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立冬-りっとう-眠りを熟成に変える消化力

二十四節気通信。

2020年11月7日〜11月21日までは立冬です。

秋の土用が終わって、いよいよ冬へ。紅葉する木々や空の色の美しさから、まだ目に見える世界は秋真っ盛り、という感じですが、暦は一足先に冬の到来を知らせています。過ぎゆく秋を思いっきり楽しめるように。やってくる冬に備えられるように。


立冬とは

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立冬とは、冬が立ち上がること。江戸時代に発行された暦便覧(こよみびんらん)にはこのように述べられています。

〝 冬の気立ち始めて いよいよ冷ゆれば成 〟

いよいよ本格的に冬の気が立ち上がり、冷えが強くなってゆきます。紅葉する木々たちに枯れ木が混じり、今まで吐く息の白さなどから大気の変化として感じとっていた寒さを、足元や下半身でも覚えるようになります。
この時期は、深い眠りに備えて秋までにやり残したことを済ますこと。そして底冷えに対する備えを心がけたいところです。


情熱の萌芽を育む立夏・冷静の種を育む立冬

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秋と春、夏と冬というように、暦では180度反対側にある季節とお互いに補完する関係にありますが、立冬の180度反対側は立夏。

立夏は夏が立ち上がり、陽の気が強まり、春に「怒り」として得た情熱の萌芽を育てはじめる時期です。夏至という真昼に向かって体温を上げて、外側へどんどん活動を広げていきました。

では、反対の立冬はどんな時期になるでしょうか。
立冬は陰の気が強まり、秋に「悲しみ」として得た冷静さの種を土の中で育みはじめる時期です。冬至という真夜中に向かって眠りに入り、身体の熱を下げて内側に熱を回し、深めていくのです。

前回の霜降の項で、この時期は「入眠」環境を見直すことを提案しましたが、立冬ではいよいよ深い眠りの世界へと入っていきます。


熟成のための睡眠には「消化力」が肝心

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立冬とはいわば、熟成の時。

秋に美しかった木々の葉は地に落ちて枯れ、動物たちは内側に栄養を蓄えて動きを止める。万物が眠りにつき、一見全てがとまっているように思える冬ですが、休止でも空白でもありません。

熟成させるために内側でものすごく大きなエネルギーが動いているのです。

夏に外側の活動に使っていた熱量を、冬は自分の内側の活動のために使っていきます。春に目覚めたエネルギーを夏に思い切り発散して、空間を生み出した身体は秋に新しく実りを受け入れ、そして冬に熟成させるプロセスに入ります。

ただ、何もしないで寝かせておくだけでは熟成のプロセスは進みません。
寝かせる前に、熟成するための環境を整えておかなくてはなりません。


熟成と似ているものに腐敗があります。辞書を引いてみると、

熟成とは「ちょうど良い頃合いに達すること」
腐敗とは「有機物が微生物の作用によって分解され、有毒物質を生じたり悪臭を放つようになったりすること」

両方とも微生物が関わるプロセスですが(※諸説あります)、腐敗とは、「微生物が分解する力」が、豆や肉が微生物が分解したものを「取り込んで旨みに変える力」より優ってしまい、全体のバランスが崩れることだと私は認識しています。
熟成させるためにはただ寝かせればいいというわけではなく、微生物が分解する力と取り込んで旨みに変える力(消化力)のバランスを整えていくことが必要なのです。

私たちが日々体験している眠りも、実はただ身体を休めているだけではないのです。夜寝ている間、身体の内側では日中経験したことを整理・分解する力と、それを消化・吸収する力が働いています。この二つのバランスの中で、私たちの身体は日々熟成され、エネルギーを回復させていきます。

特にこの時期の眠りは大切です。今日収穫したものだけでなく、今年収穫したものを熟成させる働きがあるからです。

そこで、眠りという熟成環境を整えるために「消化力」に目を向ける簡単なワークを実践してみています。


自分の消化力に目を向ける寝る前のワーク

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ちょっと夕飯を食べ過ぎてしまった次の日の朝は、お腹の中にまだ消化できていない食べ物が残っている感じがします。食べ物だけでなく、情報や行動も一緒。無意識的にやりすぎてしまったことは、お腹が「消化不良感」として教えてくれます。今日は最後に、自分の消化力に目を向けて熟睡するための簡単なワークをご紹介します。寝ることが苦手な私が考えた、寝ることが好きになったとても簡単なワークです^^ 一日の終わりにぜひ実践してみてください。

まずはお腹に手を当ててこう語りかけます。
「今日とり過ぎたものはないだろうか?」
「やり過ぎたことはないだろうか?」
場所を胸・頭、と動かして同様に行います。

次に手足にぎゅっと力を入れて、解いて
「今日やり過ぎたことはないだろうか?」
と語りかけます。

最後に身体全体を感じます。

特に答えを得ようとせず、深くゆっくりと呼吸を繰り返しながら、ただただ手を当てて語りかけます。ここで眠ってしまっても大丈夫ですが、次に進める方は進みましょう。

お腹に手を戻してこう語りかけます。
「本当は欲するのにとってこなかったものはないだろうか?」
「本当はやりたかったのにやり残したことはないだろうか?」
場所を胸・頭と移して同様に行います。

最後に、手足にギュッと力を入れて、解いたら自分を大きく抱きしめます。

あとは夢の中に委ねます。そして、朝目覚めたらお腹・頭・手足の感覚をチェックをします。


たったこれだけのことですが、自分の消化力が整ってきて、眠りの質もぐんと改善します。

私は最近、消化力のワークで認識した「やり過ぎていること」を整えるためにデジタル・デトックスを実践してみています。これはオンラインよりオフラインの生活の方がいかに素晴らしいか体感したい!というわけではなく(副産物としてそういう体験は本当にたくさん得られますけれどね)、やり過ぎていることを緩めることでやれずにいることとのバランスを整えていくために行っています。

自分をまるごと使ってみたい。

やり過ぎていることをちょっと緩めてみると、「本当はやりたいと思っていたのにやらずにきたこと」が立ち上がってきます。まずはそれを実感し、そしてとりあえずやらせてあげます。

また、やりすぎていることに対しては、ちょっと「寝かせている」そのプロセスを大事にしてあげます。寝かせている間に自然と間引かれ、手放されていくものもあるし、もうちょっと背伸びして取り組める課題や受け皿を探してあげたいなと思うこともあります。

まるで自分の中で兄弟を育てているような、そんな感じです(笑)。

自分の消化力は今ある可能性と、今見えていない可能性の双方をそっと身体を通して私たちに教えてくれます。よく寝ることの大切さをしみじみと感じ入る立冬の夜です。


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