![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/42478150/rectangle_large_type_2_14e636d9867d40b2b648770e499497c1.jpg?width=1200)
新生Technicsロゴができるまで-考えたこと/挑戦したこと
1965年に誕生したオーディオブランド「Technics」。
しかし、もろもろの事情により、ファンに名残惜しまれながらも、2008年にブランドを閉じてまいました。
そして2014年。
満を持して復活する形となり、私は、立ち上げ仕込みの2013年から2018年まで、新しいTechnicsのブランディングやクリエイティブをディレクターとしてリードしてきました。せっかくなので、復活に向けたロゴ制作の裏側をシェアしたいと思います。
まずは、この動画を見てもらえたら、Technicsがなにかわかると思います。
11:49~ 新しいブランドメッセージとロゴに込めた想い
いま発売中のモデル:http://technics.com/
1. 昔のブランドイメージ
Technicsは昔から、HiFiオーディオだったり、DJのターンテーブルというイメージでした。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39092797/picture_pc_b62590e058e0dd5f1acd79c26b303451.png)
このような黒基調でズッシリ感があるものや。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39092855/picture_pc_bc7e8ef41bdd2c3dad68cb433ee500a1.png)
DJターンテーブルではデファクトスタンダードとなったSL-1200モデルでは、クラブも意識した紫ロゴなども。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39093148/picture_pc_5cdf92f297f2f3a9d819384da9197548.png)
2000年前後では、上品・高級感を醸成するようなゴールド系のモデルなども。
そして、このイメージを背負った状態で復活するわけですが、ロゴの話の前に、音楽に対するフィロソフィーも、昔と今では時代が大きく異なるので新しいものにしたり、戦略は一新していたのですが、それを語るときりがないので、この記事では割愛します。
ただ共通して議論したのは、「昔と同じことをしては復活する意味がない」でした。そこでロゴを変えるということに。
2. ブランドの顔そのものである「ロゴ」をどう変えるか
長年愛されてきたブランドであり、すでにファンも多くいたので、昔のロゴイメージ(色や形)をそのまま踏襲するのが一番楽で簡単だとは理解していました。昔のTechnicsに携わってきた人も、「前と同じロゴでいいじゃないの?」という声が多くあったのは事実。
しかし、新生Technicsとして新しいメッセージと共に復活する以上、ユーザが一番目にするロゴが古いままだと、新しいものが想起されないとわかっていたので、変えることを決断。
フォントは変えない
ただ、さすがにフォント自体を変えてしまうと、変わりすぎるリスクは感じたのでいままでのTimes New Romanはキープ。ただ、カーニングやトラッキングは商品に印字することや技術の進歩などを踏まえて、デザイナーが微調整してます。*"T"と"e"の間隔や、"h" "n" "i"の下部の間隔など。
メインカラーの変更
昔のロゴは、黒バック+白ロゴが多く、黒ロゴはK100%と真っ黒でした。↓のようにちょっと重々しい感じ。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39094285/picture_pc_0996d5748b3fe18e85f2b16d914a09bd.png)
それを、新生Technicsでは、
・新生したことをビジュアル面でパッとわかる
・音楽の柔らかさを表現する
・新しい音楽体験への期待感やリスナーそれぞれの体験に染めてもらう余白
・不変的な価値を体言
・Less is more、シンプル、神は細部に宿る精神
を意識して、メインを白バックに変えて、ロゴ色も真っ黒ではなく、
同じように見た目も柔らかいながらも、しっかりと存在するダークグレー色に変更。
*CMYK:C0% M0% Y0% K70%、RGM:R77% G77% B77%
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39095590/picture_pc_540e5e0e3873f277a160ec3705c89e8e.png?width=1200)
3. ブランドメッセージを伝えるための挑戦
ここで基本形はできたのですが、最後の仕上げ(遊び)と挑戦をしました。
↑の動画内の後半にでてきますが、「Rediscover Music」というブランドスローガンの扱いです。
スローガンは、私も含めたマーケティングメンバーで決めたのですが、ここに込めた想いをどう伝えるか。もちろん、いろんな媒体やクリエイティブのコピーとかに入れることは可能でしたが、もっと効果的に理解してもらうための私の判断は「ロゴにいれてしまおう」でした。
ここは、人によって賛否あると思いますけどね。
Rediscover Musicのフォントを決める
レイアウトや全体のバランスを見ながら決めたので、ステップバイステップで進めたわけではないですが、Rediscover Musicのフォントをどうするか少し悩みました。
というのも、Technicsロゴにもう1つの要素を付けるということは、整理を怠るとノイジーだったり、読み手の捉え方を間違う可能性がある。メインロゴと同じフォントにしてしまうと、Technicsに同じ要素が加わり重くなるため、「フォントはTechnicsのTimes New Romanとは別のにしよう」と。
DIN FONTでした。
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39094736/picture_pc_5ca03220c29e14495da36043c4fd287f.png?width=1200)
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39095371/picture_pc_21ac3368f69726813b8b2886b29962ff.png?width=1200)
これにより、メインはあくまでTechnicsというのを保ちつつ、字体は少し異なるも、ちゃんと親和性を担保できる形に。
スローガンのレイアウトと遊び
最後の仕上げです。
「Rediscover Music」と「Technics」をどうレイアウトするか。
レイアウトを考えるにあたっての懸念はここらへんでした。
・例えば、サブコピーみたいにTechnicsの下にRediscover Musicを配置したら、スローガンという感じよりかはサブブランド的になって印象が弱くなる
・テキスト+テキストなので、配置の仕方で、それが「読み順・語順」になるため、英語やグローバル視点の発話で、"Technics, Rediscover Music"がいいのか、"Rediscover Music, Technics"がいいのか考慮する必要あり
そこで、判断したことがこの2つ。
・発話してもらう語順は、”Rediscover Music, Technics"の方がしまりがいい(体言止め)
・ロゴの前にスローガンをもってくることは、通常あまり例がないため、むしろ印象も強くなって挑戦っぽくていいかも
Rediscover Music+Technicsの順番で並べるにしても、本質はテキストなので、そのまま横並びにしたらキレイじゃない。
とはいえ、各テキスト要素を分けるために、無理やりなグラフィック要素で整理するのは、シンプルやLess is moreの考え方は真逆。
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39097352/picture_pc_f6f2a57671cef2116f94f4b9b5c380fe.png?width=1200)
ではどうするか...。
結論。
最小限の要素で、Rediscover MusicとTechnicsを区分けしたのが、↓の間にあるスラッシュ”/"。
これが最新のロゴタイプ(横組み/縦組み)
*商品につけるロゴはTechnicsのみ
![画像9](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39096106/picture_pc_a27d20c1a0e909c64e0ad637b126aeed.png?width=1200)
![画像10](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39096118/picture_pc_ba84c1cec73cc5b8cb4f063a9b212bd8.png?width=1200)
このスラッシュがあることで、最低限の要素で、Rediscover MusicとTechnicsがそれぞれ独立し、またロゴ全体として個性が出る(テキストだけだと出ない)。
これがベストバランスと思い、これでFIX。
ただ、これは単に区別する機能だけのものではなくて、Technicsのアイコンであるアンプに搭載したVUメーター(いずれ業界のデファクトに)の針をモチーフにしている。
![画像11](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39097654/picture_pc_31b616a10498432d2b572393a6c3f2d9.png?width=1200)
針メーターは電源オフで動きがないときは左側にあり、電源が入って音が入り始めると、右側に振れて動き始める。その左右の動きをTechnicsの復活・再始動というダブルミーニングで、スラッシュも右振れとして加えた。
スラッシュはたった1つの線ですが、想いを込めてロゴの課題や想いを乗っけるLess is moreなマインドを体言できた1つかなと思ってます。
ちなみに、私一人でこのクリエイティブを考えたわけではなく、アイデアや整理、そして具現化してくれたのは、クリエイティブ会社のNONアソシェーツさんでした。彼らのサポートなしでは、ここまで到達できませんでしたね。
4. あとは同じ世界観を徹底して展開するだけ
さて、ロゴができたら、あとは徹底して世界観を伝えないと意味がありません。
IFAやCESなどの大型展博、WEBサイト、コンセプト動画、店頭販促物、コラボレーションなども、私が担当していたので統一化。
IFA ブースデザイン。
2つのクラスだけの紹介でしたが、こんだけスペースをとって、世界観を創りつつ、商品をヒーローにするシンプルかつ細部まで気を配ったレイアウト (協力:乃村工藝社)
![画像12](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39099429/picture_pc_d878e4e1d944d1d7ee3a5e6a672680e8.jpg?width=1200)
![画像13](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39099487/picture_pc_5a06f75ede5d3bb359e90c6f594d56fa.jpg?width=1200)
![画像14](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39099501/picture_pc_b18f5783dd65ba6736d67d392d3ad172.jpg?width=1200)
![画像15](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39098470/picture_pc_0b77c1fe07232b6bb963d73cdb312b34.png?width=1200)
装飾も商品をヒーローにするため、白やガラス、間接光で余分な要素を加えずシンプルを極めていく方向に。
WEBサイトも、同じ世界観で展開。
https://www.technics.com/
![画像16](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39098570/picture_pc_9c16324b9c36e984a785f91e9e4aac16.png?width=1200)
販促物も同じ世界観で徹底。
![画像17](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39098517/picture_pc_e47bdbac5c0f83d16412cabdc3022560.png?width=1200)
そして、このような世界観が伝わり始め、コラボも始まるように。
*コラボは当時のものであり、現在は終了しています
![画像18](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39098346/picture_pc_8579ea12e4ad8448512e7d450fe596e6.png?width=1200)
![画像19](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39098356/picture_pc_b1b2d5228e1f5a904a8ebee63e5a8b1c.png?width=1200)
![画像20](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39098372/picture_pc_62a23cde5e436a882a4ed719e4c3f9eb.png?width=1200)
以上が、新生ロゴが誕生するまでの背景と、その後でした。
もちろん、このアプローチが正解か間違いかなんてのはわかりっこないし、そういう答えを求めているわけでもない。
アーティストや音楽と同じ、なにが正解かなんて決めれるもんでもないので、できることは伝えたいことを形して届けるだけだと思います。
受け手も、ちょうどよい余白を感じながら、自分の価値観で解釈し、好きなら好き。嫌いなら嫌いと評価してもらうだけ。
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