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交通機関の利用の転換はテクノロジーで進めることができるのか?

case | 事例

公共交通機関の利用を促進することでエネルギー消費の構造を変えることは、温室効果ガス排出量の削減と気候変動対策の目標の達成に不可欠である。 国連の最新の気候変動対策報告書では、地球温暖化を1.5℃に抑えるために、2030年までに世界の公共交通機関の輸送能力を2倍に増やす必要があると強調している。 しかし、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経た世界では、NYCやロンドンでも利用者が2割減ったままであるなど、公共交通機関の利用が大幅に減少しているのが実情である。

テクノロジーや民間投資によって世界に生じている公共交通機関の利用減少のギャップを埋める策が考えられるが、投資家は、公共交通機関に関するテクノロジーにおいては電動化を重要な分野として注目している。資産運用会社のDWSCBRE Investment Managementの専門家たちは、電動化は都市交通に投資する投資家にとって最も重要な技術であると主張している。彼らは、電動バス、フェリー、充電インフラへの投資は、強靭な収入源をもたらし、厳しい排出量政策にも適合すると考えており、実際に投資を進めている。一方で、彼らはまた、送電網へのアクセス、再生可能エネルギーの確保、認可取得のための自治体との連携といった課題に対処する必要があることから、グリーンテクノロジーを拡大し、コストを削減するには政府の支援が必要であるとも指摘している。

電動化は比較的成熟したテクノロジーである一方で、自律走行車やモビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)などの他のイノベーションについては、安定した収益を求めるインフラ投資家にとっては、注目しつつも現在のビジネスモデルはまだ投資に適していない可能性があるとリスクを警戒している。投資家は安定した長期的なリターンを好むため、一貫した政府政策と経済規制によって促進することができることから、都市交通をより環境に優しく、デジタル化されたものにするためには、消費者ニーズと気候政策の目標の両方を満たすことを方向性にした、公共機関と民間資本の間のコラボレーションが必要不可欠である。

insight | 知見

  • 政策に売りなし」という言葉がありますが、自律走行車やMaaSなどの交通に関するテクノロジーに対して民間がこぞって投資するようになるには、まともなビジネスとして成り立つまで政策的に支援しないといけない、という趣旨の記事だと読めます。

  • 公共交通が民間事業では成り立たない地域が多く存在しますが、路線維持の補助金を民間事業者に出すだけでは恐らく持続可能な解決にはならないので、ビジネスとしてまわる仕組みを官民で作っていくことを考えないといけないのだと思います。