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「長くて複雑な文章」なんか好んで読みたがるやつは変態だから、「売国奴」パラダイスもしくはジムビーム風呂、

九月十九日

最後に、その数は市民の十倍といわれる〝ヘロイタイ〟がいた。国家の奴隷で、彼らには何の権利も認められなかった。市民の所有地で農作業を行い、収穫の半分を市民に徴収され、その残りで生活しなければならなかった。ヘロイタイが直面した様々な危険には、死の危険も含まれている。訓練の終わりに、新たに成人になったスパルタ市民はヘロイタイを殺しにいかなければならない決まりだったからだ。国家危急の際には、ヘロイタイはスパルタ軍の補助戦力として利用されることもあった。しかしスパルタ市民は、常にヘロイタイの蜂起におびえながら暮らしていた。

ジャン=フランソワ・ブラウンスタン/ベルナール・ファン『グランゼコールの教科書』第一部(木村高子・他訳 プレジデント社)

午後十二時十七分。柿の種(わさび)、紅茶。空きっ腹で紅茶を飲み過ぎるとときどき気持ち悪くなるから必ず何か固形物を腹にいれてから紅茶を飲む。昨夜のジムビームはまじうまかった。まだ半分ほど残っているんだ。とうぜん今夜も飲むよ。セナ様のお許しが出たから。酒を飲まないでいると「去勢された気分」になる。飲酒と「男らしさ」の関わりについては前から気になっている。探せばそんな研究論文もあるかもしれない。酒であれタバコであれ、会社はその売り込みに際して、「男らしい男」像もいっしょに提示することが多くなかったか。いまアサヒスーパードライのCMに出てた「国際ジャーナリスト」落合信彦のことを思い出した。彼のあの胡散臭さと滑稽さはひとつの「キャラ」として理解したほうがいい。その「キャラ」は息子にもちゃんと受け継がれているようだ。きのうの読売に、一か月に一冊も本を読まない人が六割を超えた、という記事が一面にあった。文化庁の「国語に関する世論調査」というものをどこまで信用出来るかという問題はともかくとして、オイラはその数字を見て、「だいたいそれくらいだろうな」とは思った。この種の調査結果が出るたび、世の「本好き」の連中は、「近頃の人たちはSNSなどの短い文章に慣れきっていて長くて複雑な文章を読みこなせなくなっている」といった紋切り型を溜息まじりに口にする。そしてそのあとにはだいたい、「世の中はSNSの扇情的情報で捉えられるほど単純ではない、自分にとって必要な情報だけを求めていても視野は広がらないし思考力も身に付かない、自分の興味のない情報=ノイズにさらされることも重要なんだ」といったこれまた紋切り型のお説教が続く。いつも思うのは、こういう上から目線の「読書のすすめ」に感化されるやつなんているのか、ということ。いたとしてもよほどの間抜けだろう。まずはその嫌味ったらしいヤレヤレポーズをやめろ、とアタシはいいたいよ。そういうポーズを取りたがる「読書家」の存在も、人々が本から遠ざかる要因のひとつなんだ(たぶん)。読まないやつらも「バカ」なら、読むお前らも同じくらい「バカ」だ。読書はずいぶん前から一部の人間たちの閉じられた「趣味」になっている。他人の書いた「長くて複雑な文章」を読むことに何時間も費やしているような人間はいまではド変態だ。「教養主義」がまがりなりにも機能していた昭和時代はまだそうではなかったかもしれないけど。「長くて複雑な文章」を読むことをためらわない《時間貴族》は今後ますます希少種になって、いずれ絶滅するだろう。「本の虫」もそろそろレッドリストに掲載したほうがいい。ちょっと雲古してくる。

矢部武『アメリカ白人が少数派になる日』(かもがわ出版)を読む。
アメリカというのは独立当初から白人優遇国家だった。WASPつまりホワイト・アングロ・サクソン・プロテスタントがその支配層を形成していた。それはいまだに変わっていない。2045年には白人の人口を非白人の人口が上回るという報告がある。白人はもうこれまでのような「特権意識」を持てなくなるかもしれない。白人たちのそうした不安とイライラがドナルド・トランプを大統領に当選させた、という話はもう耳にオクトパスってくらい聞いている。「トランプ現象」に限らず政治現象や経済現象なんてのは基本死ぬほど複雑なので、「負け組白人たちのルサンチマン」みたいなものだけで説明できるとはもちろん思わない。トランプが選挙戦略上、そこはかとない取り残され不安に浸食されている「プアホワイト」の「なけなしのプライド」や「反移民感情」を恥知らずなかたちで利用したことは疑えないけど。「そもそもアメリカって移民によってつくられた国でしょ、なのになんでそんなに移民を嫌がる人たちがいるの?」という問いがいま頭をもたげた。もうたぶん陳腐過ぎる問いなんだろうけど。アメリカについて僕はシロートだ。シロートの投げる問いはいつもストライクゾーンぎりぎりの直球だ。これ難しそうだからあとでゆっくり考えてみる。もう昼飯食うわ。パスタね。もう頭がまるで機能してないんだ。げんざい上空から中途半端に液体が落ちています。図書館に行く以外に選択肢がない。ボヘミアン・ラプソディーが聴きたい。フレディ・マーキュリーの胸毛を持っていたとしたら、いくらで売れるだろう。ワラジ虫になってセナ様に踏まれたい。自暴自棄になるな俺。エックスじゃポン。

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