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クリーブランド市は高頻度に運行されている公共交通沿線での駐車場附置義務を撤廃

case|事例

米クリーブランド市は、高頻度に運行されている公共交通沿線でその駅や停留所周辺の駐車場附置義務を撤廃する。クリーブランド市長は「15分都市」の推進を目指しており、この新たな制度によって、より高密度な開発や自動車以外の徒歩や公共交通などの移動の促進が期待できるとしている。

現状の附置義務制度では、住宅については1戸あたり1台、オフィスについては面積と従業員によって決定された台数の駐車場の整備が新規の開発に義務付けられている。しかし、高頻度な公共交通沿線で駅周辺や停留所周辺の土地が平面駐車場に充てられることは、都市の活力を失わせ停滞を招きかねない。

新たな制度では、開発事業者は附置義務の駐車場を整備しない代わりに、駐輪場の整備やテナントへの公共交通パスの提供、歩行者優先の空間整備など、他の交通手段の利用環境を改善することへの投資が求められる。開発事業者は、附置義務に変わる交通環境整備の提案を行い、市の都市計画委員会によって審査される。駐車場附置義務の撤廃は、最低15分間隔で運行する鉄道駅もしくはバス停から400m以内に位置する新規の開発が対象となる。また新たな制度では、駐車場の整備を完全に妨げるものではなく、食料品店などの開発事業者が望めば整備は可能となる。しかし、その際も自動車以外の交通環境改善への投資は求められる。

この新制度は8月16日に市議会において全会一致で承認されたが、必ずしも市民の理解を広く得られているわけではない。特に、自動車への依存度が高い地区では、さらなる住民との対話が必要となる。

insight|知見

  • 自動車依存型の都市から脱却するために、附置義務の制度を見直す事例が、クリーブランド市以外にもアメリカの都市で増えてきています。

  • 附置義務の撤廃によって高密度な開発を誘導すること、駐車場整備を求めない代わりに自動車以外の交通環境の改善へ投資を求めることなどが基本的な考え方になっているようです。

  • 一律に床面積に応じて駐車場を整備していくのではなく、周辺の移動環境や駐車場の需給バランスを見て必要な量を必要に応じて整備していくということは計画理念の大きなパラダイムシフトなように思います。日本も個別の開発が原因者負担で駐車需要を受け止めることになっていますが、エリア単位くらいで都市のシステムとして駐車場の供給量やサービスを考えられると、より効率的な都市空間の活用に結び付くように思います。