午前3時22分の雑記
時刻は午前2時をまわった水曜日、明日の朝にはこの文章は消えている。それくらいの軽さで書いている。だからそれくらいの軽さで読んで欲しい。
ビョークのハイパーバラッドが鳴り響く私の6畳ほどの小さな1Kの部屋にはONKYOのスピーカーがつながった65型のテレビがあり、片面だけ若草色の壁紙が貼られている。かわいいから本当はネットに載せて見せびらかしたいんだが、リノベーションの参考例として工務店のHPにマンション名ごと晒されてるからそれが出来ない。インスタに生活を晒す人間は絶対に住めないタイプの部屋で、なのに結構ちゃんと細部まで可愛く作り込まれており、時代に合ってない、ちぐはぐした不器用な感じが気に入っている。喋っていることと表情がまったく一致しないあべこべな男前みたいな雰囲気がある。
去年は失恋を引きずっていた。
今年はTwitterに自分の人生を晒し始めたら肌色の多い画像を載せるよりもずっと遠くの人に届くようになったり、気の合う友達が出来始めたり、思春期の頃からずっと憧れていた人に会えたり、「ボクと寝たら文章を書く仕事をふってあげるよ」とかいう条件をオブラートに包み隠しもせず雑に提示してくる文化系オジサンとロイヤルホストで噛み合わない話を三時間続けたり、何だかんだ愉快な日々を送っている。毎日脳内麻薬でナチュラルにハイになっているからすでに反動が少しこわい。
ロイヤルホストのオジサンとは仕事のために寝てみるつもりだったから逆に申し訳なかった、何だかどうしても無理だった。多分お客さんだったら良客の部類に入る人だったし、私の辞書に「生理的に無理」なんて言葉はない。男性を気持ち悪いと思う脳内回路はほとんど焼き切れて死んでいる。
「君には才能がある」とか言うわりに私の文章を特に読んでいない部分が許せなかったんだと思う。
40歳になったら夜の仕事を辞めるつもりだった、そう心に決め業界に入った。けれども思ったより相当早くにオンナとしての寿命がゴールテープの向こう側に見えてきた今はただただ生き急いでいる、手段を選んでる場合じゃない、明日寝て起きたら価値がゼロ円になってるかもしれないガタ付き始めたカラダを抱えながら、走らないなんてそんな悠長なこと今の私に言ってられない。手のひらからこぼれ落ちてゆく一握の砂のような女性性、恐ろしくて最近あんまり直視出来ない。
チヤホヤされるピークはとうに過ぎ、ソープの仕事を真っさらに信じきれなくなったら高級店の完売嬢でもなくなり、彼氏もいない。
世間のことも自分のことも何一つ分かっていない、水を弾くうぶ毛がみずみずしい、無防備にドレスから素肌を晒した18歳の女の子が「こんなオバサンになってまで風俗の世界に居たくないな、早く辞めよ」みたいな視線が突き刺さったりする。私もかつては年上を見たらそう思っていたし、正しく美しい10代の姿でただただ眩しいと感じる。
夜の仕事、昼の学習塾の仕事、恋愛、バーの仕事、結婚せずに子供を持ちたいと思っていること、数少ない友達との貴重なおしゃべり、最近関係が改善されてきた母親や妹と過ごす時間、お酒ですべての不安を曖昧にする夜、それを聞いてくれるバーのお姉さんやママたち。文章のネタになるかと思って積極的に関わってみてるあらゆる夜職の人たち。結婚や就職の話がちらつくソープ時代からのお客さんたち。このnoteから予約が入るようになった文章や音楽が好きな新しいお客さんたち。
どれを選んでもどれを選ばなくても全部私の人生だから責任を持ちたい。あと二年だけ必死に生きようという気持ちで今はとにかく自分を保っている。そして二年経ったら、そこから更に二年やってこうという気持ちでこうやって夜中に毒にも薬にもならない文章を書いては消したりするんだと思う。
死んだりしない、まだまだ死ねない。
いただいたお金は酒…仕事の備品を買います。