ベルリンと欧州18都市における持続可能な都市モビリティ調査
case | 事例
持続可能な都市のあり方を考える上で、都市の形態とモビリティの複雑な関係を理解することは重要である。ピーター・ベリル(Peter Berrill)博士らによる『Transportation Research Part D』に掲載された最近の研究では、ベルリンとヨーロッパの他の18都市を対象に、都市の形態、自動車保有、移動の間の複雑な関連性を調べることで、この問題を浮かび上がらせている。
研究結果おいて着目すべき点は、都心に近い住宅地の重要性である。研究では、都心に近い場所に住むことで、自動車保有率、移動距離、他の交通手段よりも自動車を優先する傾向が大幅に減少することが示されている。ベルリンの場合、都心から6km圏に入ると自動車保有が指数関数的に近い非線形な減少傾向が見られる。研究では、異なる移動パターンを示す人口グループも特定された。世帯収入や世帯の大きさといった要因は自動車所有に重要であり、年齢や性別は移動手段の選択に影響する。子ども連れの交通は、他の目的の交通よりも自動車を利用する可能性がはるかに高く、特定の人口集団がより持続可能なモビリティの選択肢に移行するためには、さらなる支援が必要であることを示し、的を絞った政策介入の必要性を強調している。
ドイツの都市では、フランスの都市やウィーン、マドリードよりも自転車の利用率がはるかに高い。一方、自動車の所有率や利用率は、大都市ほど低い傾向にある。モビリティの選択に影響を与える都市形態の重要な役割を認識することで、都市は持続可能なモビリティを促進する的を絞った介入策を実施することができる。都市の中心部に近い場所での住宅開発を奨励する政策と、公共交通機関やアクティブ・トラベル・インフラの強化を組み合わせることで、自家用車への依存とそれに伴う環境への影響を大幅に減らすことができる。
insight | 知見
都心に近い場所に住むほど車を持たなく公共交通を使う場合が多くなること、世帯収入や世帯人口が自動車保有と相関関係にあること、子連れの移動は自動車に頼りがちになること、など感覚的にそうではないかと思っていることが、複数都市の定量的な分析によって実証されると説得力がありますね。
市民に持続可能なモビリティを選択してもらえるような政策導入を考える上で、このような定量的な分析はどの都市でも必要なのではないでしょうか。