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英国内の都市で排出量ベースの駐車料金体系が拡がる

case|事例

ロンドン市のグリニッチ特別区が最も直近で排出量ベースの駐車料金を導入した自治体となった。グリニッジ特別区は最も環境性能の悪い自動車と最も環境性能の良い自動車との間に3倍もの料金差をつけている。料金は環境性能に加えて、支払い手段や立地などを考慮し39区分に分けられており、0.7ポンド(約130円)から7ポンド(約1,300円)までの料金幅がある。

グリニッチ特別区は、2019年時点で運輸部門のCO2排出量が全体の31%を占めており、そのうち95%はトラックやバン、乗用車からの排出であった。今回の排出量ベースの駐車料金体系の導入によって、住民や就業者が移動手段を公共交通や徒歩、自転車などに転換させることや、環境性能の良い自動車への買い替えが促進されることが期待されている。

グリニッチ特別区だけではなく、レイシャム特別区やユートン特別区、ニューハム特別区、クロイドン特別区、ランベス特別区などでも類似の料金体系の導入が進んでいる。ウェストミンスター特別区はディーゼル車への追加課金制度を導入し、古い環境性能の悪い自動車が16%も減少したと報告されている。

一方で、インフレ下における生活負担の増大を理由に、導入に反対する声もある。ランベス区では、税額を考慮し、ディーゼル車、ガソリン車、EV車で料金差をつけ、26種類の料金区分を設ける新たな料金体系を5月30日に導入した。しかし、導入後の公開協議では2,900件の意見が寄せられ、うち59%が反対意見だった。またULEZ(超低排出ゾーン)の拡大の中でも、排出量ベースの料金体系の議論が行われているが、7月末には5つの行政区がULEZ拡大に対する異議申し立てで敗訴している。

insight|知見

  • ロンドンは2030年のカーボンニュートラル達成に向けて着々と大胆な施策を打ち出しています。ULEZは環境性能車の買い替えを促進し、かつ都市部の環境汚染の軽減を図る施策と言えます。また、加えて環境性能に応じた駐車料金の設定もカーボンニュートラルの実現を加速させるように思います。

  • 一方で、確かにCO2の排出量という観点で言えば公平な税課金かもしれませんが、所得水準などを考慮すると必ずしもそうではないような気もします。まして、インフレ下においては経済力のない層の負担が相対的に大きくなりそうです。

  • 日本の炭素税は上流課税として流通初期段階で徴収されていますが、下流段階では販売価格に転嫁されているので、なかなか生活の中で税金として実感することはありません。ロンドンの事例を見ていると、日本でも2050年のカーボンニュートラル達成というビジョンに対して、どういう施策を打ってどういう個別目標を達成していくのかという議論が国レベルでも基礎自治体レベルでも必要な気がしてきます。