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ヘルシンキの老舗"豚小屋"レストランに、親しみを込めて

先日、日本にいた頃からお世話になっている知人たちと、何の巡りあわせかヘルシンキで集まる機会がありました。

これまで観光地のことは書いてきませんでした。

良い機会ですので、たまにはガイドブックにも掲載される有名レストランを紹介します。

ただし、フィンランド在住者として、そしてこの国を愛する一人の人間として。


レストラン Sea Horse

伺ったのはレストラン「Sea Horse」。かなり有名なお店で、日本人観光客もたくさん訪れる場所です。

後ほど詳しく書きますが、フィンランドでは「Sikala (シカラ)」という愛称で知られています。日本語での意味は、なんと"豚小屋"。

レストラン自体は1930年代から続く老舗だそうで、経営母体が変わりながらも同じ場所で営業しているそうです。

「Sea horse」というのは日本語でタツノオトシゴという意味です。その名の通り、お店の内外にタツノオトシゴのイラストが。

なぜタツノオトシゴなんでしょうか?

渋めな店内

入店時にウェイターさんが迎えてくれます。
日本人観光客にはかなり人気だそうで、日本語ペラペラの男性が愛想よく出迎えてくれました。

店内は落ち着いた内装で、観光客と常連客が半々といった感じでした。

建物がかなり古いが中のリノベはしっかりされていた

入店時に気づいたことがもう一つ。

BGMの選曲がなかなか渋い。

僕らが席に着いたときは、アキ・カウリスマキの映画「過去のない男」で出てくる曲"Paha vaanii"が流れていました。

その他、フィンランドのシニア世代の方がカラオケで歌うような曲が流れていて個人的にとても満足でした。

伝統料理をいただく

フィンランド料理ではド定番の「Muikku (ムイック)」という淡水魚のフライをいただきました。

Muikkuはモトコクチマスという和名を持ち、湖に生息するお魚です。ライ麦粉をまぶしてバターで揚げるのがお決まりです。

シンプルな味わいながら、ライ麦粉の香ばしさとサクフワの身がとても美味しいです。

Muikkuのフライ。レモンとディル、マッシュポテトを添えて。

フィンランドのお魚の中ではサーモンよりも「muikku」やバルト海ニシンの「silakka (シラッカ)」のほうがさっぱりしてて好きです。

デザートには、これまたフィンランドの料理には欠かせない、北欧パンケーキである「Lettu (レットゥ)」をいただきました。

薄くてもちっとしています。アイス、クリーム、ジャムが添えられています。

このパンケーキ、僕はフィンランドのデザートで一番好きです。パンケーキ愛を以下の記事に語っています。一部有料ですが、無料エリアで十分に愛が伝わると思うのでお読み頂けると嬉しいです。

なぜ豚小屋??

フィンランド人の知り合いに「今度Sea Horseに行くんだ~」と話したところ、皆口々に「あ~、Sikalaでしょ!知ってる!」と言っていました。

繰り返しますが、Sikalaというのは豚小屋という意味です。

この老舗レストランの親しみが込められた (?) 愛称はフィンランド人の間では周知の事実のようです。

どうやら、この愛称の由来はレストランに芸術家が足しげく通っていた歴史にあるようです。

1960年代頃のオーナーがお金のない芸術家向けに食事を提供していたそうです。そのような背景から、貧しい芸術家が頻繁に出入りするようになったそうです。

芸術家のほかにも、数多くの著名人が通っていた歴史があるようです。この時代のフレンドリーな雰囲気が今に引き継がれているようです。

美化してもいい歴史をわざわざ「豚小屋」と自虐してしまうあたり、とてもフィンランドらしさが出てて好きです。

豚小屋、オススメです

フィンランド人は自虐的なギャグセンスを持っています。また、日本と同じように何も考えず笑えるような素直なギャグ (顔芸や下ネタ) も割りと受けがいいと思います。

マスコミやネットには、キャッチーでおしゃれなフィンランド像があふれています。確かに、外向きには洗練された部分もこの国の一部でしょう。実際にフィンランドの観光局もキレイでオシャレなところを推したいようですし。

ただフィンランドを愛する在住者的には、素朴で実直で、少し汚くて自虐的な面も含めてこの国の良さであること、もっと知ってほしいなあと思います。

綺麗なフィンランド。そうじゃないフィンランド。
この対比構造があってこそ、この国は魅力的です。

何はともあれ、豚小屋、もといRestaurant Sea Horseおすすめです。


<今日のフィンランド語>
①Sika (シカ)
フィンランド語で豚という意味です。鹿ではありません。鹿はPeura (ペウラ)、トナカイはPoro (ポロ)です。

②Muikku (ムイック)
フィンランドを代表するお魚。

ちなみに、ムーミン中のスナフキンは、フィンランド語では「Nuuskamuikkunen (ヌースカムイックネン)」と言います。

Nuuskaが嗅ぎたばこ、Muikkuがモトコクチマス、nenは苗字や愛称に付く接尾辞です。たばこをふかして魚釣りをするスナフキンのイメージがそのまま名前になっています。


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