近くになったはずがむしろ遠くに!あおひと君の週間アート情報 7/8~7/14 展覧会レビュー ICC アニュアル 2024 とても近い遠さ

今週の展覧会レビューは、東京・新宿区の京王線初台駅近くにあるNTTインターコミュニケーション・センター [ICC]にて6月22日(土)から11月10日(日)まで開催される「ICC アニュアル 2024 とても近い遠さ」をお送りします。

 NTT東日本が運営するNTTインターコミュニケーション・センターは、電話事業100周年の記念事業として1997年開館。豊かな未来社会を構想するために、「コミュニケーション」を軸に科学技術と芸術文化のケミストリーを促すこと。

 そして、こうした対話を通してアーティストやサイエンティストを結び付けるネットワークや、情報交流の拠点となることを目指しています。

 そのためICCでは、メディアアートや、パフォーマンス、ワークショップなどテクノロジーを含んだ企画を多く開催しています。

 さて、今回の展覧会「ICC アニュアル 2024 とても近い遠さ」は、ちょっと難しいお話になりますが、企画者のコンセプトを砕いてお話しします。

 近年、社会は、パンデミックによりネットワーク会議、リモートワークなどが浸透、合わせてソーシャルディスタンスという考えが生まれたことで、生活様式に大きな変化が生じました。

 これまでの通信技術は、遠くにあるものを近くに感じさせる、遠くを「ここ」に近づける「近さ」を実現する道具として認識されていました。ところがソーシャル・ディスタンスでは、物理的に近くにあればこそ、お互いの「適切な」距離を考えなくてはいけなくなった。

 現在の私たちにとって、それらの通信技術は「遠さ」を近づける一方で「近づけなさ」を炙り出すことになっているのではないのか、と提示します。

 また、インターネットなどの爆発的な普及によって、私たちのリアリティのあり方や捉え方にも変化が起こっている。情報はいつでも享受できる一方で、提供される情報のみで世界が構築されることにもなってしまったと言います。

 こういった、この時代の情報環境における、さまざまなリアリティの「遠さ」と「近さ」とその変化について、これからの集合的無意識を構成する要素について、私たちの日常の変化を反映した作品、日常がどのように変わるのかをとらえようとした作品など、それぞれが異なるアプローチによる作品から、考察してみる展覧会ということです。

 出品作家は、青柳(あおやぎ)菜摘(なつみ)+細井(ほそい)美裕(みゆ)、木藤(きとう)遼太(りょうた)、ウィニー・スーン、たかくらかずき、ユーゴ・ドゥヴェルシェール、葉山(はやま)嶺(れい)、古澤(ふるさわ)龍(りゅう)、米澤(よねざわ)柊(しゅう)、リー・イーファンの10名。

 またこの企画とは別に、会場では、新進アーティストを紹介する「エマージェンシーズ!」やグレゴリー・バーサミアン《ジャグラー》のコレクション作品の展示、岩井俊雄《マシュマロモニター》、映像アーカイヴHIVE(ハイヴ)常設展示もありました。

 「エマージェンシーズ!」では、おおしまたくろう「耳奏耳(みみそうじ)シリーズ」が展示されていました。

 今回の展覧会を見て思うことは、今やネット環境なしでは、生活は成り立たなくなりました。アーティストもネット環境にしたがって生き、世界を見て、感じ、対応しています。それらの変化をどう捉え、積極的に取り込むのか、批判的に排除するかは、人それぞれです。

 しかしながら人間の感性に限って言えば、どんなにテクノロジーが発達しても、生活様式が変わっても、感動を誘う作品は、何百年、何千年以上たっても存在し続けるのです。感動という原点が、まさにアートの不思議であり、魅力であり、最大の存在意義なのだと思ってしまう今日この頃でした。

さあ、今週の展覧会レビューはいかがでしたでしょうか。

あおひと君の週間アート情報は、関東一都六県で開催される絵画、彫刻、イラスト、工芸など、7月8日、月曜から7月14日、日曜までに始まる展覧会情報7件をご紹介。毎週日曜に更新するアートチャンネルです!

このチャンネルでは、アート情報webメディア・東京ライブ&エキヒビッツに掲載されたものからピックアップ。

これからご紹介する展覧会で、面白そう、興味ある、行きたい!と思われた方は、下の概要欄に東京ライブ&エキヒビッツの掲載ページのURLを記載しておきますので、詳しい情報や作品画像など、ぜひご覧ください!

アートは本物を直接、見るのが一番です。

アートは希望です!感動はエネルギーの源です!

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特集 展覧会レビュー
6月22日~11月10日 ICC アニュアル 2024 とても近い遠さ NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]ギャラリーB、シアター(新宿区西新宿)
https://tokyo-live-exhibits.com/pum_tksj_icc/

-----展覧会情報7/8-7/14

7月11日(木)~16日(火) biblioteca d’Oro TIERS GALLERY by arakawagrip(渋谷区神宮前)
https://tokyo-live-exhibits.com/pug_tksh_tiers-gallery/
4月に開催された「ミラノデザインウィーク 2024」でのインスタレーションを再構築し展示します。

7月12日(金)~7月15日(月) 山縣瑠衣個展『風景記譜法』 クマ財団ギャラリー(港区六本木)
https://tokyo-live-exhibits.com/pug_tkmnt_kumazaidangallery/
衛星画像からなる地図表現と現代の風景画を考察、絵画や映像で作品を制作、2022~2024年に制作された主要な作品を紹介します。

7月13日(土)~9月28日(土) 石田尚志(いしだたかし) 絵と窓の間 Ishida Takashi: Between Tableau and Window 神奈川県立近代美術館 葉山(三浦郡葉山町一色)
https://tokyo-live-exhibits.com/pum_knhym_museummodernart-hayama/
自らが描く絵画を撮影し続けて映像を制作する石田尚志の未発表作品から新作までの大規模な個展です。

7月13日(土)~9月8日(日) 生誕130年 没後60年を越えて 須田国太郎の芸術――三つのまなざし/アートディレクターの仕事―大貫卓也と花森安治 世田谷美術館(世田谷区砧公園)
https://tokyo-live-exhibits.com/pum_tkstg_setagayaartmuseum/
日本の精神文化に根差した油彩画の在り方を追求した須田国太郎の展覧会と、同時開催のアートディレクター大貫卓也と花森安治の魅力を探ります。

7月13日(土)~9月1日(日) 企画展「サムライ Meets ペリー With 黒船」 横浜市歴史博物館(横浜市都筑区)
https://tokyo-live-exhibits.com/pum_knykh_yokohamahistorymuseum/
日米和親条約が結ばれてから170年目を記念し、ペリー来航に際し、現場で警備を担った武士たちの目線から新たなペリー来航の一面を紹介します。

7月13日(土)~9月23日(月・振)「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」展 東京ステーションギャラリー(千代田区丸の内)
https://tokyo-live-exhibits.com/pum_tkchy_tokyostationgallery/
20世紀後半のベルギーを代表するアーティスト・フォロン。環境破壊や人権問題など厳しい現実への告発を込めた色彩豊かな、初期のドローイングから水彩画、版画、ポスター、晩年の立体作品まで約230点を紹介します。

7月12日(金)~8月11日(日) 平 久弥 / Hisaya Taira “渋谷” NANZUKA 2G(渋谷区宇田川町)
https://tokyo-live-exhibits.com/pug_tksh_nanzuka2g/
街の路地裏など、日常にありふれた風景を、フォトリアリズムの手法で、徹底的に、忠実に、描き続けています。

以上、来週は、目黒雅叙園百段階段を送りする予定です!

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