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でぃすいずあっぽお、でぃすいずあペン、つまり明日あると、思うこころのあだざくら、幸せだなあ、百合咲く丘に寝そべって、誰かの脚を気の済むまで折ってみたいんだ、いいだろう?

三月四日

一二時半起床。スターバックスの即席コーヒーとカシューナッツにホワイトチョコレートをコーティングしたお菓子。花粉症気味で不快。こればかりはどうにもならない。花粉症については、木材需要の高まりでスギをそこらじゅうに植えまくった戦後植林事業がよく槍玉に挙げられるわけだが、花粉症を引き起こすアレルゲンはなにもスギ花粉だけではないはずだ。そう性急に「悪玉」を特定するのはよくない。腸内細菌叢の菌構成次第で花粉症の発症を抑えられる、といった健康系言説もよく見かける。じっさいそんな研究もあるんだろう。ヨーグルトばかり食っている人がいるけど効果のほどは如何程なのか。重篤化した花粉症は生き地獄だから藁にもすがる思いなのだ。いずれにしても花粉症は体(鼻粘膜)が花粉を「異物」と誤解してしまうがゆえの過剰な免疫反応であって、この誤解を起こさないようにする非侵襲的かつ低コストの治療法が確立されない限り、私はふたたびこの世を呪い続けなければならない。花粉症はクオリティ・オブ・ライフ(QOL)をいちじるしく激減させる。だいたいそうでなくとも現代人の平均的QOLはかなり低めなのにその上に更に眼がかゆくなったり、鼻が詰まって食べ物もろく味わえなくなるなど踏んだり蹴ったりにも程がある。泣きっ面に花粉だよ。「清潔な現代人」を苦しめるこの花粉症についての詳細はまた別の日に書きます。

福沢諭吉『福翁自伝』(岩波書店)を読む。一八九九年(明治三二年)刊行。誕生から六五歳までのいきさつを速記者に向かって口述し、のち本人が全面加筆をほどこし『時事新報』紙上に連載されたもの。「適塾」時代の有名な「塾生裸体」生活も、彼らなりの合理主義的思考の結果であるように思われた。冷房もない夏の室内で着衣のまま暑さを我慢するほうがどうかしているのかも知れない。現代の日本の真夏の電車のスーツ集団をもし諭吉がみたらどうリアクションするだろう。「この馬鹿者どものは合理的な思考を母親の胎内に忘れて来たのかしらん」と首をひねるか。
昼夜の区別のない自らの猛勉強ぶりを、「なるほど枕はない筈だ、これまで枕をして寝たことがなかったから」と枕の不在で語るくだりは、よく教育者がドヤ顔で紹介するところだ。いやもっと規則正しくちゃんとした姿勢で睡眠取ったほうが学問能率も上がるんじゃないすかあ、なんてひろゆき流の冷静突っ込みを入れたくなるかも知れないが、世の中にはこういう我武者羅エピソードが好きな人が一定数いるのですよ。ほかならぬ私。

ただ昼夜苦しんで六かしい原書を読んで面白がっているようなもので、実に訳けのわからぬ身の有様とは申しながら、一歩を進めて当時の書生の心の底を叩いてみれば、おのずから楽しみがある。これを一言すれば――西洋日進の書を読むことは日本国中の人に出来ないことだ、自分たちの仲間に限って斯様なことが出来る、貧乏をしても難渋しても、粗衣粗食、一見看る影もない貧書生でありながら、智力思想の活発高尚なることは王侯貴人も眼下に見下すという気位で、ただ六かしければ面白い、苦中有楽、苦即楽という境遇であったと思われる。たとえばこの薬は何に利くか知らぬけれども、自分たちより外にこんな苦い薬を能く呑む者はなかろうという見識で、病の在るところも問わずに、ただ苦ければもっと呑んでやるというくらいの血気であったに違いはない。

『福翁自伝』「大阪書生の特色」

「自分たちより外にこんな苦い薬を能く呑む者はなかろう」という矜持はおよそ学問するものには欠かせぬもので、これがあるからこそどんな難書難説にも丸腰で立ち向かえるのだ。哲学や社会学の原書など日頃うんうん読み砕いている読書人は内心頷かずにはいられないはずだ。苦中有楽、苦ければ苦いほど「もっと呑んでやる」と血気に逸る書生根性。美しい。

兎に角に当時緒方の書生は、十中の七、八、目的なしに苦学した者であるが、その目的のなかったのが却って仕合で、江戸の書生よりも能く勉強が出来たのであろう。ソレカラ考えてみると、今日の書生にしても余り学問を勉強すると同時に始終我身の行く末ばかり考えているようでは、修業は出来なかろうと思う。

『福翁自伝』「目的なしの勉強」

「学問を勉強する」が新鮮に響く。こんにち「勉強」と聞くとついまず学校などでの「学習」を連想するけど、もともと精を出して無理にでも頑張ることなんだ。目的なしの学問(読書)も目的ありの学問(読書)もおなじくらい大事にしていかねばなりませんな。愚かな人間を見るたびそう思う。
午後七時半、友人の車で砺波の温泉。政治家は叩かれるのが仕事、右も左も馬鹿ばかり、政治家を審判できるのは「歴史」だけだなんて相変わらずの「床屋政談」で盛り上がる。

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