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ひとごみ ひとなみ


昨日、高校時代の同級生5人で集まった。
コロナ以降全く顔を合わせていなかったが、
そろそろちょっと会ってみないかとなり。


人と会うのが苦痛で、飲み会等自粛の風潮は付き合いを断る言い訳としては、
正直とても使いやすい数年間だった。

5ヵ月程前、15年以上勤めていた職場を辞めた。
近年、この仕事は自分には向いていないと薄々感じてはいたが、
通勤する事は自分のルーティンの一つになっていたため、
向いてないならさあ辞めようとは簡単には思えなかった。
辞めてどうするの、と。

子ども関係の仕事なので、出勤すれば何十人という人人人に囲まれる。
行けばそれなりに楽しいのだ、とにかく色々とパワフルなので、
こちらも負けずに若くいられるような気がする。
ただその分、喜怒哀楽全てのいろんな感情に毎日もみくちゃにされる。
きっと予兆はあった、それはわかる。
ただ、ある日突然、

「人に会いすぎた」

という思いでいっぱいになり、どうしても出勤できなくなってしまった。

あれだけたくさん悩んだり考え込んだりしたというのに、
心が決まったらなんというか、呆気なくアッサリ辞めて、
そして今を過ごしている。

家族以外との関わりを必要最低限に、
ただただ穏やかに毎日を過ごせればそれで100点という日々。


そこに友達からの誘いがあった。
「久しぶりにいいねー」
なんて当たり障りなく返信をしていたら、会の話を進めてくれていた。

30分したら帰ろう。
車だし自由がきく。
言い訳は…

万全の体制で臨んだ筈の飲み会。
居酒屋は、ここ数日の社会の変化もあってか人混み。に目が眩む。
こちら人を意図的に避けて仙人のように日々を送っていたのだ。
それがこの人波よ。
と、仙人がそう思っただけで、友達からしたら
そこまで面食らうような状況ではなかったんだろうなとは思う。
こんな田舎に人波などそうそう。

結果、帰路についたのは日付が変わる頃だった。30分どころか。

近況や高校時代の話、何回聞いたか分からない鉄板ネタ
等々、話の内容こそ浅いがとても濃密な時間を過ごした。
いちいち探りを入れなくてもお互いの人となりを分かっているというのは
居心地がいいものだなと驚く。
自分も仕事を辞めた近況を報告したわけだが、
まー色々あるでしょ。元気そうでいいね。
位の、大して心のこもっていない返事を誰かが言って終了である。
理由も聞かないのかよと。

帰り道、車の中でその日の会話の反省リピートをする事なく、
珍しく何も考えず歌など歌いながら運転した。


仕事を辞めた時に、同僚の方からお別れDVDを頂いた。
勤務に穴を開け、挨拶もそこそこに退職したのに、
わざわざ自分のために作って下さったそのお気持ちが
申し訳なく、でもとても嬉しかった。
しかし未だに再生できずに仕舞ったままにしてある。


一生人混みを得意にはなれないと思う。
でも人並みにできたフリができればよしとしよう。

秒で過ぎ去る30分のためにとにかく長いこと悶々としたわけで、
うまくできる自分なんてハナから望まず、
いつか再生ボタンを押してみることにする。









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