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御朱印GIRLS

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#わたしの旅行記

vol.23 今宮戎神社

vol.23 今宮戎神社

 境内は静かで、「有名どころだから」と言った友達の言葉を、私は少し疑い始めていた。

「人いないね」
「行事のない神社って、こんなもんだよ」

 だけど友達はあっさりと答えて、スマホをいじり始めた。画面を盗み見れば、どうやらカレシと連絡を取っているようだった。

「なんか工事してる」
「ああ、だから余計なんや」

 スマホをしまって、ようやく境内を見渡した友達は一人納得していた。
 だだっ広い砂地

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vol.20 大阪・豊国神社

vol.20 大阪・豊国神社

「どうして、いつも裏口にたどり着いてしまうんだろうね」
「いつも同じ方向から来てるからやん。そら、同じところにしかたどり着かんやろ」
「なぜ違う道を行こうとしないんだろうか」
「お喋りに夢中やから違う?」

 行き慣れてしまうと、足が勝手に向かう。喋っているとその慣れに気づかないまま進んで、当初の思惑とは別の道を進んでしまっている。なんて、ざらにあるものだ。 

「なんやったら、ここから表門行ける

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vol.19 神護寺

vol.19 神護寺

 おばちゃんと二人、どれだけの間、バスに揺られていただろう。とうとう二人っきりになった。

「かわら投げ?」
「そう。素焼きのこれくらいのお皿を投げて、厄除けするのよ」

 さっきよりも声を大きくして、話を続けた。おばちゃんは人差し指と親指で円を象って、笑いながら楽しげに返してくれる。
 神護寺は高雄山の中腹にあるお寺で、ここまで来るのにそれなりの時間を要した。それでも話が途切れることなく、お互い

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vol.18 摩耶山天上寺

vol.18 摩耶山天上寺

 六甲山牧場に向かう途中で、時間が空いた。
 月に一度の日帰り旅行。一分一秒も無駄にしたくなくて、二人で近場の観光地を探し歩くことにした。
 スマホ片手にブラブラと歩きながら風景を眺め、時折、手のひらの中のリストをスクロールする。

「お寺があるって! 行って良い?」
「どこ?」
「多分、近く」
「多分って」

 横から呆れ声が返ってきた。だから私は必死でスマホを傾け、地図を指す。

「分かったか

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vol.18 安井金比羅宮

vol.18 安井金比羅宮

 白い短冊・形代を持って並ぶ。こんなに緊張するなんて思わなかった。
 小さな穴を潜る人たちを見ながら、何度も間違えないようにとじっくり観察する。
 潜って、帰ってくる。潜って、帰ってくる。
 悪縁を切り良縁を結んでくれるその行いを、何人も見守る。私だけじゃない。列に並ぶ参拝客の多くの目が、たった一人を見ている。それがまた、私の緊張を増幅させた。
 形代を所狭しと貼りつけられた巨石には、人々の怨念が

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vol.17 橿原神宮

vol.17 橿原神宮

 白い砂利の広がりに、思わず声をあげそうになった。
 白く大きな鳥居は改修中で見れなくて残念だったけど、境内でこんな広がりを目にできるなんて。知らなかった風景に、一気にテンションが上がった。

「まるで平安神宮みたいだね」
「確かに。あそこも真っ白だったね」
「何? その幼稚園児みたいな感想」
「素直に感動してるの!」

 曇り空の下でも白砂利は、ここが聖域であるこを明示している。
 私と愛奈は白

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vol.16 四宮神社

vol.16 四宮神社

「あ、暑い……」

 汗が滴る。真夏日は過ぎ去った、九月八日。まだ、真夏日だった。
 生田神社から歩いて大通りに出たら、影が一つもなくて夏日に曝された。大通りの向こうの、スーツ姿の団体が目に入った。

「ランチか……! 羨ましい!」

 私よりはるかに暑そうな格好をした一団に、羨ましさは募る。湿気臭い視線に気づいたか、そのうちの一人と目があった。とっさに、目を反らした。おもむろに近くにあった、地図

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vol.14 京都・豊国神社

vol.14 京都・豊国神社

 六波羅蜜寺から歩いてどれくらい経っただろう。
 小道を進んで、大通りを横切って、住宅街をさらに進んだ。道中のカフェや和菓子屋さんに立ち止まりそうになりながら、自制の先にたどり着いた京都・豊国神社は、階段の先にある。

「階段が重い」
「足に来る~!」

 腰が曲がる私とは違って、遥は声を弾ませた。

「なんでそんなに楽しそうなの?」
「なんでそんなに苦しそうなの?」

 数段先を行く遥は振り返っ

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