悪い夜

<悪い夜>
悪い夜を選んでしまった
静かなのはいいがやけに明るい
焼け跡を歩くとノボロギクが足に絡む
ここに道があったはずだが
踏み跡が多くて見分けがつかない
二人で行くはずが一人を置いてきてしまった
遠い記憶は薄闇に溺れて
何を探しにきたのか忘れそうだ
 
年をとっても賢くならない
見聞きしたことは多いがどれが役に立つのか
もう行く手は長くはないのに
目の前には新しいことばかり
 
自分の記憶が人類の記憶の一部だなんて信じられない
どこを目指して行くのだったか
それさえあやふやになってきた
思い起こせと人は言うが
何のために、どうやって
すべてはおぼろになっていく
この悪い夜に

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