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学会遠征編ショート版 第23話 舞空術

前半のあらすじ

 名古屋市在住の大学院生が学会発表のために出張へ。発表は2本あり、1つは徳島、もう1つはバンコクで行われるが、その2つの学会の開催日が近かったのと、中部国際空港でうまく飛行機の予約が取れなかったことを理由に、途中で帰らず連続で行くことにした。前半では徳島に行き、徳島大学にて無事発表を終えることができた。また、少しできた時間を使って徳島県観光したり、ヤケクソで淡路島に行ったりと旅行を満喫してきた。そんな今は関西空港にてバンコク行きの便を待ち構えている状態。人生初の海外渡航に心を躍らせている。離陸は日付を跨いで5日目の2024年3月17日日曜日、0:45(日本時間)である。

スワンナプーム空港行き 直行便

 僕、CRAZY、そして仲良くなったアジア系の男性は飛行機に乗った。同じ便とはいえ、それぞれ予約した席は全然違うので事実上ここでお別れとなる。CRAZYとは入国審査後にまた合流することにした。そして機内へと侵入。この搭乗の手続きは国内便と変わらないが、最後に飛行機に乗ったのが1年前なので新鮮な気分になった。まず中に入った感想としては、思っていたより広いということだ。基準が国内便だったので、そのつもりで行くと段違いの大きさだ。これでもさらにビジネスクラスやファーストクラスという更にランクの高い席が用意されているのかと思うと、飛行機ひとつとっても世界は広いなと思った。そして半券に記された自分の席を見つけた。左のブロックの、通路側の席だ。交通費は研究室の費用から出るということで格安便ではなく安全度・衛生面において信頼しているJALを選んだのだが、その料金は後から振り込みという形なので事前に飛行機代は用意しておかないといけない。他の諸経費等も含めて予め用意できる軍資金には限りがあるのでエコノミークラスだったのだが、案の定箱詰めのような狭さだ。こんな窮屈でくつろげるのだろうか。帰りの便は予約の段階で席を指定で来たので右の窓側にしたのだが、行きは席の予約ができなかったのでこの席になった。とはいえ、これだけ狭いのならトイレ等で席を外すときに通路側の方が動きやすいのでむしろありだったのかもしれない。リュックは上の荷物置き場に置いたが、機内で使いそうなものは手元に残しておいた。具体的には、待合室で買った飲み物と本、充電するためにスマホとモバイルバッテリーも出しておいた。前の座席についているあみあみの荷物入れは、降りるときに忘れてしまいそうなので注意が必要だと思いながら、とりあえずはくつろぐ方法を模索した。念の為座っていても眠れるよう自分で空気を入れるタイプのU字型枕を持ってきてはいたが、席の一つ一つに枕が用意されていたのでそれを使うことにした。そして乗客がそろったところで気づく。通路を挟んで右隣には、なんと空港の待合室で仲良くなったあの男性が座っていたのだ。事前に打ち合わせていないのに、こんな奇跡が起きるのであろうか。お互いこんな偶然が起きるとは思っていなかったので少し喋った。彼は僕があのCRAZYと一緒にいないことを疑問に思ったらしく、そのことを聞いてきたが、予約したタイミングが違うから席も違うと答えた。そもそもギリギリになって飛行機を取ったCRAZYは同じ便に乗れたことが奇跡だと思う。そんな偶然が起きたのも、CRAZYが待合室で話しかけたからこそ起きた奇跡なので、彼の外向性には驚いた。この旅で彼を使いこなせば海外だろうと恐くないだろう。スマホの電源を切り、飛行機は無事離陸することができた。席が通路側なので外の景色はよく見えなかったが、この離陸時の間隔は結構好きである。自分はこれから違う国に行くんだ、まったく知らない土地を歩くんだ、と恐怖よりも好奇心が多かった。学会の方も、まあ何とかなるだろう。とりあえず今は休むことが最優先だ。ちなみに、タイでの観光を最大限に楽しもうと考え、朝から動ける便ということでこの時間にしたのである。帰りも同じような時間だ。おかげで2泊分の宿泊費が浮いてしまった。夜行バスみたいなイメージだ。経理担当の人に提出した旅程は誰が見ても圧巻の予定になっていた。8日のうち2回も機中泊になっているからだ。体力は持つのだろうか。5泊8日の長旅、後半である。

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