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ウォーカブルな環境は一部のがんリスクの低下と関係

case|事例

アメニティが豊富で人口密度の高い地区は、女性の肥満関連のがんリスクが低い傾向にあることが最新の研究で明らかになった。食料品店などの生活利便施設が立地する人口密度が高いエリアに住むことは、歩くことを促し身体活動レベルが活発するために、結果的にがんの罹患確率が低下すると考察されている。今回、リスク低下が統計的に有意であると認められたがんは、閉経後の乳がん、卵巣がん、すい臓がん、大腸がん、多発性骨髄腫などを含む5種類。

関連研究として、いくつかの既存論文で身体的な活動レベルが活発になるといくつかのがんのリスクが低下することが示されている。また貧困地域の方がリスク低下の効果が大きいことを示す研究もある。これらの結果を受け、米国の保健当局では、成人が週に少なくとも2.5時間程度、早歩きなどの中強度の身体活動を行うことを推奨している。しかし、この基準を満たしているのは、女性の19%、男性の26%ほどでしかない。また女性の肥満関連のがんの罹患確率は男性の2倍程度であるとも言われ、中程度の身体活動を習慣化することは予防医学としても重要である。

今回の研究は、都市計画が個人の健康維持に寄与することを示しており、ウォーカブルな環境の形成に対する投資が、ヘルスケア分野にも効果を及ぼし社会的な便益を生むことが理解できる。

insight|知見

  • ウォーカブルな環境創出の効果は、環境負荷の低減や地域経済循環にとどまらず、肥満やガンの予防やメンタルヘルスの改善と様々な分野にまたがることが、最近の研究で続々と示されています。

  • 頭でわかっていても、なかなか生活習慣を変えることは難しいので、居住環境や生活環境を併せて変えていくことが、行動変容につながっていくように思います。

  • 政策の意思決定や予算の拠出も、都市計画分野や土木分野に限らず、保健福祉分野や環境分野と一緒にクロスセクショナルでできていくと、効果測定も他分野にまたがるので、まちづくりのEBPMの推進につながりやすいような気がします。ニワトリが先かタマゴが先か問題のように、クロスセクショナルな効果を示してからじゃないと協調出来ないということが課題になりそうですが。