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卓球のブンデスリーガを観た

 
 初めて見たプロスポーツが、まさかのブンデスリーガだった。自分が、たまたま卓球が好きで、たまたま本場のドイツにいたことでこんな機会に恵まれた。

 
 勝利し、サインを求める人だかりができているホームのマティアス選手。対照的に、敗れたアウェイのフィルス選手は、ベンチから動けずに打ちひしがれていた。
 
 そんな面も含めて、卓球って、プロスポーツって面白い。


 どんなに厳しい戦況でも、試合を投げ出さずに、次のプレーに向かっていけるのは、卓球を"ライスワーク"にしているから。

 トップレベルのアスリートになるまで練習して強くなったのは、間違いなく卓球が"ライクワーク"だから。

 試合会場は、どこにでもあるような体育館で、日本のプロスポーツと比べて見劣りするかもしれない。それでも、サポーターは満足げに全力で応援する。例え劣勢でもドラムを叩いて、ナイスプレーにはラッパを囃して。
 もちろん対戦相手のナイスプレーにも惜しみなく拍手を送る。ラリーが始まる前の、会場が固唾をのむ場面。そこでは選手の呼吸音までもが聞こえる。

 相当の緊張感なのだろう。セット間の休憩では酸素吸引を行う選手もいた。

 
 試合後に、スウェーデン代表のマティアス選手にサインをいただいた。思えば、彼は自分が話した最初のスウェーデン人となった。

 試合会場を出て、帰路につくと、"English okay?"と男の人に話しかけられた。話を聞くと、コンサート会場を探しているが道に迷っているとのこと。マップで住所を入力し、この区画を右に曲がり、しばらく直進すれば見えてくることを案内できた。ちなみに、中学時代に”turn right and go strait.”と暗唱させられた文をそのまま使った。義務教育は役に立つのである。

 彼はジョージア人らしい。そうして、彼は自分が話した最初のジョージア人となった。

 ”Korean?”と聞かれたので、”I'm Japanese.”と答えた。すると、
 「自分の娘が日本語を少し勉強しているから日本語でありがとうはなんて言うか聞いてくる。」と言われ、彼は停めていた車に戻った。後部座席には娘さんが寝ており、父親からの質問に、うんざりした様子で”ARIGATOU”と答えた。助手席にいた母親と思しき人の苦笑いを見ると、恐らく娘さんは反抗期だ。自分は"Nice pronunciation!"とコメントした。

 スウェーデン人、ジョージア人、日本人の自分。多くの国出身の登場人物が出てくる回となってしまった。

 
 最後に、中学時代の卓球部の先輩の言葉を借りて締めようと思う。
 我が中学校では、年度末ごとに、各部活動のキャプテンが任期を終えての感想を書いた冊子があった。ほとんどが顧問の先生、保護者、外部コーチへの感謝、来年度の目標を書いていた。そんな中、卓球部部長だけはこう書いていたのである。

「僕の心をぴょんぴょんさせてくれた卓球に感謝しています。」


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