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143. 「なんでわたしが!?」は移行のサイン

Bonsoir!🇫🇷 毎週金曜日に更新のフランス滞在記をお届けします。
今号は、こちらの続き(↓)。

フランスでのシンプルな生活を経てコロナ禍に日本に帰国すると、自分がずいぶん多くの物を管理していることに違和感を覚え・・。この後、人生最大の大断捨離に至るのですが、今号はそのきっかけとなったある「想い」についてのお話。


2020年3月末。
世界中にコロナウィルスが蔓延して、次々と空路も陸路が閉ざされるのをかいくぐって何とか日本に帰国したわたしは、日本の家に着くとホッとしたのか起き上がれなくなった。動けない状態で家の中を見回してみると、物、物、物、物・・。家の中が物だらけ、なのである。

日本で暮らしていた時には感じなかった違和感。
しかし、本当に必要最低限のものだけをスーツケースに詰め込んで数箇所のアパルトマンを渡り歩くという遊牧民的なフランス生活を経たわたしの目には日本の家の中は「これって必要なの?」と思える物で溢れかえっているように映った。

そして、物があるということはそれに付随して管理するコストや手間というものが発生する。ということはつまりだ。わたしは生活不要品(に思える物)をたくさん抱え、それらを必死になって管理する生活を送っていたというわけだ。

ゴゴゴゴゴ・・・
と、わたしの中に湧いてくる熱いものがあった。


なんでわたしが!?

なんでわたしが、こんなことをしなくてはならないの?
しかも、自分のものでもないたくさんの物を、どうしてわたしが管理しなくてはならないの!?
そんなことにわたしの貴重な時間や人生を浪費していただなんて・・!

わたしの中に突如湧いてきた、怒りとも悲しみとも悔しさとも形容しがたいその想いをたった一言で表すと「なんでわたしが!?」であった。

そして、「こんなことはもうやめる!」と心の底から誓ったのだ。

自分の時間や人生をないがしろにすることを。
自己犠牲でなんとか場をおさめようとすることを。
「もうやめる!」と誓ったら腹の底からものすごい力が湧いてきた。


この後、当時暮らしていたのどかな里山の家から、人口の多い中心地に引っ越すことを決意する。引越し業者は使わずに自分たちの力で、自家用車に荷物を積んで引っ越しをした。

コロナ禍でたくさんの人を媒介したであろう業者さんと接触することの不安というのもあったが、今の家の中にあるものをコピー&ペーストするかのようにそのまんま段ボールに詰め込んで新居に行くのなんてぜっっったいに嫌!!というのが大きな理由だった。


以下の記事を書いてから、わたしはどうしてあんなに親しんだ里山を後にする決意ができたのかな?と度々考えるようになった。

きっと、あの時のわたしは人生を大きく変えたかったのだ。
そのために、「引っ越し」というイベントが大きなチャンスだと思ったのだろう。それが大好きだった里山の家を離れることになったとしても。


わたしの中には「なんでわたしが!?」という感情がいつも漂流しているらしく、ふとした瞬間にひょっこり顔を出す。
「なんでわたしが!?」という気持ちを紐解いてみると、だいたい「押し付けられた」とか「妥協をした」とか、自分の主張をあきらめた出来事がセットになっている。

だけどそんな時。
「それを自分で決めたと仮定してストーリーを練り直してみたらどうなる?」
と問いかけてみる。

すると、さらに強い「なんでわたしが!?」という想いが出てくる。
そこで、「まぁまぁ。〝仮定して” だからさ。適当な作り話でいいのよ」
なんて語りかけてみる。

途中まで不甲斐なさを感じながら、いやいやストーリーを作っているのだが、途中で視点がくるっと反転して、これまで「なんでわたしが!?」に覆い尽くされていたものの向こうに本当の自分の主張らしきものがうっすらと見えてくる。

というのが最近の発見だ。

ある心理学の本に、「恨みという感情は抑圧した怒りである」と書いてあったことを思い出した。わたしの場合、きっと周りに合わせて主張を飲み込みやすく、その瞬間、「なんでわたしが!?」という小さな怒りも一緒に飲み込んでしまう。けれど、消化できないものだから「なんでわたしが!?」はずっと漂流し続けて、腐敗して恨みへと変わっていく・・。

自分で書いていて恐ろしくなりました(苦笑)。

だからこうして、再び浮上できるような出来事がやってきたのはすごくありがたいことなのだ。今の自分なら、かつて飲み込んでしまった主張を伝えられるかもしれない。そんな風に思えるよう思考を転換中だ。

「なんでわたしが!?」が現れた時。
それは新しい世界へ自分が移行しようとしているというサインなのだ。

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