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とある委員会
2022年11月6日 01:41
『サービスだよ』彼女はショーを終えるたび薔薇のような真っ赤な唇でそう呟き、舞台袖の私に身に着けていたものをひとつ渡して舞台から降りていく。彼女は私の勤めるショーハウスが誇るNo.1パフォーマーで、艶やかな黒髪、滑らかな白い肌、深い海のような瞳、美しく弧を描く赤い唇と見目麗しく、しなやかで豊かな体に、さらには歌も踊りも抜群というなんとも現実離れした人物だ。私は、このショーハウスの受付兼雑用と
2022年11月6日 00:53
雨上がりの森の中の空気を大きく吸い込んだ。地面は湿り、草木たちは濡れ、どこか新しい知らせを告げるようなそんな匂い。そんな空気を肺いっぱいに吸い込んで、私は工房へ向かった。誰もいない静かな工房。工房は、たくさんの作品たちと祖父母との思い出で溢れかえっていた。今年の3月、まず祖母がこの世を去った。祖母は、陶芸家である祖父を支え、時に見学に来る人々をもてなしていた。よく喋る快活で優しいおば