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花組公演バウ・ワークショップ「殉情」感想

「殉情な感情は空回り・・するのかと思ったらしなかった!!良かったな佐助」(これ分かる人はたぶんアラフォー以上)

花組バウ・ワークショップ「殉情」についての感想です。この作品は、劇場で観劇することは叶わなかったのですがずっと気になっていた作品で、先日スカイステージで観ることができ、どうしても感想を残しておきたい!という激重な感情を胸に抱いて今これをしたためております。

宝塚が原作のある作品を上演する場合、かなり思い切った改変が加えられることが多いのですが、今回は割と原作(春琴抄)に忠実だったな、という印象です。
大きな違いといえば、お湯かけの犯人が宝塚ではハッキリと示されていたことと、YouTuberのマモルが登場するかどうかという所くらいでしょうか。(希波らいと君のはっちゃけ具合がカンブリア記のツボでした)

ほってぃ・ことのちゃんの佐助と春琴が、原作から抜け出したような、「宝塚で春琴抄やるならこうなるよね」という大正解の芝居だったのに対して、はなこ・あわちゃんの佐助と春琴は味わい深いというか上級者向けというか、とにかく2つが全く別の作品のように仕上がっていたのに驚きました。

ことのちゃんはお芝居も歌もものすごい安定感で、気位の高さも春琴そのものといった感じです。あわちゃんは、元々の雰囲気が可愛らしい感じなので春琴のイメージとはちょっと違うんですが、この人の個性でしかできない独自の春琴を作り上げていたように思います。きっと役を解釈する力と表現する力がすごく高い人なんでしょうね。

春琴抄には、春琴の容姿に関する記述はあるんですが佐助の容貌については一切書かれてないので、これは私の勝手な感想なんですが、はなこちゃんの佐助の健康的な感じとか、暖かさが溢れ出てるところがすごく佐助のイメージに近い気がしました。(昔、星組にいた立樹遥さんを思い出した)
ほってぃはどちらかというと、薬屋の丁稚というよりあれですよね、帝国ホテルの従業員の方ですよね?
いや皆さん思いませんでした??「私が親なら薬屋じゃなくて、一流ホテルか迎賓館に奉公に出すよな」って‥
でもあそこまでだと、途中春琴が若い女の子の弟子にヤキモチやくところとか、妙に説得力ありましたよね。
まあこういう、美形しかいないという宝塚の構造的欠陥を楽しむのも醍醐味なので‥
あと、あれだけの華がありながら耐え忍ぶ役に徹していて、それがすごく自然で、この人の演技をもっと他にも見てみたいなと思いました。

そしてどちらの佐助も、春琴を見つめる時の目や表情がとても優しくて、ラストの二人で踊る場面の多幸感がものすごいんですよね。

あとは、皆さんそれぞれ魅力的だったのですが、特に印象に残った方を‥

利太郎の峰果とわさん。前半のお笑いの場面が面白すぎて、お話の内容を知った上で見てたのでちょっと心配になりましたが、後半ではちゃんと悪い人だったので安心しました(?)。
ああいうクセの強い悪役を、下品にならないギリギリのラインで演じきれるってすごいですよね。

お蘭の詩希すみれさん、糸月雪羽さん。どちらも歌がうまくてきれいだった!何だかんだいってこの人、この作品の中ではかなりマトモな常識の持ち主なんですよね。アレが春琴にアレしようとしてた時も止めようとしてたし。(ネタバレ回避のため伏せ字)

マモル役の希波らいとさん。さっきも書いたけどこの人のはっちゃけ方が私はかなり好きでした。カーテンコールの時も何かスマホ取り出して小芝居してるのが可愛かった。スカステの映像では「(アドリブで)尺使いすぎ」とか言われてましたが、らいと君にはぜひ、このままで大きくなっていただきたい。それがオタク達の願いです。

あとは何と言っても、音楽が私の好みのど真ん中でした。佐助や春琴の思いが宝塚らしくきれいに表現されてましたね。
(「交わす言葉もなく‥」ということはつまり、「I love youさえ言えないMy heart」ということですね、とか思ったり)(しつこい)

全体を通して、色んな意味でちょっとインパクトのあるお話なので、もしかしたら好き嫌いあるかも知れませんが、ハマる人にはがっつりハマると思うので、気になる方は、機会があればぜひ観ていただきたいです。

冒頭にも書きましたが、この作品は割と原作に寄せて作られてるので、原作を読んでから宝塚版を観ても、宝塚版みてから原作を読んでも、どちらが先でも楽しめると思います。もちろん、原作読まなくても宝塚版単体でも楽しめる作品になってると思います。
谷崎潤一郎は、色んなところで「一文が長い、読みづらい」とさんざん言われてますが、「どんだけ読みづらいんやろう」と覚悟して読めば意外といけます。量もそんなに多くないです。文庫本で70ページくらい。
内容的に大きな違いはなくても細かい部分で色々と違いはあるので、それを見つけるのも楽しいです。何度も言いますがYouTuberのマモルは原作には登場しません。

そんな感じでしょうか。とにかくワタシ的には大好きな作品なので、これからも時々上演してほしいです。


「飼い主エラそうなこと言ってるけど、短編集の中で春琴抄しか読んでないニャン」

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