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世界の都市・地域の最新事例を紹介するマガジンです(平日毎日更新)。 「case」では海外記事を抄訳して海外の都市計画関連の最新事例を紹介しています。「insight」では海外の最…
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#公共交通

交通機関の利用の転換はテクノロジーで進めることができるのか?

case | 事例 公共交通機関の利用を促進することでエネルギー消費の構造を変えることは、温室効果ガス排出量の削減と気候変動対策の目標の達成に不可欠である。 国連の最新の気候変動対策報告書では、地球温暖化を1.5℃に抑えるために、2030年までに世界の公共交通機関の輸送能力を2倍に増やす必要があると強調している。 しかし、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経た世界では、NYCやロンドンでも利用者が2割減ったままであるなど、公共交通機関の利用が大幅に減少しているのが実情

NZオークランドは公共交通の運賃上限を導入

case|事例 ニュージーランドのオークランド交通局は、昨今の生活コストの上昇に伴う市民の負担の緩和を目的として、1週間の公共交通利用の運賃支払い額に上限を設ける。上限額はNZ$50(約4,500円)。オークランド市内のすべてのバス、鉄道に加えて内湾フェリー、オークランドとハミルトンを結ぶテ・フィア鉄道が対象となる。この週間の上限制は、これまで導入されていた1日の運賃上限NZ$20(約1,800円)、NZ$230(約21,000円)の月間パスに取って代わる。 オークランド

スマートグロースに対してTODがもたらす5つの価値

case|事例 アリゾナ大学の研究チームが、公共交通指向型開発(Transit Oriented Development:TOD)がどのように都市を変えていくかを長期にわたって検証したレポートを公開した。2007年から2009年までのリーマンショックに伴う大不況から2020年から2023年までのCOVID-19までを含む期間で、アメリカ国内のTOD事例を分析し、TODが雇用をどのように増加させ、世帯動態をいかに変え、通勤パタンや不動産価値、ジェントリフィケーションにどのよう

ベルリン市とハンブルク市は持続可能な地域交通の構築に向けた戦略的な協定を締結

case|事例 ベルリン市とハンブルク市は持続可能な地域交通の構築に向けて戦略的な連携協定を締結した。この協定では、交通事業者や行政をはじめとする関係機関の知識を結集し、様々な交通課題に対して、ソリューションを共創していくことを目的としている。 都市は様々なニーズと課題を抱えた集合体であることから、今回の共創関係の構築には価値がある。ベルリン市とハンブルク市は、すでに行政単位では定期的に交流を行っているが、今回の協定によってさらに関係者を巻き込み、自動運転の導入やバス停な

NZオークランド交通局は手話をデジタルディスプレイの案内に統合

case|事例 オークランド交通局(Auckland Transport)は、ニュージーランドの手話をワイテマタ(ブリトマート)駅のデジタルディスプレイに統合し、手話での案内を可能にする。これは、オークランド交通局がインクルーシブな交通環境の創出を目的に取り組んでいる公共交通ネットワークのアップグレードの一環で、聴覚障害者のアクセシビリティの改善が期待される。 手話での情報提供については、公共交通アクセスグループとの協議によって検討され、特に避難が必要となるような交通ネッ

チューリッヒは公共交通中心の都市として進化しようとしている

case|事例 スイスのチューリッヒはもともと公共交通が発達した都市として知られているが、チューリッヒ市は、その優れた公共交通に自転車等の交通手段を統合することが必要だと考えている。 2年ごとに実施される調査によると、チューリッヒの市民の公共交通の満足度は高い。一方で、自動車での移動に対する満足度は低く、自転車はさらにそれを下回る。現状、自転車の分担率は10%から12%程度で必ずしも高くない。これは道路の狭さに起因する通行のしにくさや必ずしも安全とは言えない利用環境が原因

英国自治体で持続可能な交通への誘導にAIを活用

case | 事例 英国ケンブリッジシャー州とオックスフォードシャー州の道路行政において、交通管制室での意思決定を自動化するAIによるソリューションの実証実験が進められる。ケンブリッジ市やケンブリッジ大などの産官学で構成される地域の実行組織グレーター・ケンブリッジ・パートナーシップ(GCP)は、ケンブリッジシャー州とオックスフォードシャー州と共同で、データ分析企業のアルケラ・データ・テクノロジーズと協力し、人工知能を使用して混雑を緩和し、持続可能な交通手段を改善する。英国の

グラスゴーはバス交通の公営化を検討している

case|事例 グラスゴー市とその周辺地域の公共交通を管轄するストラッチクライド地域交通パートナーシップ(SPT)は、ローカルなバス路線をフランチャイズ化することを承認し、バス交通の公営化に一歩前進した。フランチャイズ化されるとSPTのようなパートナーシップや公的機関が運賃やルート、乗車券の管理を行うことになる。バス交通のフランチャイズ化は、ロンドン、マンチェスターなどで実施されており、リバプールでも最近導入された。フランチャイズ化は、利用者にとってサービスレベル(LoS)

交通死亡事故が増加傾向のLAは住民投票で公共交通・自転車・徒歩への投資強化を決定

case|事例 先週、ロサンゼルスで「Measure HLA」の推進強化の是非を問う住民投票が行われ、有権者の3分の2が賛成票を投じた。「Measure HLA」は2015年に承認された交通計画で、道路ネットワークをコンプリートストリートへとアップグレードし、すべての道路ユーザーの安全性を高めることを目的にしており、歩道の改善や自転車レーン、バス専用レーンの整備などが位置付けられていた。その整備目標は、延長800km以上の区間での歩道拡幅や交差点改良などの歩行環境改善、約4

ベルリンと欧州18都市における持続可能な都市モビリティ調査

case | 事例 持続可能な都市のあり方を考える上で、都市の形態とモビリティの複雑な関係を理解することは重要である。ピーター・ベリル(Peter Berrill)博士らによる『Transportation Research Part D』に掲載された最近の研究では、ベルリンとヨーロッパの他の18都市を対象に、都市の形態、自動車保有、移動の間の複雑な関連性を調べることで、この問題を浮かび上がらせている。 研究結果おいて着目すべき点は、都心に近い住宅地の重要性である。研究で

ワシントン州タコマ市の公共交通

case | 事例 ワシントン州タコマ市は、シアトル都市圏・ピュージェット湾地域の太平洋岸にある都市であるが、市内の移動のには効率的で接続性に優れたバス、LRT、通勤鉄道といった多様な公共交通システムが住民や観光客の多様なニーズを満たすように設計されている。近年、タコマ市は公共交通の運行範囲と運行頻度の向上を目指し大規模な投資を行っている。環境問題や都市の混雑が深刻化する中、タコマの公共交通システムは自家用車に代わる交通手段として、利用者数が着実に増加している。 ピアス・

ビルバオは公共交通運賃を半額に割り引く

case | 事例 スペイン・ビルバオ市を含むビスカイア県全体において、公共交通運賃にダイナミックな変化が起きた。ビスカイア交通コンソーシアム(CTB)により承認された、地下鉄等公共交通全乗車料金の50%割引は、単なる経済的措置にとどまらず、より利用しやすく、持続可能で公平なモビリティへの大きな一歩であり、市民の経済的負担を軽減するだけでなく、公共交通の利用に対する文化的変化を促すものでもある。 2月20日から12ヶ月間施行されるこの措置は、地下鉄だけでなく、ビズカイバス

ボストン市はバスの無料化を2年間延長

case|事例 ボストン市は、市内で最も乗降者の多い3路線で導入していたバスの無料化を2026年3月まで延長することを決定した。当初、この無料化プログラムは2024年3月で終了を予定していた。すでにアメリカ救済計画法(ARPA)によってさらに2年間で840万ドル(約12.6億円)の支援を受けることも決定している。 ボストン市は、市民はこのプログラムによって600万ドル(約9億円)の移動費を節約できていると試算する。バスの無料化は、日々の移動を公共交通に頼っている市民にとっ

NYCの公共交通のアクセシビリティ改善には混雑課金がカギ

case|事例 ニューヨーク州都市交通局(MTA)の公共交通システムのアクセシビリティを完全に解決するためには、NYC都心部における混雑課金(CBDTP)による財源確保が欠かせないと、ニューヨーク大学ルーディング交通センターの最新のレポートが指摘している。 同センターによるとNYCの障害者の13%が公共交通の移動の際に困難を伴っており、エレベーターやスロープなどが設置されたバリアフリーな地下鉄駅はわずか30%にとどまっている。2022年にMTAは障害者支援団体からの集団訴