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ひと言だけ

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桜の枝がとどく窓

桜の枝がとどく窓

言葉に飽きてしまって、幼いころみたいに言葉を遊び道具にして、ろくに伝わらなくても伝わりすぎないのがちょうど良いんじゃないのかと。

思いついたある昼から、わたしはコミュニケーション上手をあきらめた。

まず気になってたかっこいい後輩の25歳早瀬くんにがんばって話かけたり盛り上げたりするのを手放した。常温の関係。

上司に笑顔をばらまくのをやめた。言葉を紡ぐ…事実を表すより伝わりやすいように…これも

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浮浪者みたいに、純粋に。

浮浪者みたいに、純粋に。

週末の回転寿司屋は激混みで、わたしたちの乗った藍色の車はくるくると駐車場を周回してやっと入り口から遠い隙間にもぐりこんだ。

レーンの上を流れるサーモンの肌色、さばの光る青。玉子の列。まぐろの列。皿が積み重なる。皿。皿。皿。金色。灰色。赤。青。緑。金色。

金色は一番高い480円で、これを二皿だけにとどめる約束なのに、彼が注文したうにの軍艦巻きは金色の皿に乗って大将から手渡される。
こっちを見て彼

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