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最近のEV事情

米電気自動車(EV)最大手テスラが2日発表した2024年1〜3月期の世界販売台数は4年ぶりに前年実績を下回った。同社の苦境は世界のEV市場の趨勢を映し出すとのこと。
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要約文

テスラは2024年第1四半期に4年ぶりの販売台数減少を経験しました。これは、中国の電気自動車メーカーからの低価格戦略と、米国市場の成長停滞によるものです。中国では、大手の比亜迪(BYD)をはじめとするメーカーが価格を引き下げ、市場をリードしています。米国では、EVの普及が期待に達しておらず、インフラの不足が挙げられています。さらに、米中対立の影響で、テスラを含む米国のEVメーカーがサプライチェーンの再編に苦労しています。この状況は、テスラのみならず他のメーカーもEV戦略を見直すきっかけとなり、トヨタや現代自動車グループなどがEV以外の選択肢にも注力する動きが見られます。欧州では、低価格EVの投入による普及加速の可能性が指摘されていますが、米国では今後の充電インフラの整備や市場戦略が重要な課題となっています。

シャオミ初のEV

中国のスマートフォン製造大手シャオミが、同社初の電気自動車(EV)「SU7」を発表し、約450万円からの価格で販売を開始しました。この新型EVは、米国のテスラに対抗し、将来的にEV市場で上位に位置することを目指しています。SU7は、航続距離約700キロメートルの標準モデルと、約800キロメートルの上位モデル「MAX」があります。シャオミのCEO雷軍は、テスラの「モデル3」との比較を強調し、シャオミの基本ソフト「澎湃」を活用して、スマートフォンや家電との連携機能を提供することで、他のEVとの差別化を図っています。発売前には、中国国内の29都市に59カ所の店舗で試乗予約を開始し、大きな関心を集めています。

小米EV、iPhone登場と同じ衝撃

伊藤忠総研の深尾三四郎上席主任研究員は、中国のスマートフォン製造大手シャオミが発表した初の電気自動車(EV)「SU7」について、iPhoneの登場時と同様の衝撃を与えると評価しています。シャオミのSU7は、米テスラの「モデルS」と比較して価格を大幅に下げながらも性能を向上させ、独自のエコシステムを構築することで新たなビジネスモデルを提案しています。深尾氏は、シャオミの強力なブランド力と、スマートフォンや家電製品との連携を強みとして、EV市場において大きな影響を及ぼすと予測しています。また、シャオミが北京汽車との協力により約3年でEVの発売にこぎ着けたことも、その成功の要因の一つとして挙げています。

BYDの3月販売台数46%増、値下げでPHV好調

中国の自動車メーカー比亜迪(BYD)は、3月の新車販売台数が前年同月比46%増の30万2459台となり、特にプラグインハイブリッド車(PHV)の販売が好調であったことを発表しました。この販売台数の増加は、2月中旬に実施した複数車種の値下げが効果を示した結果です。乗用車セグメントでは、電気自動車(EV)が36%増、PHVが56%増となりました。また、BYDは海外市場においても販売地域を拡大し、3月の海外販売台数は2.9倍の増加を記録しました。1〜3月の累計販売台数は前年同期比13%増の62万6263台でした。

EV普及は踊り場へ 使いやすさでHVが優位に

電気自動車(EV)の世界的な普及が一時的な停滞期に入り、ハイブリッド車(HV)がその使い勝手の良さから優位に立っています。主要な14カ国における2023年のEVとプラグインハイブリッド車(PHV)の販売台数の増加率が前年の63%から28%へと低下し、一方でHVの販売台数は30%増となりました。充電インフラの整備不足と充電時間の長さがEV普及の大きな障壁となっています。日本では、急速充電器の設置支援を強化するなどして課題に対処しようとしています。一方で、EV開発にかかる高コストや資材調達の困難さを背景に、世界各国でEV戦略の見直しが進んでおり、米アップルや独フォルクスワーゲン(VW)などがEVプロジェクトの縮小や中止を決定しています。

ボルボCEO「完全EV化に自信」

ボルボ・カーのCEO、ジム・ローワンは、2030年までにすべての新車を電気自動車(EV)にする目標に対し、EVの収益性の向上と2023年の売上高および営業利益の過去最高達成を背景に自信を示しています。2023年の新車販売台数は15%増の70万9000台、うちEVは70%増の11万3000台で、新車に占めるEVの割合は11%から16%に上昇しました。補助金の縮小によるEV販売の停滞が予測される中、ボルボはプレミアムクラスのEVでエンジン車からの乗り換え需要が旺盛であると見ています。また、ポールスターへの資金援助を停止し、保有するポールスター株の売却を検討しています。ボルボの2023年の通期売上高は前期比21%増、営業利益は43%増と過去最高を記録しました。

メルセデス「EV死の谷」越えへ

EV市場の成長が鈍化する中、欧州のメルセデス・ベンツグループを含む複数の大手自動車メーカーは、EV専用のプラットフォームに加え、エンジン車やハイブリッド車(HEV)にも対応可能な「EV優先プラットフォーム」の開発に力を入れています。これは、EV市場の失速を見越した「つなぎ」の技術として重要な役割を果たす見込みです。メルセデスは「electric first」のコンセプトの下、小中型車向けEV優先プラットフォーム「MMA」を用意しており、これを採用する初の車種は2025年投入予定の小型車「CLA」の次期型です。現代自動車グループも同様の動きを見せており、EVからエンジン車やHEVへという開発順序を取っています。日本のトヨタ自動車は、エンジン車、EV、燃料電池車(FCV)など多様なパワートレーンに対応する「マルチパスウェイプラットフォーム」を展開しています。これらの動きは、EVへのシフトが一時的に鈍化する可能性を考慮し、消費者の多様なニーズに対応するための現実解として捉えられています。

感想

テスラが電気自動車(EV)市場で大きな注目を集めたことにより、TOYOTAをはじめとする多くの自動車メーカーもEV開発に力を入れ始めました。一部では、これら従来の自動車メーカーの将来に懸念の声もありましたが、現時点では大きな問題は見られません。この状況には二つの主要な理由があります。一つ目は充電インフラの整備が遅れていること、二つ目は個人情報の取扱いに関する懸念です。EVの航続距離の制限に加え、十分な充電インフラが整っていないことは利用者にとって大きな不安要素です。また、EVは多くの個人情報を収集する可能性があるIoTデバイスとして機能するため、製造元による個人情報の取得が懸念されています。

しかし、EVが注目を集めた根本的な理由は、SDGsの観点から環境に配慮した車としての特性にあります。電気を動力源とするEVは、表面的には環境に優しい選択と見えますが、製造プロセス全体を通じて二酸化炭素の排出が伴うため、総合的な環境への影響を考慮する必要があります。環境への配慮を最優先にした車の開発が、EVが主流となるかどうかの鍵を握っています。価格競争では中国メーカーが有利な立場にあるかもしれませんが、環境への総合的な配慮を重視する点で日本の自動車メーカーには大きな可能性があると言えます。これからも、全体的な最適化を目指し、日本の自動車メーカーにはその力を発揮していただきたいと思います。

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