050. 傷だらけの鏡を彼女は綺麗だねと言った@フランス革命博物館
bonjour!🇫🇷 毎週金曜日更新のフランス滞在記をお届けします。
今号をもって、9月の第一金曜日まで休刊。フランスの風習にのっとって、バカンスに入りたいと思います。
新婚旅行でフランスに行ったときはじめて知ったバカンス。予定帳を真っ黒にするのが美しい!と思っていたあの頃の私には衝撃的な体験でしたが、今ではバカンスは私にとって大切なもの。普段の流れを一度止めることで、リフレッシュするとともに、今までの体験が深まりまた新しい気持ちで普段の日常を生きることができます。フランス人の知恵ですね。
さて。今号は、ヴィジーユのフランス革命博物館のいよいよ中に入ってみます。
↓お庭も素敵。
どうしてフランスではストライキやデモが多いのか?
そして、それが尊重される空気があるのか?
どうしてこんなに人権に対する意識が高いのか?
フランスに住んでみて発見する日本と違うところ。
要所要所で感じる「どうして?」の根っこを探るといつもたどり着くのが「フランス革命」。
フランス国内のみならず世界中に影響を与え、時代の大きなターニングポイントのきっかけとなった市民革命だ。
私は歴史にはめっぽう弱いけれど、ちゃんと知らなくてはいけないことなんだと感じていた。
一番はじめのフロアで出会った女性の像。
彼女は何を見つめているのだろうか。
当時使われていた武器や食器や服など、フランス革命当時を思わせるさまざまな物が展示されていた。
展示物の説明をじっくり読んだり、詳しい意味を頭で理解することはできなかったけれど、展示された物たちが語る時間にひとたび気持ちを合わせると、物々しさが入り混じる不思議な熱を感じた。
ちょっと怖くて撮影できなかったけれど、ギロチン台の展示なんかもあった。
この写真の奥に写っている絵画は、おそらくマリーアントワネットがギロチン台にかけられるところ。
広々として、窓から漏れてくる日差しが気持ちの良いお部屋。
その中に淡々と並べられる歴史的事実の連続体がシュールで、人間という存在の恐ろしさとともに、フランス人の強さを感じた。
自由を求める強い衝動は、あたらしい時代を切り開く力と、たくさんの命を犠牲にする暴力と、さまざまな方向へ注がれていたという事実。
そしてその時に生まれた基盤の上に今わたしは立っているという事実。いろんな感情が複雑に心のうちに流れてきて、言葉を失った。
歩みを進めるごとに気持ちが静かに静かになっていく。そして、奥の部屋の一角で思わず足を止めた。
ものすごく懐かしい感じがしたのだ。
映画に出てくるような、背の高い書庫とちいさな階段。
何かを研究していた場所なのでしょうか。たくさんの本に囲まれた部屋の真ん中には四角いテーブルがあって、上から緑色のランプシェードの光が照らしている。そしてその奥には、傷だらけの丸い鏡がある。
わたしはその鏡の前でしばらく佇んでいた。まるで神社の鏡の前に立つような気分だ。
この鏡は何を映してきたのだろう。
鏡に想いを馳せていると、在りし日にこの部屋で学問をして、時代の流れを読みながら、ヒートアップし自制が効かなくなっていく民衆を憂いている研究者の姿が想像された。
彼はこの鏡の前にたち、そんな自分の気持ちを映したのかもしれないな、と。
「ママ、いこう?」
と娘の声がして、急に現実に戻された。
「綺麗な鏡だね」
と彼女は言った。
*
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
次回は9月3日、金曜日にお会いしましょう!
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