或る娼婦の顛末

夜の見世物小屋。

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もう来ないお客さんを待ち続ける夜と、キスで分かることの全て。

夜の九時過ぎ、今日はこのまま終わりかなと固いベッドに倒れこんだ瞬間にコールが鳴った。 「新垣さん写真指名60分コース決まりま した、スタンバイお願いします。二連れ様です」まんえん防止策によりお客が流れなくなった遅い時間帯に珍しく飛び込みフリーが入った。今日は本指名をたくさん呼んでいるから店長が受付でゴリ押ししてくれたんだろう。 「10分で行けまーす」と高めの声で返事をし、受話器を静かに戻す。 ソープ街、ここはソープの個室、私はソープの仕事をしている。ソープ嬢だから春を売

    • 「作家になりたい」なんて死ぬまでワナビってられる都合のいい夢なわけ。現実は厳しいと気付いていてもそれにすがって生きてる側からしたら精神的支柱なわけ。その辺の機敏も分からず、アイデンティティをへし折ってくる人間、近付かないで欲しい。

      • 女が階段を上がる時~川崎アラビアンナイトの思い出~

        ソープランドが好きだった、 川崎に置いてきた青春のようなもの。 ----- はじめまして、もしくはお久しぶりです。コロナ禍以前にアラビアンナイトに数年間在籍していた、当時の源氏名でニーナと申します。本来自分で言うようなことでは無いけどランキングにも通算3年半は入っていたらしいです、このパネルに見覚えあったりしません? あってもなくても今回文章を書く仕事を正式に依頼されたいわゆるアラビアンナイトOGってやつです。現役当時の私は写真の通りビジュアルは凡庸、おっぱいもDカップ

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          同業女性向けお役立ちアカウントのすゝめ

          今まで完全に住み分けてましたが、名義も同じにしたので改めて紹介。 かなり踏み込んだHow to 系の内容なので、お客様の夢を壊さないためにも有料記事、と言っても現状最大300円くらいかな。読み物というより仕事の役に立つ記事です。 かなり独断と偏見に基づくので、「なんか集団待機でセンパイのお姉さんが言ってたなー」くらいの気持ちで受け取ってね。 新菜と待機がかぶった夜

          同業女性向けお役立ちアカウントのすゝめ

          NGにしたお客がソープに来店しちゃったときの話 《前編》

          男は激昂した。赤黒く高揚した頬に脂汗をうかべ、短く肩で息をしている。こちらを睨み付けるというより、憎悪の感情が身体中を駆け巡り、それが瞳から溢れ出てしまっている様だった。 男はベッドのふちに腰を掛け、私は床に座りその膝の上にしなだれかかっていた。いつもならこの姿勢から脱衣アシスト、即尺即ベッドの流れに入るしそれが古き良き老舗ソープの様式美なんだが、今はそんな状況じゃなかった。本能を司る脳のどこかが「あぶない、にげろ」と信号を送ってくる。 私は妙に冷静になってぼんやりと「頭

          NGにしたお客がソープに来店しちゃったときの話 《前編》

          午前3時22分の雑記

          時刻は午前2時をまわった水曜日、明日の朝にはこの文章は消えている。それくらいの軽さで書いている。だからそれくらいの軽さで読んで欲しい。 ビョークのハイパーバラッドが鳴り響く私の6畳ほどの小さな1Kの部屋にはONKYOのスピーカーがつながった65型のテレビがあり、片面だけ若草色の壁紙が貼られている。かわいいから本当はネットに載せて見せびらかしたいんだが、リノベーションの参考例として工務店のHPにマンション名ごと晒されてるからそれが出来ない。インスタに生活を晒す人間は絶対に住め

          午前3時22分の雑記

          フーゾク嬢が「ちひろさん」見てみた。

          ※この記事はネタバレを含みます、Netflixと劇場で同時公開中だよ。 「風俗嬢」という、ある種キャッチーで自分と似た人種が集まりやすくなるフックをぶら下げなければ、うまく生きられなかった、うまく呼吸が出来なかった主人公が成長し、回復してゆく物語。 映画序盤、ソッコーで汚れそうな真っ白なパンツスタイルのまま猫に抱きつき道路に寝転がるちひろさん。ミュージックビデオみたいに現実味がなくこの映画を象徴するかのようなシーンだ。とにかく有村架純が生々しい存在感を放っているが、ファン

          フーゾク嬢が「ちひろさん」見てみた。

          抱けばなんとかなると思っている、愛しいひとたちへ~阿久悠のはなし~

          普遍的で分かりやすい言葉だけを使い、メロディに合わせるという制約の中、ここまで具体的な絵が浮かぶ歌詞を書ける作家はやっぱりそうそういないと感じる。昭和の偉大な作詞家、阿久悠の話である。 大人になりサブスクで無限に音楽を浴びている今でも、いまだに阿久悠の歌詞を見るとため息が出るほど圧倒されてしまう。私の文章はこの作家から少し影響を受けている、ひらがなを使うタイミングとか。 阿久悠は職人気質な職業作家だったため、数多くの歌手に歌詞提供をしてきた。当時の歌謡界のスタァ・沢田研二

          抱けばなんとかなると思っている、愛しいひとたちへ~阿久悠のはなし~

          風俗レポートで店を決め、風俗レポートに救われていた頃。

          人間って不意打ちに強烈に救われると、その対象が偶発的に神様になっちゃう瞬間がある。 𖤣𖥧𖥣。𖡼.𖤣𖥧𖡼.𖤣𖥧⚘𖤣𖥧𖥣。𖥧 𖧧𖤣𖥧𖥣。𖥧 𖧧 銀座のママや客室乗務員の接客を手本にしながら、2時間でベッドマットベッドの3回戦を笑顔でサラッとこなさなきゃいけないお仕事系高級店に適性もないのに入店し、半べそで仕事を覚えていたあのころ、私は人生をこの仕事に賭けていた。 繁忙期のインターバルは10分から15分、絶対に接客で失敗出来ない気持ちとランキングの死守にこだわりながら毎日9時間

          風俗レポートで店を決め、風俗レポートに救われていた頃。

          祈り、呪い、あるいは願いとしてのイチゴ

          出会い喫茶にて「イチゴでどう?」と、慣れた調子で隠語をさらりと使いこなし金額交渉をしてきたフランス帰りの哲学科の教授に、持論とデカルトと「文学部唯野教授」さながらの出世競争話を40分近くも射精後に聞かされ、限りなく虚無に近付いた夜がある。ちょうどお店を辞めていた時期である。 婦人科と歯医者へ行くために家を出た帰り道に好みの大衆居酒屋に吸い込まれ、二千円でホッピー二杯と揚げ出し豆腐、茄子のおひたし、梅水晶で楽しく酔った。気分よく街をフラフラしてたらお手洗いに行きたくなりカフェ

          祈り、呪い、あるいは願いとしてのイチゴ

          普通に大人になっていく過程で視界に入ってくるおっぱいはだいたい巨乳だからこういう誤解が生まれる

          大人になったら巨乳になると思っていた 全ての女の子はすべからく大人になったら、あのグラビアアイドルみたいな、本屋に並んでるえっちな雰囲気の週刊紙の表紙の女性みたいな、谷間のできる巨乳になれると思っていた。 あれ、なんか違う、と気付き始めたのはだいたい中学一年の頃。体育の授業で制服を脱いだときふと視界に入ったクラスメイトの女子。「あれなんかあの子、お母さんみたいな大人のブラジャーしてる……。」 すぐさま自分の胸元をのぞきこむ私。第二次性徴が来ているはずなのにいまだぺたんこ

          普通に大人になっていく過程で視界に入ってくるおっぱいはだいたい巨乳だからこういう誤解が生まれる

          風俗店でEDや中折れするお客さんが95%言う言葉「今日もだめかも…」 これはマジ。言霊ってあるけど基本思い込みによるものが大きい。中学生くらいのエロに猪突猛進だった頃の気持ちで、青空みたいに澄み切った心で行こう。 最適解は「何も考えない」 まあそれが難しいのもわかるんだけどね

          風俗店でEDや中折れするお客さんが95%言う言葉「今日もだめかも…」 これはマジ。言霊ってあるけど基本思い込みによるものが大きい。中学生くらいのエロに猪突猛進だった頃の気持ちで、青空みたいに澄み切った心で行こう。 最適解は「何も考えない」 まあそれが難しいのもわかるんだけどね

          独断と偏見で語る、〇〇にかかりやすい人の特徴

          この記事は私の経験、信頼出来るお客さまの話、かかりつけ婦人科の知識などをまとめたに過ぎません。噂話程度にとらえて、基本は医師の助言に従ってね。

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          ソープランドの控え室にはだいたいお菓子やおにぎりが山のように置いてあるから待機ばかりしてると太りがち。

          失恋した。クリスマスを目前に控えた冬だった。 サラリーマンの彼氏、仕事のことは知っていた。別れを切り出したのは私だったが人並みに落ち込んでいた。家にいるとアタマがおかしくなりそうだし、ヘルスからソープに移籍して指名がパラパラ返り始めていた時期だったから、重い体を引きずりなんとか店に出勤していた。「店新規のネット指名のご予約入りましたよ」とボーイさんから告げられる度に「あれ、彼氏とうとう店に来たんだ、これで会える‥‥」とか考えるほど寂しさで気が狂いそうになっていた。 高級ソ

          ソープランドの控え室にはだいたいお菓子やおにぎりが山のように置いてあるから待機ばかりしてると太りがち。

          ソープランド怪談 ~千夜一夜物語の思い出~

          とある風俗店の面接で、「そういえば霊感ってあります?」と世間話の体でさりげなく聞かれたときに「ハイ」と答えると、たとえ二十歳Fカップの誰もが振り返る美少女でも落とされる店があるらしい。 「ハイ」と答えた子はなぜか必ず初日で辞めてしまうからだそうだ。 ソープ街というのはルーツを辿れば旅籠、貸座敷、遊郭などを起源としている場合が多く、町の歴史自体がとても古い。そのうえ昨今の日本の法律だと建て替えが出来ないため築年数も相当古く、そう言った類いの話はおそらく日本中に掃いて捨てるほ

          ソープランド怪談 ~千夜一夜物語の思い出~