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「読書録」の滋味深さ、「運命の本」などせいぜい五六冊くらい、獣夜行、バーミヤンの風、宇宙船恥丘号、順法精神の塊、複写禁止、

十月十六日

言うまでもなく、アメリカで富や機会の分配をどうにかしようかとするのも、きわめて厄介なことだ。ウォール街の近くの公園を占拠することは、巨大投資銀行の力を減じるためには何も役立っていない。銀行の経営方法を変えたり、不正行為のかどで罰することは可能だが、すべては規制によってなされることである。前線での行動を要求するためには、何を要求すべきか知らなければならない。それを思いつくためには、山ほどの退屈だが本質的な詳細が必要となる。しかしオキュパイ運動のメンバーに、資本準備金の要件だの、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)だの、証券取引所と手形交換所の違いの詳細をきちんとのみ込む辛抱強さなどあっただろうか。富裕層から貧困層への富の再分配のような単純なことでさえも、税法に関するつまらない論争(キャピタルゲインの扱い、代償ミニマム税など)が絡んできて、たちまち複雑になってしまう。

ジョセフ・ヒース『啓蒙思想2.0――政治・経済・生活を正気に戻すために』(栗原百代・訳 NTT出版)

正午起床。柿ピー(わさび)、紅茶。休館日。ピザピザピザピザピザピザピザ、エルボー。きょう床屋へ行くべきか行くべからざるか。これ書き終わった段階で上空から液体が落ちているか落ちていないかで判断する。髪が伸びるとドライヤーで乾きにくくなる。スキンヘッドにしたほうが散髪代が浮いたりハゲる心配がなかったりして「合理的」なのだろうけど、スキンヘッドすなわちヨーロッパの極右みたいな偏見を俺は免れていないので、やはり抵抗がある。
俺は過去のことを「当時読んでいた本」と一緒に思い出すのが趣味。だから「通読した本」のタイトルはほとんどノートに記録している。

あんな時代もあったねと

記録によれば二年前の十月十六日は『ナンバーベスト・セレクション3』を読んでいたことがわかる。矢野政権、「あかん優勝してまう」の年だ。佐藤、中野、伊藤の一年目。けっきょくヤクルトが優勝したんだ。勝ち数は阪神のほうが多かったのに。酒飲みたくなったきたわ。しみじみ飲めばしみじみと思い出だけが行き過ぎる。この本については、スポーツノンフィクションだったということ以外、なにも思い出せない。開けばさすがに「あーあったあった」ってなるだろうけど。記録を眺めているとこういう本のほうが多いってことがわかる。ブックワーム、それは「恋多き女」みたいなもの。一緒に寝た男はごまんといるのに顔を覚えている男は一握り。といってもほとんどが詰まらない男だったというわけでもないのよ。そこを勘違いしないで。「運命の一冊」なんてそうあるものじゃないわ。生涯にせいぜい五六冊くらいかしら。

光文社古典新訳文庫から出ているO・ヘンリー短編集がなかなかいい。原文のユーモラスが伝わってくる。「秋の夜長はアメリカ短編」とは友人の名言。つぎはヘミングウェイの短編集いこうか。

たらこパスタ食って、床屋行くか。あとモヤシと納豆と豆腐を買わないと。麻婆豆腐食べたくてしかたないんだ、いまの俺。やけに静かだね。秋深き隣のジジイはいまいずこ。

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