ、その市内にお金が入るように市内の業者を使っての申請しか出来ないのだろうか?
ふるさと納税的な、地元還元の車椅子しか申請出来ないのだろうか?
その辺はよくわからないが、当の使う困ってる患者には、本当に便利な車椅子でなければ意味がないのは当然の事である。
勿論私が使い倒したのは楽天の電動車椅子だ。
神様のような介護業者の社長さんと出逢えて、本当に救われた。

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