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【富士山お中道の生物図鑑】 シラビソ

  • 見られる場所・・・亜高山帯下部で森林をつくる

シラビソ

マツ科モミ属
学名:Abies veitchii
〈白檜曽〉
同定のポイント/ 樹皮に環状に並んだ粒々の皮目が目立ち、ところどころに横長のやに袋が見える。若枝には淡褐色の短毛がある。葉は2列状に平面に並ぶ。

出典 山と渓谷社 「山渓ハンディ図鑑8 高山に咲く花」 2002

シラビソは、亜高山帯の極相林を形成する常緑針葉樹です。

極相、極相林
植生の遷移が進んで、最終的にそこの気候に最も適した植生に達すると安定して維持される。その時の植生を極相という。日本列島は十分な降水量に恵まれるため、極相は森林(極相林)となる。

シラビソ
樹形はクリスマスツリーのような形をしている
シラビソ林
森林内は薄暗い。

樹高は20 m ほどになります。
4合目付近まで下ると直径30 cm以上の大木が大森林を作っていますが、お中道を歩くと途中若いシラビソ林を横切ることになります。

(なぜ横切ることになるかは、遷移過程にある富士山と地形に理由があります。詳しくはこちらをご覧ください↓)

シラビソの稚樹は耐陰性が高く、暗い林床でギャップ更新の機会を待っています。

倒木でできたギャップの下で、ぐんぐん成長するシラビソ稚樹

薄暗い環境で耐える稚樹と光を得てからの稚樹では、見違えるほど形が変化します。

シラビソは、各枝の先端に翌年の枝が生えるため、枝は毎年規則正しく伸びます。年枝を遡ることで樹齢を読み取ることができます。

当年葉が出たばかりのシラビソの枝
当年葉はまだ黄緑色。各枝の先に新しい枝が規則正しく出ているのが分かる。


太平洋側のシラビソ、日本海側のオオシラビソ

日本の亜高山帯には、シラビソによく似たオオシラビソという針葉樹があります。

オオシラビソ 別名アオモリトドマツ
マツ科モミ属
学名:Abies mariesii
〈大白檜曽〉
同定のポイント/ 樹皮は灰褐色で青みがあり平滑。若枝に赤褐色の軟毛が密生し、葉は枝の全面に放射状につく。

出典 山と渓谷社 「山渓ハンディ図鑑8 高山に咲く花」 2002

太平洋側にある富士山では亜高山帯の常緑針葉樹林といえばシラビソ林ですが、日本海側にある北アルプスではオオシラビソ林になっています。

お中道でもオオシラビソがポツポツとみられますが、森林を作るほどはなく、冬に乾燥し風の強い富士山ではシラビソのように旺盛には成長できないようです。
シラビソ・オオシラビソの分布を分ける鍵は多雪地域か否かでしょうか。

お中道を歩きながら、富士山ではレアキャラのオオシラビソを探すのも面白いかもしれません。

シラビソ
髪の分け目のように”葉の分け目がある”ように見える。
オオシラビソ(乗鞍岳)
葉が密生して枝は見えない。先端の膨らみは新葉のつぼみ。

ちなみに、富士スバルライン沿いで見られるマツ科針葉樹は、標高が上がるにつれ変化します。麓から5合目に向かう車中、移り変わりを観察してみるのも楽しいでしょう。詳しくはこちらをご覧ください↓



富士山お中道を歩いて自然観察」の連載はこちら↓

「富士山お中道の生物図鑑」の連載はこちら↓


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