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世界の都市・地域の最新事例を紹介するマガジンです(平日毎日更新)。 「case」では海外記事を抄訳して海外の都市計画関連の最新事例を紹介しています。「insight」では海外の最…
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2023年8月の記事一覧

都心居住の復活を目指すグラスゴー

case | 事例 スコットランドのグラスゴー市は、都心の3つの街路で描かれるZ字のエリアに1,350戸の新築・改築住宅を整備する「ゴールデンZ」計画を採択する予定である。この計画は、小売・ショッピングの優位性を失った都心を、今後12年で人口を倍増させる居住エリアにし、ナイトタイムエコノミーなどを活性化させることを目論んでいる。グラスゴーの都心部は他都市に比べて人口が少なく、現状の居住者数はわずか2万人に過ぎない。 1980年代、グラスゴーが重工業の衰退に苦しみ、新たな成

ボストンは雇用条件の見直しでバス運転士の不足を改善

case|事例 ボストン市を中心にマサチューセッツ内の公共交通を担っているマサチューセッツ湾交通局(MBTA)は、数か月にわたってバスの運転士不足による運休や本数の削減を強いられてきた。5月に公表されたデータによるとパンデミック以前よりも200人も運転士が減少しており、公共交通の運行をパンデミック前の水準で維持することが難しい状況になっている。これはMBTAが今後5年間で26%サービスを拡大しようとするタイミングでもあり、将来のサービス拡充計画は幸先の悪いスタートとなった。

持続可能な観光目的地を目指すシンガポール

case | 事例 シンガポール政府のインバウンド観光で目指すビジョンは、小さなフットプリントで大きな体験ができる「自然の中の都市」になることである。そのためには、公共部門と民間部門の強力なコミットメントが必要であり、さらに観光関係者からの支援も必要になる。今年の年初に、シンガポールはグローバル・サステナブル・ツーリズム協議会(GSTC)の基準に基づき、持続可能な目的地として認定されたが、取り組みはまだ緒についたところである。 シンガポールの観光業界は、国家レベルのシンガ

ボストン市は増加する宅配ニーズに対応するために電動カーゴバイクでの宅配実証を開始

case|事例 ボストン市とボストン交通局は、コロナ以降増加を続けている宅配ニーズに対応するため、オールストン地区を対象にeカーゴバイクを用いた宅配実証を開始する。今回の実証は、端末の物流サービスを手掛けるNet Zero Logisticsと共同で実施される。期間は9月中旬から年内いっぱいの予定。またワシントン大学の都市物流研究室とも連携する。都市物流研究室は、この実証をケーススタディとして分析すると共に、世界のカーゴバイク導入事例の共有などを担う。 この実証にかかる費

ニューヨーク市長が恒常的な屋外ダイニングプログラム「Dining Out NYC」に署名

case|事例 ニューヨーク市長が、恒常的に屋外へのダイニングスペースの設置を許可する「Dining Out NYC」の法制化に署名した。これによってニューヨーク市では、路上でのダイニングスペースの設置が恒常的に認められる。「Dining Out NYC」はコロナ期間中に暫定的に導入されていたプログラムの課題を修正して恒常化プログラムとしたもので、衛生面への配慮や周辺の居住環境への配慮などが盛り込まれている。恒常化プログラムでは、レストランは、年間を通じてダイニングスペース

シアトルの官民連携によるウォーターフロント活性化

case | 事例 シアトル市とシアトル港湾委員会、その他官民の関係者は、シアトルのエリオット湾ウォーターフロント沿いの公園をつなげ、エリアのアクセス性を強化するための新しい官民パートナーシップ「エリオット・ベイ・コネクションズ(EBC)」を発表した。EBCプロジェクトでは、新たな歩行者・サイクリング用緑道を作り、大規模な公園の修復・活性化を行い、アクセシビリティと持続可能性を向上させることを目的として行われる。 EBCに含まれるプロジェクトは、2025年に完成予定のウォ

クリーブランド市は高頻度に運行されている公共交通沿線での駐車場附置義務を撤廃

case|事例 米クリーブランド市は、高頻度に運行されている公共交通沿線でその駅や停留所周辺の駐車場附置義務を撤廃する。クリーブランド市長は「15分都市」の推進を目指しており、この新たな制度によって、より高密度な開発や自動車以外の徒歩や公共交通などの移動の促進が期待できるとしている。 現状の附置義務制度では、住宅については1戸あたり1台、オフィスについては面積と従業員によって決定された台数の駐車場の整備が新規の開発に義務付けられている。しかし、高頻度な公共交通沿線で駅周辺

サンフランシスコは起業家を活用して持続可能な都市に

case | 事例 サンフランシスコはパンデミックの脅威への対処には成功したものの、その後オフィスの空室率は今年第2四半期に32%まで上昇したり、犯罪が多発することで大型小売店がダウンタウン地区から撤退したり、観光客の訪問が妨げられたりしている状況にあると考えられる。こうした課題を解決するため、世界経済フォーラム、サンフランシスコを拠点とするテック企業のセールスフォース、コンサルティンググループのデロイトが提携して「イエス・サンフランシスコ(Yes SF)アーバン・サステナ

メルボルンは電動キックボードの安全利用を先進技術の適用で試みる

case|事例 メルボルン市は、電動キックボードの安全利用を先進技術の適用で実現することを目的とした実証実験に着手する。実証の開始に先立ち、GPSやカメラが搭載された新しいタイプの車両25台が公開された。今回の実証実験では、カメラやGPSを用いて違法な利用を検知し音声による警告を行うことで、違法な歩道走行や都市空間の乱雑化を防ぐ。 メルボルン市は、2022年2月に電動キックボードのシェアサービスを導入し、導入以来延べ500万回(1日平均6,000回)の利用実績がある。また

英国内の都市で排出量ベースの駐車料金体系が拡がる

case|事例 ロンドン市のグリニッチ特別区が最も直近で排出量ベースの駐車料金を導入した自治体となった。グリニッジ特別区は最も環境性能の悪い自動車と最も環境性能の良い自動車との間に3倍もの料金差をつけている。料金は環境性能に加えて、支払い手段や立地などを考慮し39区分に分けられており、0.7ポンド(約130円)から7ポンド(約1,300円)までの料金幅がある。 グリニッチ特別区は、2019年時点で運輸部門のCO2排出量が全体の31%を占めており、そのうち95%はトラックや

NYCは2030年までに配車サービス車両をゼロエミッション化

case | 事例 NYC市長と市タクシー・リムジン委員会(Taxi and Limousine Commission, TLC)は、2030年までにNYCのライドシェア車両をEVまたは車椅子対応車両に移行することを義務付ける「グリーン・ライド・イニシアチブ」を発表した。このグリーンライド政策の展開は、2024年からウーバーやリフトを含む配車サービスによる輸送車両の5%をEVまたは車椅子対応型車両にすることを義務付け、この基準を2025年に15%、2026年に25%に引き上

歩きながらのメールは事故に遭う可能性を高める

case|事例 ニューサウスウェールズ大学(NSWU)の最新の研究で、歩きながらメールを打ったり読んだりすることで転倒などの事故リスクが高まることが明らかにされた。これまでの先行研究では、メールを打ちながら歩くと対向車線に入り込みやすくなることや、若者はマルチタスクの技術を取得しているので障害物を避けながら正確にメールを送信することができることなどが示されていた。 今回のNSWUの研究では、50人の大学生にランダムに滑る可能性のある環境をメールをしながら歩いてもらい、身体

米連邦航空局の規則変更がeVTOL(電動垂直離着陸機)を促進する

case | 事例 米連邦航空局(FAA)は、この度軽飛行機の安全性と性能を向上させることを目的としたMOSAIC(Modernization of Special Airworthiness Certification)制度案を発表したが、その中で軽スポーツ航空機を操縦するパイロットに対する重量制限などの規制を撤廃し、小型の旅客eVTOL(電動垂直離着陸機=空飛ぶクルマ)も軽スポーツ航空機と位置づけるなど、航空業界の様相を一変させる抜本的な変更が盛り込まれた。 MOSA

デトロイトは高齢者や障害者の移動制約問題を解決するため自動運転シャトルの実証に取り組む

case|事例 デトロイト市のモビリティイノベーション局は、2024年に移動制約問題を自動運転技術で解決することを目指した実証を開始する。実証実験では、移動制約が特に強い65歳以上の高齢者と障害者を対象に、自動運転で自宅と目的地を結ぶシャトルサービスを提供する。利用者は、スマホアプリかweb、電話で予約して利用する。利用にかかる料金は無料。ルートや車両、自動運転レベルなどの詳細はまだ発表されていない。2023年秋ごろから運行試験とアプリ開発が着手され、2024年春ごろからの