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【富士山お中道を歩いて自然観察】11 スラッシュ雪崩

(この記事は、観察マップ地点11 についての解説です)
お中道を歩くと何度も雪崩跡を横切ります。富士山では毎年のように雪崩が発生し、植生に被害を及ぼしています。雪崩の発生原因によって植生に与える影響も異なります。

筋状に地面がえぐれた箇所は、スラッシュ雪崩の跡である。

スラッシュ雪崩で運ばれた土砂は、覆道の高さに達するほど押し寄せることもある。

覆道に押し寄せた大量のスコリア
道路上のスコリアはすでに取り除かれたため断面を見ることができた。大きな石が混じる。

スラッシュ雪崩は、大量の水を含んだ雪が斜面を下るにつれ土石流化した雪崩である。その発生は春先や晩秋、地面が凍結しているときに大雨が降ると、雨が地中に浸み込むことができずに表面を流れ下り、その途中で砂礫(スコリア)を巻き込みながら、勢いよく流れ下って起こる。

スラッシュ雪崩の断面のイメージ
地面が凍っているため雨水が地中に浸透できず、地面の土砂を巻き込みながら流れ落ちる

スラッシュ雪崩は地面をえぐるため、時に大規模な植生破壊をもたらす。その破壊力は、発達した森林であっても破壊するほどである。地元では雪代ゆきしろと呼ばれ恐れられてきた。

富士山で雪崩の発生しやすい場所はほぼ決まっていて、繰り返しスラッシュ雪崩が起こる場所では、イタドリとオンタデだけがまばらに生育している。この2種は雪崩に巻き込まれても、流された先で、ちぎれた地下茎から芽を出して再生することができるからである。

跡地では地下茎から出芽したイタドリの若葉のようす(若葉は赤い)が見られる。

イタドリとオンタデの以前の記事はこちら

富士山ではスラッシュ雪崩とは違った性質の雪崩も起こります。植生への影響はスラッシュ雪崩とは異なります(地点13の記事で紹介予定です)。
次回は番外編第4段として、雪崩に強いミヤマハンノキについてのお話です。

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