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【官能小説】 Cerberus 第13話 『潮騒』


第1章『金木犀の咲く季節(1〜12話)』の
続編となる第2章(第13話〜)です。
第1章は下記リンクよりご覧いただけます。



あの日から3年間。


表向きは上司・部下の関係を演じながら
人知れず奴隷契約を結び、主従関係を育んできた
2人は秘密の情事を重ねていた。


香澄が奴隷堕ちを懇願したあの日以降、
一ノ瀬と約束した通り高木との交際を続ける
傍らで、香澄の身体には一ノ瀬による
調教が施されてきた。


ほぼ毎日、誰も出社していない時間帯に
オフィスへ到着して部下に対する指示を
メールで出す一ノ瀬の足元には、
今日も当たり前のように四つん這いで
献身的に仕える香澄の姿があった。


仕事に精を出す一ノ瀬を見上げながら、
首輪を嵌められた香澄は肉棒へ奉仕を続ける。


飼われ始めたばかりの頃、
一ノ瀬のスーツにファンデーションが付いて
しまいこっぴどく叱られた事もあったが、
躾けの成果もあり、今では肌が触れない
ぎりぎりの深さで咥えられるようになった。


普段大勢の人間が働き騒がしいオフィスも、
この時間だけは静寂の中にジュルジュルと
肉棒を啜る音とタイピングの音だけが響く。


毎朝の日課になったこのルーティンの最中、
時折りメールを打つ手を止めて香澄の頭を
撫でる事がある。


そんな時、香澄は飼育されている幸福感と
神聖な職場で肉棒へ奉仕する背徳感で、
M性が満たされていく感覚が堪らなく好きだった。


皆が出社し始める8:30を過ぎた頃、
オフィスには部下への指示を出し終えて
自身の仕事に取り掛かる一ノ瀬と、
精液を飲み干してから首輪を外され
いつも通り職務にあたる香澄の姿。


10ほど年齢の離れた既婚者である一ノ瀬に
性奴隷として飼育されている背徳感と、
繰り返し執拗に身体へ植え付けられていく快楽。


香澄の心と身体は日を追うごとに一ノ瀬の支配によって侵蝕を許し、服従する悦びに満ち溢れる。


それは3年前、自ら一ノ瀬に懇願した憧れの姿。


ただひたすらに快楽を貪る性奴隷として
一ノ瀬の元で調教を受け、飼育される日々は、
全身に通った毛細血管の細部に至るまで悦びで
煮え滾るような興奮を覚える毎日であった。


これまで高木や過去の男達と重ねてきた
当たり障りのない男女の関係とは対象的に、
オフィスの至る所で繰り返される一ノ瀬との
濃密で非日常な時間の数々は、
M性を持て余してきた香澄にとって、
とても刺激的なものであった。


香澄は一ノ瀬の気分の赴くままにその身を委ね、
命じられるまま、ローターを穴に複数個
詰め込まれた状態で部の会議へ参加したり、
終業後、2人だけが残されたフロアへ高木が
香澄を迎えに訪れた際には一ノ瀬のデスクの下に身を隠し、高木と一ノ瀬が談笑する中、
四つん這いになりながら2人の会話が終わるまで奉仕を続ける事もあった。


その事実を知る由もない高木をはじめとする
周りの者の目には、部署の大黒柱として激務に
あたる一ノ瀬と、営業サポートとして一ノ瀬を
献身的に支える香澄の姿は仕事上の良き
パートナーとしてしか映っていないだろう。


そんな春のある日、2人の関係性に変化を及ぼす
きっかけとなる出来事が起きる。


この会社では毎年BBQ大会が開催されるのだが、社員の家族や恋人に至るまでありとあらゆる
関係者が無料で招待される。


GWの真っ只中、巷の会社員はあちこちに旅行へ
繰り出していくが、福利厚生の一環として
部署単位で開催しているのだ。


当日は幸い好天にも恵まれたため、
5月初旬とはいえ社員一同汗だくになりながら
タープやテーブルのセッティングにあたった。


今年は幕張の海浜公園が会場であった事から
時折り潮の香りを纏った爽やかな風が吹き抜けていくため心地良い。


準備の方は関係者の集まり始める11:30には
終えることができ、それぞれ受け入れに向けて
持ち場へ散っていった。


絶好のBBQ日和という事もあり、
周囲には家族連れや大学のサークル仲間と思しき若者達も思い思いに休日を楽しんでおり、
公園には賑やかな光景が広がっている。


社員の家族もチラホラと会場へ集まり始め、
一ノ瀬が部長としてそれぞれの家族の元へ
挨拶回りに奔走している中、
受付あたりから広範囲に聞こえるほど大きな
野太い声が上がる。


『お〜い! 貴美子さ〜ん♪』


中島が弾むような声で香澄の母・貴美子を
出迎えるのはBBQ大会恒例の光景だ。


両手にお酒の入ったコップを持ち、下心丸出しのスケベな笑顔で擦り寄るように駆け寄ってくる。


『お招きいただきありがとうございます。
 中島"部長"♪』


(あ…  
 中島が降格した事をママに言うの忘れてた💦)


『あー… あはは…
 貴美子さん、ご無沙汰してます!』

『あら、ごめんなさいね♪
 中島"部長"もお変わり無くて安心しました♪』


『…、うっ、ゴホンッ!
 いや〜、3年ぶりですか?
 貴美子さんがしばらく来てくれないから
 寂しかったんですよ!』


『まぁ、中島"部長"ったらお上手なんだから♪』


『ま… まあ、今日は楽しんで行ってください。
 また後でゆっくりお話ししましょうね!』


『はーい、またね♪』


香澄は3年ぶりの参加となる貴美子に
中島が部長から降格した事を伝え忘れていた事を
少し悪いと思ったが、BBQ大会に参加するたびに母親を口説きにかかる中島への罰にちょうど良いと思い直し、気にしない事にした。


正午を少し回った頃、社員・家族総勢100名を超える参加者に向けて主催である一ノ瀬の乾杯の挨拶を始める。


『え〜、無事に今年もBBQ大会を
 迎える事が出来ますのも社員を支えて
 くださるご家族皆様のお陰です。
 どうぞ我々の日頃の感謝の気持ちとして
 楽しんで頂ければ幸いです!乾杯!!』


一ノ瀬による乾杯の音頭と共に今年も無事に
BBQ大会が開幕した。


社員とその家族はそれぞれが思い思いに楽しい
時間を過ごす中で、一ノ瀬は相変わらず
挨拶回りの続きに奔走していた。


一方の香澄はというと、
日陰にセッティングされたテーブルで
母・貴美子と肉やお酒を楽しんでいた。


『ところで香澄、
 高木くんのこと全然紹介してくれないけど
 どの子なの?』


『いいよママ、高木くんの事は…
 そのうち紹介するから!』


『もぉ… 香澄ったら…
 ママね、心配してるのよ?』


『も〜…  本当にいいってば!』


『今度、うちに連れていらっしゃいよ。』


『それよりママ、
 一ノ瀬部長を紹介するね!』


『部長?』


『はじめまして、一ノ瀬です。』


『あ、香澄がいつもお世話になってます〜♪』


『いえ、こちらこそ。』


(香澄ーっ!
 中島さんが部長じゃないの??)


『香澄さん、綺麗なお母さんだね。』


『まぁ、部長さんたらっ!
 お上手ね♪』


『そんな事ないですよ部長(笑)』


(余計な事言わないで香澄っ!!
 それにしても結構男前な部長さんね…)


『では、お母さんもどうぞ
 ごゆっくり楽しんでいってくださいね。』


その後も一ノ瀬は各社員のご家族への挨拶回りに
忙しなく歩き回り、瞬く間に時間は過ぎていく。


そしてBBQ大会がスタートしてから2時間ほどが経過した頃、酒に酔った中島がまたしても
失態を犯す。


『貴美子さぁ〜ん♪
 今年も僕に会いにきてくれて嬉しいですよ!
 この後なんですけど予定空いてますか〜?』


『あっ…  あはは…
 この後はあいにく予定がありまして💦』


『え〜、
 久しぶりにこうして再会出来たんだから
 もっとお話ししましょうよ〜
 アフター行きましょ!アフター!!』


そう言って隣の椅子に座り込み、
貴美子の手を握って離そうとしない中島。


『ちょっ…ちょっと中島課長、
 困ります💦』


『中島課長やめてください!
 ママが困ってますから!』


『香澄ちゃんも貴美子さんも美人だから
 僕がパパになっちゃおうかな〜♪』


『も〜、中島課長ったら!
 お上手なんだから〜💦』


『課長! 本当に飲み過ぎですよ!
 とにかく母から離れてくださいっ!』


貴美子は内心気持ち悪くて仕方なかったが、
香澄の上司でもある中島を無碍にあしらう事も
できず手をこまねいていた。


そんな貴美子のそばをひと通り挨拶周りを終えた
一ノ瀬がタイミング良く通りがかる。


『あっ、一ノ瀬部長〜!
 僕、貴美子さんと結婚します(笑)』


酔っ払いに絡まれて迷惑顔の香澄と貴美子の肩を強引に抱き寄せた中島は、満面の笑みで貴美子の頬に向けて唇を尖らす。


『ちょっ… 中島課長💦』


『もぅ、やめてください中島課長!!』


そんな光景をみかねた一ノ瀬は急いで駆け寄り
中島の胸ぐらを掴み2人から引き離す。


『あぁっ… 』


中島に手を引っ張られて椅子からよろけ
落ちそうになる貴美子を抱き止める一ノ瀬。


『大丈夫ですか?
 お怪我はありませんか?』


あくまでも会の主催者として冷静に対応した
一ノ瀬であったが、その腕の中で貴美子は
安堵の表情を浮かべる。


『一ノ瀬部長… 』


『うちの中島が申し訳ありません。
 酔いが冷めたらきつく叱っておきますので。』


『いえ… そんな… 』


急に投げ飛ばされて尻もちをついた中島は
突然現実に引き戻され、目を丸くして
表情で一ノ瀬と貴美子を見上げている。


『ママっ! 大丈夫!?』


一ノ瀬の腕から離れようとしない貴美子に少し
嫉妬した香澄は慌てて2人の間へ割って入る。


『ちょっと… ママ!部長!!』


香澄が割って入った事により離れる2人。


『一ノ瀬さん…
 助けていただきありがとうございます… 』


『いえ… 』


しばらく見つめ合いながら
何気ない言葉を交わす2人。


この先、目まぐるしく変化していく彼等の未来を
この時誰が予想できただろう。


第13話 『潮騒』 終わり



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